最新民訴法判例

最決平成19年03月20日

【事案】

 相手方は,平成15年12月5日,横浜地方裁判所川崎支部に,抗告人及びAを被告とする貸金請求訴訟(以下「前訴」という。)を提起した。
相手方は,前訴において,@B1及びB2は,平成9年10月31日及び同年11月7日,Aに対し,いずれも抗告人を連帯保証人として,各500万円を貸し付けた,A相手方は,Bらから,BらがAに対して有する上記貸金債権の譲渡を受けたなどと主張して,抗告人及びAに対し,上記貸金合計1000万円及びこれに対する約定遅延損害金の連帯支払を求めた。
 Aは,抗告人の義父であり,抗告人と同居していたところ,平成15年12月26日,自らを受送達者とする前訴の訴状及び第1回口頭弁論期日(平成16年1月28日午後1時10分)の呼出状等の交付を受けるとともに,抗告人を受送達者とする前訴の訴状及び第1回口頭弁論期日の呼出状等(以下「本件訴状等」という。)についても,抗告人の同居者として,その交付を受けた。
 抗告人及びAは,前訴の第1回口頭弁論期日に欠席し,答弁書その他の準備書面も提出しなかったため,口頭弁論は終結され,第2回口頭弁論期日(平成16年2月4日午後1時10分)において,抗告人及びAが相手方の主張する請求原因事実を自白したものとみなして相手方の請求を認容する旨の判決(以下「前訴判決」という。)が言い渡された。
 抗告人及びAに対する前訴判決の判決書に代わる調書の送達事務を担当した横浜地方裁判所川崎支部の裁判所書記官は,抗告人及びAの住所における送達が受送達者不在によりできなかったため,平成16年2月26日,抗告人及びAの住所あてに書留郵便に付する送達を実施した。上記送達書類は,いずれも,受送達者不在のため配達できず,郵便局に保管され,留置期間の経過により同支部に返還された。
 抗告人及びAのいずれも前訴判決に対して控訴をせず,前訴判決は平成16年3月12日に確定した。
 抗告人は,平成18年3月10日,本件再審の訴えを提起した。

 抗告人は,前訴判決の再審事由について,次のとおり主張している。前訴の請求原因は,抗告人がAの債務を連帯保証したというものであるが,抗告人は,自らの意思で連帯保証人になったことはなく,Aが抗告人に無断で抗告人の印章を持ち出して金銭消費貸借契約書の連帯保証人欄に抗告人の印章を押印したものである。Aは,平成18年2月28日に至るまで,かかる事情を抗告人に一切話していなかったのであって,前訴に関し,抗告人とAは利害が対立していたというべきである。したがって,Aが抗告人あての本件訴状等の交付を受けたとしても,これが遅滞なく抗告人に交付されることを期待できる状況にはなく,現に,Aは交付を受けた本件訴状等を抗告人に交付しなかった。以上によれば,前訴において,抗告人に対する本件訴状等の送達は補充送達(民訴法106条1項)としての効力を生じていないというべきであり,本件訴状等の有効な送達がないため,抗告人に訴訟に関与する機会が与えられないまま前訴判決がされたのであるから,前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由がある(最高裁平成3年(オ)第589号同4年9月10日第一小法廷判決・民集46巻6号553頁参照)。

【判旨】

 民訴法106条1項は,就業場所以外の送達をすべき場所において受送達者に出会わないときは,「使用人その他の従業者又は同居者であって,書類の受領について相当のわきまえのあるもの」(以下「同居者等」という。)に書類を交付すれば,受送達者に対する送達の効力が生ずるものとしており,その後,書類が同居者等から受送達者に交付されたか否か,同居者等が上記交付の事実を受送達者に告知したか否かは,送達の効力に影響を及ぼすものではない(最高裁昭和42年(オ)第1017号同45年5月22日第二小法廷判決・裁判集民事99号201頁参照)。
 したがって,受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が,その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として(民法108条参照),その訴訟に関して受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には,当該同居者等に対して上記書類を交付することによって,受送達者に対する送達の効力が生ずるというべきである。
 しかし,本件訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって,直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならない。同事由の存否は,当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならない。
 すなわち,受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるため,同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が速やかに交付されることを期待することができない場合において,実際にもその交付がされなかったときは,受送達者は,その訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならないというべきである。そうすると,上記の場合において,当該同居者等から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず,そのため,受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには,当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから,民訴法338条1項3号の再審事由があると解するのが相当である。

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