平成19年度旧司法試験論文式
憲法第一問参考答案

第1.本問前段条例は、外国人の公務就任権を侵害し違憲とならないかが問題となる。
 他方、後段法律は、外国人の地方参政権を侵害し違憲とならないかが問題となる。
第2.まず、これらの権利の憲法上の位置づけを検討する。
1.公務就任権は、公務員としての職業を選択する権利と考えることができる。よって、職業選択の自由(22条1項)として位置づけられる。
2.他方、参政権は、国民主権原理(前文1段1文、1条)や15条1項の公務員選定罷免権、同条3項の普通選挙制度によって基礎付けられる。そして、地方参政権については、さらに、93条2項によって、直接選挙の権利として保障されている。
第3.もっとも、これらの権利が、外国人にも国民同様に保障されるのかは、別途検討が必要である。
1.外国人の人権享有主体性は、人権の固有性・前国家性から肯定できるが、国籍離脱の自由(22条2項)のように性質上保障できないものもある。
 よって、外国人は権利の性質上可能な限りで、人権を享有しうると考える(マクリーン事件判例同旨)。
2.では、公務就任権は性質上外国人に保障可能な人権であろうか。
 この点、職業選択の自由一般に関しては、就労活動と国籍とは通常関係がないから、外国人にも保障可能である。
 しかし、公務就任権は、単なる就労ではなく、公務員としての地位を伴う事から、別途考慮が必要である。
 憲法上、公務員は内閣の指揮を受け(73条4号)、全体の奉仕者(15条2項)として、国民一般には課されない憲法尊重擁護義務を負う(99条)という特殊な地位にある。これは、公務員は公権力の一翼を担うことから、国民主権原理の下、国民の一般意思に基づく法の支配に服する事を要求されるからである。
 従って、そのような職務の中立性が期待し得ない場合、公務員足るべき資格を与える事はできない。
 外国人は、我が国以外に所属する国を有するから、所属国と我が国の利害対立が生じる事柄について、類型的に職務の中立性を期待することは出来ない地位にある。
 よって、公務員足るべき資格、すなわち公務就任権は、一般的に外国人に保障する事はできない。
 もっとも、そのような国家間の利害対立は、地方レベルでは通常考慮する必要が無い。従って、地方における公務就任権に限っては、原則として外国人にも保障されると考える。
3.他方、参政権は、主権の行使の一類型であり、これを外国人に認めることは国民主権原理に反する。よって、外国人に保障することはできない。
 もっとも、地方参政権については、地方自治の本旨(92条)に含意される住民自治の原則、すなわち、地方の意思決定権は住民にあるという考え方からは、当該地方に定住している外国人に限っては、これを保障していると解する余地もありそうである。
 しかし、地方自治権は、主権の単一性から、地方の固有権ではない。そうである以上、住民自治にいう「住民」も、国民たることを当然の前提としているとみるべきである。よって、法律で付与することは格別としても、憲法上の保障の対象と考えることはできない。
4.以上のように、公務就任権は、公務の中立性が保たれる限り、国民主権との抵触は生じないため、地方においては外国人にも原則として保障されるが、選挙権は主権行使そのものであるため、地方においても外国人には保障されないという相違がある。
第4.そうすると、前段条例については、憲法上外国人にも原則として保障される地方公務員についての公務就任権を全面的に否定するものであるから、22条1項に反して違憲である。
 他方、後段法律は、外国人の地方参政権が憲法上保障されていない以上、合憲である。

以上

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