乱立、法科大学院に試練

日経ネット関西版【2007年4月2日】

(以下引用)

乱立、法科大学院に試練

関西圏の法科大学院が学生の確保に躍起になっている。昨秋、第1回の新司法試験で各大学の明暗が分かれたが、当初の期待より全体の合格率は低く、乱立された法科大学院の淘汰が必至とみられるためだ。優秀な学生を集め、実績を積み上げるしか生き残りの道はない。大学側は独自性を出そうと懸命だ。

●「合格者ゼロ」衝撃

 3月、姫路独協大に衝撃が走った。文部科学省が同大の法科大学院を全国70大学以上の中で唯一「最も改善を要する」と4点の項目を挙げて指導したのだ。法務研究科長の浦東久男教授は「まさかこんなことになるなんて」と嘆く。

 それでなくても同大は昨秋、8人が新司法試験を受けて合格者ゼロ。その後の同大の法科大学院の受験者は45人と昨年より4割以上減った。実績を出せない大学が避けられることを如実に示してしまった。

 だが嘆いてばかりもいられない。文科省の指導は、専任教員の年齢構成の偏り、成績評価基準の甘さ、討論式講義の不足など4点。即座に70代の教員3人を30―40代に代え、学生への予習徹底による討論の活発化も狙うなど「すべての指導に対応した。今年こそ合格者を」(浦東教授)と決意も新たにする。

 対照的なのが大阪市立大。26人が挑み18人が合格した。合格率69%は関西圏では堂々の首位。これまた学生の反応は敏感で、法科大学院の志望者は930人と前年より3割以上増えた。阿部昌樹教授は「1クラスの学生数は25人で他大学の半分程度。教員2人が学生20人の相談に乗る担当制もあり、丁寧な支援が効いたのでは」と“勝因”を分析する。

 第1回の新司法試験の合格率は全国ベースで48%。旧試験の3%から門戸は広がったが、それでも法科大学院設立前に期待された合格率7―8割に及ばない。今年からは再挑戦組と、3年課程の未習組も加わり、合格率は2―3割に下がると試算される。

 新司法試験の受験者の出身大学院58のうち関西圏の大学院は13。合格者数上位に5大学院が入るなど健闘したが、合格率はやや低め。平均48%を上回ったのは4大学院だけで、合格者ゼロも3校。全国的にも明暗が分かれ淘汰が最も予想される地区といえる。「今はそっとしておいてほしい」。合格者を出せなかった大学の関係者からは悲そう感すら漂う。

 少子高齢化で大学経営は難しくなる一方。多くの大学が「活性化の目玉に」と法科大学院を設立したが、実績の低迷で逆に大学経営の足を引っ張る事例の方が目立つ。何とか優秀な学生を確保し、あの手この手で合格者を増やそうと懸命だ。

●社会人学生に的

 社会人学生に的を絞ったのが大阪学院大。講義は平日の大半が夕方からで、土日は午前から受講できる。「全国でも土日開講は当大学だけ。実績も知名度も無いから、特色を明確に打ち出した」。法務研究科長の南川諦弘教授は狙いを話す。実際、学生の7割が働きながら学ぶ。24時間オープンの自習室も備える。同大は既習コースを開いておらず、今年の試験で真価が試される。

 関西大は昨秋から法科大学院の合格者向け説明会を手厚くした。合格発表後、毎月1回説明会を開き、模擬講義や合格者の体験発表などを盛り込んだ。「他大学との併願者は多い。4月まで何もせず放ってはおけない」。法務研究科長代理の今西康人教授は学生確保の狙いを話す。

 他に、立命館大は昨年から交通の便のいい京都市の二条駅前に法科大学院などが入る朱雀キャンパスを新規開設。神戸学院大は新司法試験不合格者を補助教員として採用し、再挑戦を後押しする。近畿大は若手弁護士による勉強会や支援体制を充実させた。

 法科大学院のスタート当初の理念の一つが、受験偏重の改善。学生は試験対策よりも将来の進路を見据え、腰を落ち着けて勉強に専念できるはずだった。だが法科大学院が乱立した結果、しわ寄せは学生に。法科大学院の淘汰は必至と関係者は声をそろえる。大阪大の水谷規男教授は「5、6年で新司法試験の合格者は現在の約1000人から3000人に増える見通し。法科大学院は苦しい時期を経て、いくらか当初の理念に近づけるのでは」と期待を込める。
(大阪経済部 田村広済)

(引用終わり)

【コメント】

法科大学院の淘汰は、合格者数を基準にして行われることになるだろうということが分かる。
これは、受験生のニーズからして当然だ。
そうなると、ロースクールの予備校化は避けられない。
その一方で、公的な法科大学院認証機関では、合格率は評価対象とされていない。
ローとしては、表向きは合格者増加を強調しにくいという面もある。
結局、反予備校という建前と、予備校化したいという本音をうまく使い分けられるローが生き残りやすいといえるだろう。
高校での必修教科未履修問題のような問題が将来起きる可能性は、極めて高い。

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