平成19年度新司法試験について

5月15,16,18,19の4日間に、平成19年度新司法試験が行われた。
問題は、法務省のサイトで公表されている。

短答式試験について

(公法系)

憲法は、知識に関しては旧司法試験のときと傾向はさほど変わっていない。
人権の判例、統治の条文知識ということで固まっている感がある。
旧司法試験と違うのは、会話調の論理問題がないということである。
行政法では、なぜか個数問題が復活した。
単純正誤(肢ごとに、1と2で正誤を選ばせるもの)が技術的に可能であるなら、偶然正解になりやすい個数問題は不要のはずだ。
復活させた理由がよくわからない。
ひょっとすると、解答欄の数に制限が加えられたのかもしれない。
単純正誤にすると、肢の数だけ解答欄を用意しなくてはいけないが、個数なら、一個で済むからだ。
全体的に、去年と比べて、単純正誤を意識的に減らしたようにみえる点も、これと符合する。
10、13、21、22、23、32、35、36あたりは、原案は単純正誤だったのかな、と思わせる。

(民事系)

民法は旧司法試験と同様の知識問題の羅列で、特に目新しいものはない。
旧司法試験の過去問を解いて対策すれば十分である。
商法も条文知識を訊いているだけである。
ただ、商法は旧司法試験に択一がないので、司法書士の商法や公認会計士の企業法の問題集などで補充するといいかもしれない。
民訴は、民事系の中ではやや作問に力が入っているが、基本的にはただの知識問題である。
これも旧司法試験では択一が無いので、司法書士の問題集などで補充する必要があるだろう。

(刑事系)

刑法は昭和時代の旧司法試験の傾向に似ている。
知識を前提にしたあてはめのテストである。
構成要件の判例知識を知らないと、論理だけでは答えを出せない。
そういう意味で、平成以降の旧司法試験の問題とはかなり異質である。
しかし、刑訴は逆に、平成13年以降の旧司法試験の刑法のような問題が多かった。
また、知識問題にしても、通信傍受法を訊いてくるなど、何か普通でない感じを受けた。
この傾向が今後も続くのか、注意を要する。

(今後の対策)

全科目共通、ひたすら肢別本をやって、知識をガチガチに固める。
これが最短距離で、かつ、非常に効果的である。
プロセスも何もあったものではないが、相手が○か×かの結論だけを訊いてくるのだから、仕方が無い。
刑事系については、これに加えて、若干問題集で出題形式に慣れておくと、より良いだろう。

論文式試験について

(公法系)

去年同様の資料問題である。
ポイントは、「問題を頭から読まない」ことである。
1問目で言えば、まず、設問を読み、教団側、市側の主張が何か(主として資料3)を読み、そして、それに利用できる資料を読む。
このようにして、効率的に情報を処理していかないと、時間が足りなくなるし、整理した答案を書けない。
一問目については、論点的なことは、ほとんど重要でない。
信教の自由と条例が法律の範囲内かという点が主な論点であるが、これはあっさり論証したい。
重要なことは、あてはめができているかである。
平等の意義や条例で財産権を制約できるか、等にページを割くのは避けたい。
ましてや、市が教団の主張を認めると政教分離に反する(エホバ事件的な発想)などは書いてはいけない。
2問目の行政法は、旧司法試験の刑法各論の感覚で淡々と要件にあてはめて解答すると良い。
検討する流れは、資料1にほとんど書いてあるので、それに従えばよい。
とはいえ、実際にそれを限られた時間でやり遂げるのは、相当困難ではあるが。

(民事系)

第一問について、設問1は、すでに発行済みであることから、新株発行無効の訴くらいしか手段が無い。
結局、取締役会の手続欠缺や第三者有利発行の認定(ここで資料@を使う)と、それが発行無効事由にあたるかを論じれば良いということになるだろう。
設問2は、423条1項の任務懈怠のあてはめと、賠償の範囲を書けばよい。前者では、経営判断原則をコンパクトに書き、資料@から、出資は550万*300=16億5000万であるのに対し、資料Bは24億のプラス効果を示している一方、資料Aで中核の人材たるCとその取り巻きが退職してしまう可能性を指摘しているから、この点の評価を書く。
そして、後者では、民法416条の因果関係論を書けば良いのではないか。
株価の下落は、特別事情だが、資料Aから、予見可能であるとするのが、当てはめやすいと思う。

第二問は、事案の把握が重要である。
ただ、これが結構骨が折れる。
ポイントは、まず、公法系で述べたとおり、設問から、逆算的に事案を読むことである。
それに加えて、全体をざっと斜め読みすることも、必要になる。
設問1を見てから、K弁護士の問いかけに遡った後は、一旦全事案を見てみる必要が出てくるからだ。
設問1の入り口は、解除権の要件吟味である。
弁済提供・帰責性・催告を検討するなかで、特定物売買と瑕疵担保責任論、履行補助者論、定期行為(相対的定期行為の場合であろう)該当性等を検討することになる。
帰責性不要論の指摘については、おそらく帰責性以外の要素を広く検討してくれとの趣旨であろうから、さほど気にすることは無いと思う。
18万の損害賠償については、416条論のあてはめで足りるだろう。
設問2は、(1)は文書成立につき228条が指摘できれば、十分だろう。
Yが認否しなければ、不知として、否認と同じ扱いになりそうだが、積極的に争わないものとして、成立の真正が認められることになるだろう。
(2)は自白の撤回と理由付否認が書ければ問題ないだろう。
弁論準備手続を終えているので、説明義務と時機に後れた攻撃防御方法についても、気付けば書きたい。
設問3は、放棄と和解の既判力くらいしか書くことが無いように思える。
既判力を肯定すれば、取り下げと違って、紛争解決に有効ということになる。
後は、取り下げ契約の有効性も一応問題となるが、大展開すべきではないだろう。
また、放棄や和解の取消し、解除を書きたくなるが、本問では問われていないと考えるべきだろう。
そうなると、放棄と和解の違いが無いことになってしまう。
書くとすれば、既判力の範囲が違うという点であるが、うまく書くのは難しいだろう。

総じて、当てはめ重視ながらも、旧試験的論点主義も残っている。
論点抽出能力が無いと、あてはめもしようがない。
従って、民事系については、論点の学習と、旧試験過去問等を使って論点抽出の練習をすることが必要である。

(刑事系)

公法系・民事系と比較すると、刑事系の造りは非常に淡白である。
やる気があまり感じられない。
まず、第一問だが、問題の造りを練っていない。
設問冒頭で甲乙罪責を問い、小問は最低限の問いとして設定されている。
しかし、これでは小問だけ答える者が出てくるだろう。
その人は、Bに対する、横領・詐欺の検討を丸々落とすことになる。
仮に、わざとやったとしたら、悪質としかいいようがない。
内容的には、定番論点ばかりだ。
権利行使と詐欺・恐喝、欺罔と恐喝の区別、不法原因給付と横領・詐欺、共犯離脱論あたりを書くことになる。
ただ、詳細に事案があがっており、かつ小問2では判例もあがっている。
これは生かさなければならないから、論証は超コンパクトで、あてはめをやりすぎるくらいでよい。

それから、第二問だが、これは、ただ旧司法試験の問題を長くしただけという感じである。
論点的には、公道のビデオ撮影の法的性質(強制か任意か)とその許容限度、同種前科による犯罪認定だけである。
あとは、詳細に事案をあげたので、うまくあてはめてくださいね、ということだ。
解く側は結構大変だが、作るのは楽だっただろう。
一応気をつけて欲しいのは、設問2は犯人と甲との同一性の認定に限定しているので、主観面の立証ならOKとか、量刑には使えるとか、そういうことは余事記載になるということである。
例外の余地としては、手口の特殊性を挙げるくらいにしておくべきだろう。

総じていえることは、旧司法試験とさほど変わらないという点だ。
旧司法試験でも、平成以降は詳細な事案にあてはめをさせる問題が多かった。
その傾向を極端にしたものという程度の認識でよさそうである。
どうやら、刑事系の試験委員は、さほど作問に興味がないようである。

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