長勢法務大臣閣議後記者会見

司法試験関連部分のみ抜粋

平成19年4月17日(火)

【民法772条に関する質疑】
Q:民法772条の関係で,厚生労働省が先月,戸籍がなくても児童手当などを支給できるという通知を市町村に出したといったことなのですけれども,厚生労働省の話なのですが,その厚生労働省の対応に対する評価やお考えをお聞かせください。

A:具体的にどういう通達を出されたのか,私は知りませんが,今の民法の規定は,子供さんの立場に立った体系になっていると,私は思っています。ところが,いろいろな事情の中で,今言ったような戸籍がないという方が生ずるといった場合に,民法の体系と一応離れて,その子供さんの社会的な不利益を緩和するということが可能なもの,また別途考えられるものはあるのかと思います。厚生労働省のお話は聞いてないので,そういうことなのかどうか,分かりませんけれども,民法の体系の問題とは別に,そういうことを考えることはよろしいのではないでしょうか。

Q:子供の福祉を優先するとはいえ,戸籍がないという状態を黙認といいますか容認といいますか,戸籍がないというのは望ましくない状態ではあるのですけども,その辺りの法務省としての対応というのはどうなのでしょうか。

A:戸籍を作る道が全くないわけではないので,その道を通らないようにしてほしいという御意見があるということではないですか。裁判手続をして,戸籍を作れるようにしてあるわけで,嫡出推定でなければ戸籍は作らせないという法律,体系にはなっていません。

Q:確認なのですけれども,戸籍がないという状態というのは望ましいことではないというのは変わらないですか。

A:それはもちろん望ましくないです。望ましくないのですが,法のルールの中で,対応しないということはいかがなものかと思います。負担が多いとか少ないとかといういろいろな御議論がありますから,そういう意味での過度な負担のないようにするというのは,考えていかなければならないと思っています。根本的にどうしてそういうことが起こるのかという事情も何も考えずに,ただ,今の制度を崩壊させるということは,社会全体としては,いかがなものかと思います。

Q:例えば,今,出生届を出さないというのは,前夫が暴力を振るうから,出生届を出すと住所が知れてしまう,そういうことで出さないのですが,そういう対策はそういう対策でやらなければいけないとおっしゃっているのですか,それとも,裁判の手続などで簡略化するとかそういうことをおっしゃっているのですか。

A:別に具体的な問題を想定して申し上げたわけではないので,今おっしゃったようなこともあるかもしれません。考えられる一つかもしれませんけれど,私が具体的にこういうことを考えているということを前提に申し上げたわけではありません。

Q:今回の厚生労働省の通達で,無戸籍児をめぐるいわゆる社会的問題というのは,おおよそクリアされたとお考えですか。

A:私は,何かで厚生労働省がそういう趣旨の通達を出されたというのをちらっと読んだような記憶がありますけれど,中身を知りませんので,余り正確にはお答えできません。

Q:週末のテレビの報道番組で,中川政調会長が,要約すると法務省通達以外でも救済範囲の多少のプラスアルファが必要なのではないかというニュアンスで発言なさっていました。議員立法に反対するというスタンスで,中川政調会長と大臣はほぼ一緒だったと思うのですけども,少し足並みがニュアンス的にずれているという感じがするのですが,中川政調会長の発言を大臣はどう受け止めになるのかということと,今後さらにその救済することが必要な者が仮にあるとお考えならば何なのかということをお願いします。

A:政調会長と私の意見がどの程度一致していて,どの程度一致していないのかは,私もそれ程きちんとした話をしていませんから,分かりません。何か今のお話だと,少しずれが出てきたと言わんばかりの言い方でしたけれど,政調会長が何をお考えになってどう御発言されたのか,私は聞いていませんから,お話のしようがありません。私は,現在の民法772条の嫡出推定の体系そのものは,合理的なものであるので,維持すべきだと思っているということです。ただ,いろいろな事情がありますから,その事情が,法律の趣旨の範囲内,解釈の範囲内である場合には,今回のような対応を採ることによって,無理な負担は解消したいと思っています。それで対応できない場合は,裁判手続というのがあるわけですから,それを通じて,事情のある方の対応をしていくという仕組みを維持するということを基本にして,今まで判例もいろいろな積み重ねもありますし,そういうことも踏まえて,考えられることがあれば,社会通念に照らして,これはいかにルールといえどもというケースも,世の中にないわけではないと思いますから,対応する知恵があれば,検討することはやぶさかではありません。現時点では,法務省の方針による通達をなるべく早く発出できるように作業をしている段階ですので,そういう検討まで,進めているという段階にはありません。

【法制審議会答申に関する質疑】
Q:11年前に法制審議会が答申した,いわゆる再婚期間の短縮とか選択的夫婦別姓など5点ほどあったと思いますが,これらの実現について,現段階での大臣のお考えを改めてお伺いできればと思うのですけれども。

A:夫婦別姓,相続の問題あるいは今の再婚期間の問題等々の答申があったことは承知をしていますが,これらについては全体として,改正の動きは進まないで今日にあります。その後,国民の皆さんの動きを見てきているわけですけれども,今早急に,この民法の体系,これは全部セットですが,これを改めるべきだという雰囲気は,余り私は感じていません。

平成19年4月20日(金)

【民法772条に関する質疑】
Q:300日問題ですけれども,通達の検討状況,あるいは,その他の検討状況・進展などはどうなっていますか。

A:通達については,前から話しているように,我々の案では,離婚後の懐胎であることが,医師の証明により明確であれば,前夫以外の子としての届出が,窓口でできるようにしたいという考えです。医師の方々の証明書をどのような形でできるか,してもらえるかということがポイントですので,産科医会などと今,相当詰めが進んでいます。まだ最終確定ということにはなっていませんが,近々,最終的な合意に達するのではないかと思います。それができれば,与党の皆さんにも御理解をいただいて,早急に通達を発出するという段取りにしたいと思っています。

Q:その他の救済策の検討というのは,やっているという理解でよろしいのでしょうか。

A:今週は,少年法の問題があったりして,党の方は余り動きがないように聞こえていますが,少なくとも,法務省として,その他のところまで議論をする余裕は今のところありませんので,それは今やっていません。

Q:今の確認ですけれど,法務省として,その他の検討をやっていないというのは,もう今回検討している通達で当面の対応を終わるということですか。

A:将来的にどうするかは,まだ長いスパンで考えればということになるのかもしれませんが,法務省としては,それ以上の対応を当面取るという考えは,今までなかったわけで,今もそういう状況にあるということです。

戻る