漏洩問題関連ニュース

読売新聞WEB版2007年7月28日3時4分配信記事

(以下引用)

新司法試験で類題指南、慶大処分を法科大学院協が先送り

 新司法試験の「考査委員」として出題を担当した慶応大法科大学院の植村栄治教授(57)が試験の類題を事前に教えた問題を巡り、全74校でつくる法科大学院協会(東京)が、有効な対応策を打ち出せずにいる。

 慶応大への処分には踏み切れておらず、他校に対する調査は検討もしていない。9月中旬の合格発表を控え、修了生らの間で「法科大学院制度を信頼していたのに裏切られた」との声が高まり、現場の教員からも批判が出ている。

 今月24日、東京都内で開かれた同協会の臨時理事会では、出席した慶応大の理事を途中退席させて対応を検討した。当初は、慶応大を約20人の理事メンバーから外すなどの処分もあり得るとみられていたが、結論は、植村教授の問題に限定した調査委員会の設置にとどまった。

 ネット上では、他校でも考査委員が不適切な受験指導をしたという学生からの指摘が相次いでいる。しかし、同協会は「他校については法務省や文部科学省が調査しており、協会としては不確実な情報を基に調べるつもりはない」として、他校の調査については検討すらされなかった。

 「協会内では、毎年多くの合格者を出す『上位校』と、その他の大学院の考え方に温度差がある。上位校は、このまま受験競争が続いても生き残れると考えているため、危機感が薄い」。都内の法科大学院の教授は、そう指摘する。別の法科大学院教授も、「ルール違反に対しては早期に厳しい処分を科し、ウミを出し切ることで信頼を取り戻さないといけないのに……」と嘆く。

 一方、得点調整などの是正措置を要望していくかどうかについて、同協会では「身内(慶応大)の不祥事が原因だから、協会としては法務省に(是正を)要望しづらい」といった声があり、見送られている。

 これに対し、学校レベルでは、要望に踏み切った所も。関西大(大阪府)と関西学院大(兵庫県)の両法科大学院は今月上旬、是正措置などを求める連名の要望書を法務省に提出した。「植村教授から出た情報は関東の他の受験生にも伝わった可能性があり、相対的に関西は不利になった」といった憤りの声が、修了生らから上がっているためだという。

(引用終わり)

【コメント】

慶応大に対して厳格な処分をすれば、慶応大側から、「俺たちだけではないのに不公平だ」という声が出る。
そうすると、他校の状況も調査せざるを得なくなる。
他の法科大学院も、自分のところを調査されるのはマズい。
各教官の指導状況を逐一把握しているわけではないからだ。
結局、慶応大への処遇は甘くならざるを得ない。
これはこれで、同業組織としてはやむを得ない対応といえる。
利害が共通し、相互の対立抑制が働かないとこうなる。

ただ、法科大学院同士も、一枚岩ではないようだ。
記事にもあるように、上位と下位とで対立関係がみられる。
その一つの現われといえるのが、以下の記事である。

中日新聞WEB版2007年7月27日02時06分配信記事

(以下引用)

新司法試験めぐり告発へ 論点漏らした慶大教授を

 新司法試験の考査委員だった慶応大法科大学院の植村栄治教授(57)が、試験前の答案練習会で実際の問題に類似した論点を学生に説明していた問題で、弁護士で神戸学院大法科大学院の樺島正法教授(64)らが26日、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで、近く植村教授を東京地検に告発する方針を固めた。

 樺島教授らは「試験問題を作成する考査委員と法科大学院の教授の立場では利益相反が起こる」と主張。考査委員から法科大学院の教授をすべて除外し、第三者の法学者などで構成するよう求める上申書を近く、長勢甚遠法相あてに提出する。

 植村教授は問題発覚後の法務省の調査に「合格者数維持が念頭にあった」と説明、6月29日に委員を解任された。

 告発するのは樺島教授や弁護士ら約30人。告発状などによると、植村教授は法相が任命する非常勤国家公務員の考査委員として、新司法試験の出題と採点を担当。

 5月の試験前の2、3月に計7回、答案練習会で学生に行政処分の執行停止などについて解説し、その後参加者に送った電子メールで、入管難民法の判例を優先的に勉強するべきだと紹介した。

(引用終わり)

【コメント】

神戸学院大法科大学院は、昨年の合格者を一人も出しておらず、教官には一人も考査委員がいない。
その意味で、下位ローの筆頭クラスに位置する。
自校に考査委員がいない以上、漏洩はあり得ない。
調査が自校に及んでも怖くないため、告発をやりやすい立場にいるといえる。
構造的には、下位ローが上位ローの抜け駆けをチェックする機能を果たしうることになる。

国家公務員法100条1項にいう「秘密」とは、非公知性と要秘匿性の両方を具備するものとされる。
論文試験における出題論点などはこれに当たるといえよう。
そして、考査委員は、法務大臣の任命する非常勤の国家公務員である(司法試験法15条2項・3項)。
従って、植村教授のケースは、国家公務員法違反となる。

最近、獣医師国家試験・公立高校入試・教職員採用試験など問題漏洩のケースは多い。
その中で、守秘義務違反で立件されるものも少なくない。
植村教授の逮捕・起訴の可能性はそれなりにある。

以前書いたように、この手の漏洩は、一罰百戒的なやり方しか有効な防止手段はないと思う。
その意味で、植村教授は逮捕・起訴されるべきであろう。
なお、罰則は1年以下の懲役又は3万円以下の罰金である(国家公務員法109条12号)。

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