【問題】
次のアからウまでの各記述について,法令及び最高裁判所の判例に照らし,正しいものに○,誤
っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。ア. 国税犯則取締法第3条第1項は,憲法第33条の場合を除外して住居,書類及び所持品につ
き侵入,捜索及び押収を受けることのない権利を保障する憲法第35条に違反するものではな
い。(参照条文)国税犯則取締法
第2条 収税官吏ハ犯則事件ヲ調査スル為必要アルトキハ其ノ所属官署ノ所在地ヲ管轄スル地
方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ臨検,捜索又ハ差押ヲ為スコトヲ得A 前項ノ場合ニ於テ急速ヲ要スルトキハ収税官吏ハ臨検スヘキ場所,捜索スヘキ身体若ハ物
件又ハ差押ヲ為スヘキ物件ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ
得テ前項ノ処分ヲ為スコトヲ得BからDまで(略)
第3条 間接国税ニ関シ現ニ犯則ヲ行ヒ又ハ現ニ犯則ヲ行ヒ終リタル際ニ発覚シタル事件ニ付
其ノ証憑ヲ集取スル為必要ニシテ且急速ヲ要シ前条第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハ
サルトキハ其ノ犯則ノ現場ニ於テ収税官吏ハ同条第一項ノ処分ヲ為スコトヲ得A (略)
イ. 警察官職務執行法第2条第1項の規定に基づく職務質問に付随して行う所持品検査は,任意
手段として許容されるものであるから,所持人の承諾を得てその限度でしか行うことができな
い。(参照条文)警察官職務執行法
第2条 第1項 警察官は,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を
犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪
について,若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を
停止させて質問することができる。ウ. 所得税法第234条第1項の規定による質問や検査は,それにより過少申告の事実が明らか
となり,所得ほ脱事実の発覚につながり得るものであるから,所得税の公平確実な賦課徴収の
ために必要な資料の収集だけでなく,刑事責任の追及をも目的とする手続であり,自己に不利
益な供述を強要されないことを保障する憲法第38条第1項に反する。(参照条文)所得税法
第234条 第1項 国税庁,国税局又は税務署の当該職員は,所得税に関する調査について必
要があるときは,次に掲げる者に質問し,又はその者の事業に関する帳簿書類(中略)その
他の物件を検査することができる。一から三まで(略)
1. ア○ イ○ ウ○ 2. ア○ イ○ ウ× 3. ア○ イ× ウ○
4. ア○ イ× ウ× 5. ア× イ○ ウ○ 6. ア× イ○ ウ×
7. ア× イ× ウ○ 8. ア× イ× ウ×
【解説】
アについて
最判昭和30・4・7参照。
国税犯則取締法を違憲とした判例が無いことを知っていれば、それだけで正しいと判断できる。
本肢は、第一問のウの肢と実質的に同じような気がする。
敢えてそうしたのだろうか。
イについて
主として刑事訴訟法の知識である。
無承諾でも、強制にわたらない限り、任意であるというのが刑訴の論理である。
最判昭53・9・7参照。
本肢は誤りである。
ウについて
川崎民商事件判例参照。
本肢は誤りである。
以上から、正解は4である。
全体について
参照条文は全く読む必要がない。
単なる判例知識問題といえる。
旧試験でも出題されていたはったり問題の部類に属するといえるだろう。
参照条文に惑わされて、時間をロスしないようにしたい。