最新民事法判例

最判平成19年04月03日(NOVA受講料返還訴訟)

【事案】

 上告人は,外国語会話教室の経営等を目的とする株式会社であり,その受講契約は,次のような約定で締結されている。

ア.上告人が経営する外国語会話教室において授業を受けるためには,あらかじめ,後記の料金規定に従った受講料を支払い,ポイントを登録して受講契約を締結しなければならず,受講者は,登録したポイントを使用して1ポイントにつき1回の授業を受けることができる。

イ.受講料は,次のとおり,登録ポイント数に応じて定められる各ポイント単価に当該登録ポイント数を乗じた額とその消費税相当額を合算した額とする(以下,この受講料の定めを「本件料金規定」といい,受講契約が締結される際に受講料の算定に用いられるポイント単価を「契約時単価」という。)。

(ア) 登録ポイント数600ポイントポイント単価1200円
(イ) 登録ポイント数500ポイントポイント単価1350円
(ウ) 登録ポイント数400ポイントポイント単価1550円
(エ) 登録ポイント数300ポイントポイント単価1750円
(オ) 登録ポイント数250ポイントポイント単価1850円
(カ) 登録ポイント数200ポイントポイント単価1950円
(キ) 登録ポイント数150ポイントポイント単価2050円
(ク) 登録ポイント数110ポイントポイント単価2100円
(ケ) 登録ポイント数80ポイントポイント単価2300円
(コ) 登録ポイント数50ポイントポイント単価3000円
(サ) 登録ポイント数25ポイントポイント単価3800円

ウ.受講者が受講開始後に受講契約を解除した場合の受講料等の清算は,次のとおりとする(以下,後記(イ)の定めを「本件清算規定」という。)。

(ア)  上告人は,受講者に対し,受講料等の受領金の総額から,受講者が解除するまでに使用したポイント(以下「使用済ポイント」という。)の対価額,中途登録解除手数料等を控除した残額を返還する。

(イ)  使用済ポイントの対価額は,使用したポイント数に,本件料金規定に定める各登録ポイント数のうち使用したポイント数以下でそれに最も近い登録ポイント数のポイント単価を乗じた額とその消費税相当額を合算した額とする。ただし,その額が,使用したポイント数を超えそれに最も近い登録ポイント数の受講料の額を超える場合には,その受講料の額とする。
(ウ) 中途登録解除手数料は,受領金の総額から使用済ポイントの対価額等を控除した残額の2割に相当する額とする。ただし,その額が5万円を超える場合には,5万円とする。

 被上告人は,平成13年9月13日,上告人に対し,本件料金規定に従った受講料75万6000円を支払い,600ポイントの登録をして受講契約(以下「本件契約」という。)を締結した。なお,本件契約は,特定商取引に関する法律(以下「法」という。)41条1項1号所定の特定継続的役務提供契約に該当する。
 被上告人は,平成16年7月30日,上告人に対し,本件契約を解除する旨の意思表示(以下「本件解除」という。)をしたが,同日までに386ポイント(以下「本件使用済ポイント」という。)を使用していた。なお,本件解除に伴う清算において,本件使用済ポイントの対価額について契約時単価を用いて算定した場合の中途登録解除手数料は,5万円となる。
 被上告人は,本件清算規定は法49条2項1号に違反し無効であり,本件解除に伴う清算において受領金の総額から控除される本件使用済ポイントの対価額は,その契約時単価の1200円に使用したポイント数の386を乗じた額とその消費税相当額を合算した48万6360円であると主張して,上告人に対し,その対価額を前提として算定された清算金の支払を求めた。これに対し,上告人は,本件使用済ポイントの対価額について,本件清算規定に従って算定すべきであり,本件清算規定によると,使用したポイント数以下でそれに最も近い登録ポイント数300ポイントのポイント単価である1750円に使用したポイント数の386を乗じた額とその消費税相当額を合算した額は,70万9275円となり,この額は,使用したポイント数を超えそれに最も近い登録ポイント数400ポイントの受講料の額である65万1000円を超えるので,本件使用済ポイントの対価額は,65万1000円であると主張した。

【判旨】

 法49条1項は,特定継続的役務提供契約が締結された場合,役務受領者は,同項所定の期間を経過した後においては,将来に向かって当該契約の解除をすることができる旨を定め,同条2項1号は,特定継続的役務提供契約が役務の提供開始後に解除されたときは,役務提供事業者は,役務受領者に対し,損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても,提供済役務対価相当額と解除によって通常生ずる損害の額として政令で定める額(外国語会話教室に係る特定継続的役務の場合,5万円又は解除された契約に係る役務の対価の総額から提供済役務対価相当額を控除した額の100分の20に相当する額のいずれか低い額)を合算した額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額(以下,この金額を「法定限度額」という。)を超える額の金銭の支払を請求することができない旨を定めている。
 上記各規定の趣旨は,特定継続的役務提供契約は,契約期間が長期にわたることが少なくない上,契約に基づいて提供される役務の内容が客観的明確性を有するものではなく,役務の受領による効果も確実とはいえないことなどにかんがみ,役務受領者が不測の不利益を被ることがないように,役務受領者は,自由に契約を将来に向かって解除することができることとし,この自由な解除権の行使を保障するために,契約が解除された場合,役務提供事業者は役務受領者に対して法定限度額しか請求できないことにしたものと解される。
 本件料金規定においては,登録ポイント数に応じて,一つのポイント単価が定められており,受講者が提供を受ける各個別役務の対価額は,その受講者が契約締結の際に登録した登録ポイント数に応じたポイント単価,すなわち,契約時単価をもって一律に定められている。本件契約においても,受講料は,本件料金規定に従い,契約時単価は一律に1200円と定められており,被上告人が各ポイントを使用することにより提供を受ける各個別役務について,異なった対価額が定められているわけではない。そうすると,本件使用済ポイントの対価額も,契約時単価によって算定されると解するのが自然というべきである。
 上告人は,本件使用済ポイントの対価額について,本件清算規定に従って算定すべきであると主張する。しかし,本件清算規定に従って算定される使用済ポイントの対価額は,契約時単価によって算定される使用済ポイントの対価額よりも常に高額となる。本件料金規定は,契約締結時において,将来提供される各役務について一律の対価額を定めているのであるから,それとは別に,解除があった場合にのみ適用される高額の対価額を定める本件清算規定は,実質的には,損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので,上記各規定の趣旨に反して受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない。
 そうすると,本件清算規定は,役務提供事業者が役務受領者に対して法49条2項1号に定める法定限度額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効というべきであり,本件解除の際の提供済役務対価相当額は,契約時単価によって算定された本件使用済ポイントの対価額と認めるのが相当である

戻る