【問題】
行政庁の裁量に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っ
ている場合には2を選びなさい。ア. 法律の条文において,行政処分をすることが「できる」と規定されている場合,当該条文上
の要件が満たされているときに,当該処分をするかしないかの裁量を行政庁に認める趣旨であ
るとは限らない。イ. 行政庁が裁量権を行使して行った処分については,当不当の問題が生じるだけであるから,
裁判所の審査が及ぶことはない。ウ. 行政庁が裁量の基準を設けている場合,その基準に従わないでした行政処分であっても,当
然に違法ということにはならない。エ. 法律の条文上,行政庁において,数種類の不利益処分(一定の者に対して直接に義務を課し
又はその権利を制限する処分)をすることができると規定されている場合,特定の者に対しど
の処分を行うかについて,行政庁に裁量が認められることがある。
【解説】
アについて
裁量論には諸説あるが、文言のみで割り切れるわけでないことは一致する。
正しい。
イについて
自由裁量行為についても、裁量権の逸脱・濫用があれば司法審査は及ぶ(行政事件訴訟法30条)。
よって、誤りである。
ウについて
行政庁の設定する裁量基準は、法規範性を有しない。
よって、その基準に従わない場合でも、当然に違法となるわけではない。
正しい。
エについて
神戸税関事件判例は、
「懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されている」
とする。
いわゆる選択裁量である。
正しい。