平成18年度新試短答公法系第26問解説

【問題】

通達の法的性質等に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,
誤っている場合には2を選びなさい。

ア. 通達は上級機関が関係下級機関・職員に対してその職務権限の行使を指揮する等のために発
するものであるから,当該職務権限の行使を規律する法令の中に通達を発することができる旨
の規定がない場合には,上級機関はこれを発することはできない。

イ. 裁判所は,法令の解釈適用に際しては,通達に示された法令の解釈に拘束されない。

ウ. 事務処理の全国的な統一のために発せられた通達に反する措置を税務署長が行った場合,そ
の措置は,他の税務署長が通達に準拠して行った措置との関係において,平等原則違反を理由
に違法と判断される余地がある。

エ. 複数の行政機関が同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政
指導を行う場合に,これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を上級機関の通達に
より定めることは許される。

【解説】

アについて

通達は行政組織の上下関係ゆえに認められる。
従って、法令の直接の根拠は不要である。
よって、本肢は誤りである。

イついて

法令の解釈適用は裁判所の専権である。
通達には拘束されない。
通達はあくまで、行政組織の内部規範に過ぎない。
よって、本肢は正しい。

ウについて

通達自体には法的拘束力はない。
従って、通達違反がそのまま違法という評価に繋がることにはならない。
もっとも、大阪地裁昭45・5・12は、

「通達は上級行政庁が下級行政庁に対し、法令の運用方針又は
取扱準則を示しまた法令の解釈基準を明らかにすることによつて行政事務処理を統
一的、合理的に、また円滑に処理することを目的とするものであつて、下級行政庁
を拘束するに止まり、法規たる性格を有するものでないことはもとよりのことであ
る。しかしながら、通達によつて示達された内容が税務行政の執行一般において実
現されているに拘らず、しかも或る個別的具体的場合につき右通達が定める要件を
充足しているものに対し通達に反して納税者に不利益な課税処分をするならば、本
件のごとき間接税たる物品税の場合においては税額は本件取引価格の中に折り込ま
れるのであるから、通達に従い課税の対象とならないと信じて物品税を含まない価
格で取引したにもかかわらず後に課税されることになつて納税者に不測の損害を与
えるばかりでなく、租税法の基本原則の一つである公平負担の原則にも違背するこ
とになり違法な処分といわなければならない
。」

とする。
つまり、通達違反が平等原則違反(租税法上の公平負担原則違反)とはなりうる。
そのことゆえに、違法となる余地があるということである。
よって、本肢は正しい。

エについて

行政手続法36条は、

同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事業に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。

とする。
ここでいう、「行政指導指針」については、同法2条8号のニが定義規定を置いている。

それによると、行政指導指針とは、「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項」をいう。

すなわち、本肢で言うところの、

「複数の行政機関が同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政
指導を行う場合に,これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項」

とは、この「行政指導指針」のことである。
そうすると、本肢は要するに、「行政指導指針を通達で定めることができるか」を訊いているということになる。

そして、

「「行政指導指針」は、告示や訓令・通達のほか、通知、ガイドライン、指針、技術的助言・勧告、要領、要綱等、様々なかたちで制定・発出されている。」(資料「「小さくて効率的な政府」の実現に向けて−公共サービス効率化法(市場化テスト法)案の骨子等−」34ページ)

従って、行政指導指針は通達で定めることができる。
その根拠としては、「行政指導指針」は、私人の法的地位、権利・義務に対し法的効果を持たないことが考えられる。
すなわち、私人に対し法令の運用上望ましい対応を奨励したり、指導、勧告、助言等を行ったりするために発出されるものにすぎないとされているから、特に法的根拠を必要としないのである。

以上から、本肢は正しい。

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