平成19年度旧司法試験論文式
民訴法第一問参考答案

第1.裁判所が争点整理又は事実認定に関して専門家の協力を必要と認めるときに,これを可能にするため民事訴訟法が定める方法としては,鑑定制度(第二編第四章第四節)と専門委員制度(第一編第五章第二節第一款)がある。
第2.両制度の目的には,以下のような相違がある。
1.鑑定においては,鑑定人から直接判決の基礎をなす事実の確定に必要な資料,すなわち訴訟資料を収集する目的がある。従って,鑑定は証人尋問と同様,証拠方法の一つである。「証拠」(第二編第四章)の章にあるのはそのためである。
2.他方,専門委員の目的は,補助的に訴訟の円滑明瞭化を図る点にある(92条の2)。従って,専門委員から直接訴訟資料を収集する目的はなく,専門委員は証拠方法ではない。「訴訟手続」(第一編第五章)の章にあるのはそのためである。
第3.以上のような目的の相違があるため,内容にも相違が見られる。
1.鑑定は証拠方法の一つであるから,証拠調べ手続において,訴訟資料の収集提出について権能・責任を有する当事者の申出によって開始される(180条,規則129条)。
 他方,専門委員は証拠方法ではなく,訴訟の円滑明瞭化が目的であるから,証拠調べ手続に限られず,争点整理手続等においても,裁判所が必要と認めるときに,決定で関与させることができる(92条の2第1項)。
 もっとも,証拠調べ手続において証人等に直接質問する場合には,その質問に対する回答が訴訟資料となることから,当事者の同意が要件となっている(同条2項)。また,和解期日においては,手続の流動性から,一般的な説明と争点についての判断資料との区別が困難であり,専門委員の説明が和解の争点判断に事実上利用されることになりかねないため,当事者の同意が要件とされている(同条3項)。
2.鑑定については,予め鑑定事項を定める必要がある(規則129条1項)。証拠申出には,証明すべき事実を特定しなければならない(180条1項)からである。
 これに対し,専門委員にはそのような必要は無い。
3.鑑定人の陳述は,口頭弁論調書の必要的記載事項である(規則67条1項3号)。訴訟資料となる以上,明確性が求められるからである。
 他方,専門委員の説明は,調書に記載する必要はない。また,調書に記載されたとしても,これを訴訟資料とすることはできない。
4.鑑定では,鑑定人質問(215条の2)が認められる。証拠方法であるから,質問によって訴訟資料を引き出すことが認められるからである。
 他方,専門委員に対してはそのような質問制度は無く,専門委員がした説明に対し,当事者に意見陳述の機会が認められるに過ぎない(規則34条の5)。
5.鑑定人は宣誓をしなければならない(216条・201条1項)。鑑定人の陳述は訴訟資料となり,訴訟の結果を左右するからである。その一方で証言拒絶権が認められる場合がある(216条・197条)。
 他方,専門委員は,証拠方法ではないから,宣誓の必要が無く,証言拒絶は問題とならない。

以上

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