平成19年度旧司法試験論文の感想

台風と地震の中での実施

15、16日に旧司法試験の論文式試験が実施された。
問題は法務省が公表している(こちら)。
実施中に台風や地震があったが、特に影響はなかったようだ。

全体

新司法試験と比べて、やや論理の比重が高かったように思う。
新司法試験であてはめ能力の高い人を採り、旧司法試験で論理性の高い人を取る。
そういう棲み分けでバランスを取ろうとしたのかもしれない。

論理重視であれば、通常は書くことは少ない傾向がある。
しかし、今年の問題は論理重視ながら、書くことが非常に多い問題が多かった。
その意味で、難易度は高かったといえる。
要領よくまとめられた人が上位になるだろう。

憲法第一問

いわゆる一行比較問題である。
人権はとにかくあてはめ、と決めていた人は面食らったかもしれない。
いかにも旧司法試験らしい問題だと思う。

内容的には、何をどう書くか、迷う問題である。
受験生通説的には、公務就任権は職業選択の自由と位置づけられている。
ただ、そうすると、国民主権は権利に内在する制約とはなりにくい。
なぜ、国民主権との抵触が生じるかを書かなくてはいけないだろう。
他方、参政権の一要素として位置づければ、国民主権と直接関係することになる。
それから、地方の話なので、住民自治との関わりで国民主権との衝突を緩和できるか。
このあたりは、管理職任用事件判例も触れていないところである。
地方参政権が対比であがっているのは、その辺の権利の性質の違いを書かせたかったのではないか。
なお、定住外国人などの類型による区別は、あまり大展開してはいけないと思う。

こういう問題は対比を無視して別々に書いてもそれなりに評価されたりする。
無理に対比しようとして失敗するくらいなら、小問形式で解いてしまうのも手であろう。

憲法第二問

旧司法試験の統治は一見して何を書いていいのかわからない問題が多い。
今年の問題もそんな感じだが、前提論点ははっきりしている。
すなわち、憲法と条約の優劣、違憲審査が条約に及ぶか、それから、付随的審査制である。
これだけをしっかり書いておけば、まあ十分ではないか。
そこから先は、権力分立を軸にして、適当に書けばいい。
逆に、前提論点を落として権力分立だけに終始すると厳しい評価になる可能性が高い。

民法第一問

論点的には背信的悪意者排除論と、特定債権への詐害取消がらみの論点くらいか。
突っ込んで考えると、177条の修正原理の論理一貫性(主観要件が整合的か等)という問題意識がありそうだ。
しかし、小問の数からして、それはとても書けない。
なお、1の(2)の事案については、虚偽の意思表示があるとは書いていないので、94条1項は関係ない。
単に、虚偽登記に公信力が無い旨述べれば足りるので注意したい。
同様に、2の(2)で、94条2項は直接適用でなく、類推になる。
書くことが多いので、コンパクトに論述できるかがポイントになる。

民法第二問

京樽事件を一瞬思い浮かべる事案だが、直接は関係なさそうだ。
本問ではサブリースといえる事情が無いから、サブリースの議論に引きづられないようにしたい。
ABを事業共同体だとする事等は、無理があるだろう。

一連のAB間の合意について、バラして考えれば、典型論点の組み合わせに見える。
合意解除の対抗、賃貸人の地位の移転、敷金・賃料債権の移転などである。
ただ、どうもそれを別々に論じても意味が無い。
それぞれの結論の整合性が取れなくなるからだ。
従って、一連の合意を一まとめに捉える方が良いように思う。
その上で、合意をCに対抗できるとする法律構成。
それと、AB間でのみ合意は有効で、Cには対抗できないとする法律構成。
この二つを挙げればいいのではないか。
かなりの難問だと思う。

商法第一問

条文を引いてあてはめられるかを問う問題である。
利益相反取引にあたること、重要事項の開示・取締役会の適法性(特別利害関係・定足数等)など、要件は充たしているかをまず示す。
業種が示されており、競業にも見えるが、甲社と乙社が取引する場合には、得意先・ノウハウがどうこうということはない。
しかも、競業を問題にするとすれば、役員就任自体から問題とすべきで、本問では問われていないと見るべきだろう。
あとは、個別に423条を検討すれば足りるだろう。
意外に条文を引けなかった人が多かったのではないかと思う。

商法第二問

予備校答練で出そうな論点組み合わせ問題である。
A社については、黙示の商号使用許諾についての名板貸人の責任、副社長の肩書使用につき表見代表取締役の類推。
B社については、商事代理、表見責任による責任回避の問題。
Cについては、取締役の対第三者責任と法人格否認の法理。
このくらいで十分ではないか。
なお、商号の不正使用については刑事責任もある(978条3号)。
商号や名板貸人の条文は、会社法の方を挙げることになる点に気をつける必要がある。

刑法第一問

答練などでおなじみのクロロホルム事例だ。
ただ、共犯とうまく絡めて作問されており、新司法試験より気合いを感じる。
早すぎた構成要件の実現の論点をしらなくても、実行行為をどれにするかを明示すれば大丈夫だろう。
ここで、吸引行為のみが実行行為だとすると、乙離脱時には実行行為は既に終了していることになる。
他方、一連の行為全体を実行行為と捉えると、乙の離脱は一応実行行為の途中だが、しかしもう結果発生済みという特殊な事例となる。
丙については、着手前の離脱なのに因果性を既に設定しているという部分の特殊性の処理を訊いている。
前提的に共謀共同正犯が問題となるので、ここをコンパクトにまとめる事も隠れたポイントの一つである。

刑法第二問

各論は例年通りの多論点問題である。
公務と業務、欺罔して奪う行為の詐欺窃盗の区別、不法領得意思、被害者への運搬、恐喝と公務執行妨害の罪数処理あたりか。
甲の財産罪を否定すると乙の盗品犯も不成立となるので、不法領得意思で頑張りたい。
ただ、普段必要説の人が不要説にするのは、とんでもない事を書きがちなので、止めた方がいいと思う。

民事訴訟法第一問

学者答練系の一行問題が最近の傾向として定着したようだ。
さすがに毎年の事なので、もう受験生もあまり驚かなかったのではないか。
内容面だが、鑑定はすぐに思いつくはず。
そして、条文の目次を見れば、専門委員に気付く事は容易だと思う。
根本的な違いは、証拠方法かどうか。
つまり、それ自体から証拠資料を引き出すことに主眼があるかということである。
鑑定は証拠方法であり、専門委員は違う。
この点が、目的の相違ということになろう。
方法の相違は、目的の相違から派生する点に絞った方がよい。
例えば、鑑定事項の特定、鑑定人質問のような制度が、専門委員にはないこと、
争点整理段階から専門委員は出番があるが、鑑定人は証拠調べで登場すること。
このあたりを現場で気付けるかどうか。
専門委員も鑑定も、条文の数自体が規則も含めて少ないことから、落ち着いて読み解けた人が上位になる。

民事訴訟法第二問

債権者代位訴訟を問う問題である。
答練や演習書で何度も聞かれているところなので、出来はいいのではないか。
小問1は訴訟要件の審理の原則例外と代位訴訟ではどうかの評価。
小問2は訴訟要件確認前の本案判決の可否の原則例外と代位訴訟ではどうかの評価。
小問3は既判力の主観的範囲の原則例外と代位訴訟ではどうかの評価。
問われていることは明確なので、その枠にはめて書いていきたい。
代位訴訟については学説がかなり錯綜しており、いくらでも書くことはありそうに見える。
だが、原則論とのリンクを重視して、ほどほどのところにしておくべきだろう。

刑事訴訟法第一問

逮捕とそれに伴う捜索差押えのあてはめを問う問題である。
逮捕を違法とすると、任意の所持品検査(明らかに無理)くらいしか書けなくなりそうだ。
かといって、現行犯・準現行犯として認めるには厳しい。
こういう場合のテクニックは二つある。
一つは、「逮捕が仮に適法だった場合・・」という書き方。
もう一つは、緊急逮捕の実体要件は充たす軽微な違法であると認定し、軽微性から捜索差押えはできるとする方法だ。
その点以外は、さほど難しいところは無いように思う。

刑事訴訟法第二問

これも答練や演習書等で頻出の問題点である。
「判決の問題点」ではなく「手続の問題点」とあるので、一応訴因の特定性も検討した方がよい。
メインは、概括的認定と訴因変更の要否だろう。
なお、択一的認定は異なる犯罪をまたぐ認定なので、混同しないようにしたい。

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