新司法試験の慶応大類題指南、法務省は得点調整せず

読売新聞WEB版2007年8月3日22時58分配信記事

(以下引用)

 今年の新司法試験で出題・採点を担当する「考査委員」を務めた慶応大法科大学院の植村栄治教授(57)が、事前に試験の類題を教えていた問題で、法務省は3日、「慶応大の学生に有利な結果をもたらしたとは認められない」として、得点調整などの是正措置を行わないと発表した。

 解任された植村教授を除く155人の考査委員についても、「特に不適切な受験指導はなかった」と結論づけた。しかし、委員からのヒアリングを行わず、自主的な報告で済ませた同省の調査に対し、法科大学院関係者から疑問の声が上がっている。

 今年5月に実施された新司法試験では、慶応大法科大学院の修了生271人を含む4607人が受験。行政法分野の考査委員だった植村教授は2〜3月、試験に向けた答案練習会を同法科大学院で7回開催し、関連する判例などを学生に一斉メールで送っていた。

 法務省が今回、メールの内容を調べたところ、「重要そうなもの」と紹介された国民健康保険料に関する判例が、マークシート式の短答式試験でそのまま出題されたことが確認された。採点が終了しているこの問題の正答率を分析した結果、20%台だった全体平均(慶応を除く)に比べ、慶応の修了生の平均は4〜5ポイント高かった。

 ただ、慶応よりも正答率が高い法科大学院も12校あり、同省は「受験者なら当然勉強しておくべき重要な判例で、慶応の正答率が不自然に高いとは見えない」と判断した。

 また、植村教授が事前に判例を教えた、外国人の退去強制処分に関する問題も、論文式試験で出題されていた。論文式は採点が終わっていないが、同省は「この判例を知っていたから試験で有利になるとは言えない」とし、採点面での考慮はしないという。今回の調査結果を踏まえ、同省の司法試験委員会は3日付で、慶応大に再発防止を求める文書を送った。

 一方、他の考査委員に対する調査は、不適切な受験指導を行ったかどうかを自己申告させる形で実施された。このため、同省に報告したのは、ネット上などで植村教授と同様の疑惑が指摘されていた10人弱だけ。同省はこの報告に基づいて、「いずれも単なる補講などであり、問題はなかった」としている。

 東京都内の受験生の男性(31)は、「多数の科目がある中で、試験直前に考査委員から特定の判例が示されれば、そのテーマに勉強を集中できるメリットは非常に大きい」と話し、得点調整の見送りを批判する。また、青山学院大法科大学院の宮沢節生教授は、「法務省は、植村教授が与えた情報と試験問題の共通性を、極めて限定して解釈している。他の考査委員の調査も、報告がない大多数をすべて『問題なし』としており、不徹底だ」と疑問視している。

 慶応大は3日夜、同日付で植村教授が辞職したと発表した。同大広報室によると、法科大学院は「懲戒免職処分が相当」という見解に達したが、植村教授が「深く反省しており、責任を取る」と申し出たため、辞職願を受理したという。

(引用終わり)

【コメント】

法務省のコメントで、受験生が納得できるものは一つもないだろう。
だが、現状での法務省の立場での対応としては、最適である。

試験を運営する法務省としては、試験は公正であるという建前を守らざるを得ない。
そうすると、今回の問題については、

1:結果に不公正が生じる漏洩だったが、補正措置により不公正さは解消した。
2:そもそも、結果に不公正は生じていない。

のどちらかの対応しか、選択肢が無い。
そして、試験結果について、真に公平にするような補正は、現実には出来ない。
漏洩情報の寄与度を正確に測定することは不可能だからだ。
また、再試験はコストや考査委員の負担を考えると、出来ない。

そのため、試験結果自体が不公正ではないという立場を採ることになる。
新司法試験制度を立ち上げ、維持していく側の対応としては、こういう対応がベストである。
そして、そのような立場を採る以上、問題を極小化するため、追加調査などはしないことになる。
その前提として、不満を持つ受験生がいても、基本的に何も出来ないだろうという読みがある。

このような対応がまかり通るのは、国民にとってどうでもいいからである。
金と食べ物が絡まない問題については、国民は関心を示さない。

なお、慶応大が植村教授の辞職願を受理したことについて、同大はネット上で公表している(こちら)。
これで、植村教授は退職金を手にすることになるのであろう。
私大などの再就職先を紹介してもらう段取りにもなっているかもしれない。
表面上はお詫びの文を載せている。
しかし、「いいだろ?退職金くらい。文句あるなら何かやってみな。できないだろ?」という開き直りも窺える。
事実、受験生はほとんど何も出来ない。

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