最新下級審裁判例

大阪地裁判決平成19年07月12日

【事案】

本件は,職員互助組合(本件で問題とされている平成5年度から同11年度当時は財団法人大阪市職員互助組合),交通局互助組合,水道局互助組合,教職員互助組合(以下「4互助組合」という。)が,大阪市から補給金の支出を受けた上で,連合会を経由して各組合員(大阪市職員)のための保険料に充てたことにつき,大阪市の住民である原告ら(99号,100号)が,主位的には4互助組合らによる補給金の流用が違法であり,予備的に大阪市からの補給金の支出が違法であるとして,被告らに対し,4互助組合,連合会及び上記各支出を行った市長個人(A及びB)に対して損害賠償請求(対4互助組合,連合会,A及びB)ないし不当利得返還請求(対4互助組合及び連合会)をするよう求めた事件(99号,100号)及び,参加人らが,被告らに対し,上記各支出に関与した連合会理事個人及び同人らを理事とする市労連に対する損害賠償請求をするよう求めて共同訴訟参加を申し立てた事件(215号)である。

【判旨】

 地方自治法242条の2第1項4号前段の請求に係る訴訟物は,執行機関又は職員に対し,当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をするよう義務付ける形成権ないしはそのような請求を求める請求権と解すべきであるが,いずれにせよ,訴訟物は,請求の主体(執行機関等,請) 求の相手方(当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方),請求の内容(損害賠償又は不当利得返還の請求)によって特定されるというべきである。
 そして,99号,100号において,被告らに4互助組合及び連合会に対して請求するよう求めている権利は,主位的請求及び予備的請求のいずれにおいても損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権であるから,両請求の訴訟物の同一性は,結局,主位的請求及び予備的請求で行使を求めている損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権の同一性によって判断されるべきである。
 損害賠償請求権の同一性は違法行為及び損害の同一性により,不当利得返還請求権の同一性は利得及び損失の同一性により判断されるべきである。

 訴えの追加的変更は,変更後の新請求に関する限り,新たな訴えの提起にほかならないから,変更後の訴えに関する提訴期間が遵守されているか否かは,両者の間に存する関係から,変更後の新請求に係る訴えを当初の訴え提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守に欠けるところがないと解すべき特段の事情がある場合を除き,訴えの変更の時を基準として,これを決しなければならないと解される。

 違法に財産(債権)の管理を怠る事実についての監査請求は,違法な公金の支出等の財務会計行為についての監査請求と異なり,当該行為があった日又は終わった日から1年間の期間制限には服しないが(地方自治法242条1項,2項反対解釈),財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実とする監査請求は,当該怠る事実についての監査を遂げるために,当該財務会計行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にある限り,当該財務会計行為のあった日又は終わった日を基準として,上記監査請求期間の制限が及ぶ(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁,最高裁平成14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁)。

 給与条例主義とは,地方公共団体の職員に対する給与その他の給付は,全て法律及びこれに基づく条例に基づいて支給されなければならないとする原則であり(地方公務員法25条6項,地方自治法204条,204条の2),給与の支出をする上で,財務会計職員が遵守すべき規範であるから,財務会計法規に該当する。
 したがって,原告らの予備的請求は,その監査を遂げるためには,怠っていると主張されている損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権の存否を判断するため,互助連給付金及び教員給付金の支出が給与条例主義という財務会計法規に違反するか否かの判断をしなければならないから,いわゆる不真正怠る事実として,監査請求期間の制限が及ぶものというべきである。

 普通地方公共団体の住民が,相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計行為上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合,監査請求期間経過の正当理由の有無は,特段の事情がない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断されるべきである(最高裁平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。

 

東京地裁判決平成19年07月20日

【事案】

 在日本朝鮮人総聯合会(以下「朝鮮総聯」という。)が中央本部の事務所等として使用する別紙物件目録記載の各不動産(以下,同目録記載1及び2の各土地を併せて「本件土地」,同目録記載3の建物を「本件建物」,本件土地及び本件建物を併せて「本件各不動産」という。)について,過去長年にわたり,固定資産税及び都市計画税の全額減免が行われていたところ,平成15年度,平成16年度及び平成17年度の固定資産税及び都市計画税の賦課期日において本件各不動産の所有名義人であった原告が,本件各不動産に係るこれらの各年度の固定資産税及び都市計画税の賦課処分を受け,これに対して申請した固定資産税の減免についても,一部の金額の減免のみを許可し,その余の減免を不許可とする処分を受けたことから,これらの賦課処分及び減免許可決定処分は,固定資産税の減免の要件を定める条例の解釈適用を誤った違法があり,信義則及び平等原則にも違反するなどと主張して,これらの各処分(ただし,減免許可に係る部分を除く。)の取消しと,減免申請に対する全額減免の許可決定処分の義務付けを求める事案。

関係法令等の定め

 都の特別区の存する区域においては,都が固定資産税を課するものとされ,この場合においては,都を市とみなして地方税法の固定資産税に関する規定が準用されるところ(地方税法734条1項),地方税法367条は,「市町村長は,天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者,貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り,当該市町村の条例の定めるところにより,固定資産税を減免することができる。」と定めている(なお,これにより固定資産税が減免されたときは,地方税法702条の8第7項の規定により,都市計画税についても,当該固定資産税に対する減免額の割合と同じ割合で減免される。)。
 地方税法367条を受けた東京都都税条例(昭和25年東京都条例第56号。ただし,平成18年東京都条例第27号による改正前のもの。以下「都税条例」という。)134条1項は,「左の各号の一に該当する固定資産であって,知事において必要があると認めるものに対する固定資産税の納税者に対しては,当該固定資産税を減免する。」と定め,同項2号は「公益のために直接専用する固定資産(固定資産の所有者に課する固定資産税にあっては,当該所有者が有料で使用させるものを除く。)」を,同項4号は「前各号に掲げるものの外,規則で定める固定資産」をそれぞれ掲げている。
 都税条例134条1項4号を受けた東京都都税条例施行規則(昭和25年東京都規則第126号。ただし,平成18年東京都規則第150号による改正前のもの。以下「本件規則」という。)31条1項は,都税条例134条1項4号に該当するものを「賦課期日後火災その他の事由に因り,滅失し,又は甚大な損害を受けた家屋その他特別の事情があると認められる固定資産」と定め,同条2項は「前, 項に規定する固定資産に対する固定資産税の減免は,当該事情を考慮して知事の認めるところにより減免する。」と定めている。
 各都税事務所長あての東京都主税局長通達「固定資産税及び都市計画税の課税事務の取扱いについて」(以下「本件通達」という。)は,本件規則31条1項の「特別の事情があると認められる固定資産」について,これに該当する固定資産の類型を個々に列挙しているところ,平成7年2月28日付け通達(乙17),平成10年1月22日付け通達(乙18),平成14年2月6日付け通達(乙10)及び平成15年12月25日付け通達(乙30)においては,上記各列挙の減免対象資産以外の固定資産で,次の(ア)又は(イ)に掲げるような事情が認められるものについて負担の均衡又は能力等を考慮して知事の必要と認めるものを「その他特別の事情があると知事の認める固定資産」として減免対象資産に含める旨を定めている(以下,この定めを「本件基準」という。)。

(ア) 課税することが建前であるが,社会通念上,課税することが明らかに不合理であり,かつ,近い将来において,非課税等の立法措置がとられる可能性の強いもの。
(イ) 固定資産の使用実態等が,都の行政に著しく寄与すると認められ,減免措置に対して,都民の合意が容易に得られるもの。

【判旨】

 本件通達は,たとえ公益に関する事業を行う法人等の所有財産であっても,特定の者のみによって使用されるものは,「公益のために直接専用する」という要件には該当せず,直接的に,専ら不特定多数の者の使用又は利用に供され,その不特定多数の者の利益を増進するもののみをこの減免措置の対象とするとしているものと解される。そして,このような解釈は,単に条文が「公益のために用いる固定資産」とせずに,「直接」「専用する」という限定する文言をあえて付加している都税条例134条1項2号の文言解釈として,合理的な解釈であるということができる。

 本件規則31条1項が固定資産税の減免ができる固定資産として掲げる「特別の事情があると認められる固定資産」について,本件通達は,「(ア) 課税することが建前であるが,社会通念上,課税することが明らかに不合理であり,かつ,近い将来において,非課税等の立法措置がとられる可能性の強いもの」又は「(イ) 固定資産の使用実態等が,都の行政に著しく寄与すると認められ,減免措置に対して,都民の合意が容易に得られるもの」に該当し,かつ「負担の均衡又は, 能力等を考慮して知事の必要と認めるもの」という本件基準を定めており,上記(ア)は,担税力の薄弱な場合だけではなく,公益上の理由により減免の必要がある場合をも想定した規定と解することができるし,上記(イ)は,まさに公益上の理由により減免の必要が認められる場合を規定したものと解される。

 都税条例134条1項2号にいう「公益のために直接専用する固定資産」とは「公, 益のため」すなわち,不特定多数の者の利益のため,「直接」「専用する」固定資産,すなわち,不特定多数の者の「直接の使用又は利用に専ら供されている」固定資産を指し,そのような固定資産については,公益性が明白であるから,減免の対象とするという趣旨であり,たとえば公益性のある団体の所有する固定資産であっても,それが特定の者によってのみ使用されているようなものは公益性の有無や程度が明白とはいえないので,これには含まないと解するのが相当である。

 都税条例134条1項4号は,公益上の理由により固定資産税の減免を行う固定資産については,同項2号に掲げるものを除き,知事が公益上の理由の有無や程度を判断して規則に定めるべきことを委任した規定と解されるところ,これを受けた本件規則31条は,1項において「特別の事情, があると認められる固定資産」を掲げるとともに,2項において,当該固定資産に対する固定資産税の減免は,「当該事情を考慮して知事の認めるところにより減免する。」と定めている。そして,何が1項にいう「特別の事情」に当たるかは本件規則に定めていないところ,そもそも公益上の理由は,その性質上,一般的な類型化は困難であり,その有無や程度の判断は,最終的には固定資産税の減免によってその時々における一定の行政上の目的を達成しようとする課税庁の合理的な裁量によらざるを得ないことから,本件規則は,あらかじめこれに該当する固定資産を類型的に列挙するのではなく,個々具体の減免申請に対する知事による個別の合理的な裁量判断に委ねたものと解される。
 そして,このような本件規則31条の定めは,そもそも都税条例134条1項が,減免の対象を「左の各号の一に該当する固定資産であって,知事において必要があると認めるもの……」と定め,同項4号が「前各号に掲げるものの外,規則で定める固定資産」と定めており,知事の裁量判断に委ねることを適当とするものを規則の定めに委ねていることにかんがみれば,都税条例134条1項に違反するものではない。
 また,上記のように都税条例134条1項4号は,具体的な定めを規則に委ねているが,前記のとおり,公益上の理由の有無や程度などの判断については一般的な類型化は困難であり,固定資産税の減免によって一定の行政上の目的を達成しようとする課税庁の合理的な裁量によらざるを得ないものであって,地方税法367条においても「特別の事情がある者」とのみ規定していることを考慮すれば,都税条例134条1項4号の規定は,過度に広範な規則への委任として地方税法367条に違反するということもできない。

 そうすると,都税条例134条1項4号の委任を受けた本件規則31条1項の「特別の事情があると認められる固定資産」に該当し又は該当しないことを理由としてする固定資産税の減免許可又は減免不許可の決定は,課税庁の裁量処分であり,裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があった場合に限り,違法な処分として取り消し得べきものとなるというべきである。
 そして,本件基準は,このような課税庁の裁量権行使の基準を行政の内部において定めたものと位置付けることができるものであり,その内容自体に格別不合理な点は認められないから,課税庁が,本件基準の(ア)及び(イ)のいずれの事情も認められない固定資産について,本件規則31条1項の「特別の事情があると認められる固定資産」に該当しないと判断することは,上記裁量権の行使として是認することができ,裁量権の逸脱濫用に当たらないというべきである。

 

佐賀地裁判決平成19年07月27日

【事案】

 本件土地を所有している原告は,本件土地には多量のアスベストスラッジが埋設され,その処分に多額の費用を要することから,本件土地の価格は大幅に低下しているにもかかわらず,固定資産課税台帳に登録された本件土地の平成17年度及び平成18年度の各価格は,その点が考慮されていないなどと主張して,鳥栖市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会は,これをいずれも棄却する旨の決定をした。
 本件は,原告が被告に対し,平成17年度(甲事件)及び平成18年度(乙事件)の本件土地の価格についての上記委員会の棄却決定は違法であるとして,その取消しを求めた事案である。

【判旨】

 地方税法349条2項,3項各本文は,基準年度に固定資産税を賦課した土地に対して課する翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を,原則として,基準年度の課税標準の基礎となった価格としている。
 ・・・上記規定が設けられたのは,通常,固定資産の価格が短期間に大幅な変動を来すことはなく,上記規定によっても価格の正確性を一応担保できると考えられること,評価の対象となる固定資産の数がぼう大な反面,課税機関の人員が限られているなど,これを一定の基準によって毎年評価替えを行うことは技術上相当に困難であり,また,その評価替えによって年々負担が変動することにも問題があること等から,同一固定資産の経年による価格変化を正確に把握することを多少犠牲にしても,課税事務の簡素合理化を実現することの方が合理的であるという政策判断がされたためと解される。
 他方,前記各条項但書は,「地目の変換,家屋の改築又は損壊その他これに類する特別の事情」があるため,基準年度の価格によることが不適当であると市町村長が認める場合には,当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で固定資産課税台帳に登録されたものによって,翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を定めるものとしている。かかる前記各条項本文の趣旨及び同条項但書の文言に照らせば,前記各条項但書の「特別の事情」とは,土地については,基準年度以後に発生ないし顕在化した,地目の変換に比するような事情で,それによる価格変動が課税事務の簡素合理化の要請だけでは正当化できない程度に大きなものに限られると解するのが相当である。また,かかる事情がある場合でも,当該土地に対して課する翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を「当該土地に類似する土地の基準年度の価格に比準する価格」によることとされ,翌年度(第2年度)又は翌々年度(第3年度)において,基準年度と同様に固定資産の価格を正確に決定することまでは要求されておらず,なお課税事務の簡素合理化の要請が相当程度維持されていることに鑑みれば,「特別の事情」については,当該土地が類似する他の土地に比準することができるという点を考慮する必要があり,そのため,価格変動要因を数量的に比準できるような定型的な態様のものであることが予定されているものと解される。
 したがって,土地について上記「特別の事情」があるというためには,基準年度以後に課税事務の簡素合理化の要請だけでは正当化できない程度の大きな価格変動があったこと,その変動は価格決定面で数量的に比準することができるような定型的な態様のものであること,例示としての地目の変換に比するようなものであることが必要であり,具体的には,土地の全部又は一部について,用途変更による現況地目の変換又は分筆若しくは合筆があったほか,浸水,土砂の流入,隆起,陥没,地滑り,埋没等によって当該土地の区画,形質に著しい変化があった場合等,土地自体に内在する原因により土地の価格に大幅な増減をもたらしたような事情をいうものと解すべきである。

 固定資産評価基準第1章第1節によれば,土地の評価は,土地の地目の別に,各地目別に定める評価の方法によって行うところ,この場合における土地の地目の認定に当たっては,当該土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的に僅少の差異の存するときであっても,土地全体としての状況を観察して認定するものとされている。そして,「宅地」とは,建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地をいうものと解され,また,現に建物が建築されていない土地であっても,土地全体としての状況,使用実態等からみて客観的に敷地の用に供されるものであることが明らかな場合には宅地と認定するのが相当である。

 法349条の土地の価格,すなわち「適正な時価」(法341条1項5号)とは,正常な条件の下において成立する取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。したがって,土地課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は違法となる。
 しかし,固定資産評価基準に従って算定された価格は,固定資産評価基準が定める評価の方法によっては,当該固定資産の価格を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情の存しない限り,適正な時価であると推認するのが相当である(最高裁判所平成15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁,最高裁判所平成15年7月18日第二小法廷判決・裁判集民事210号283頁各参照)。
 そして,固定資産評価基準に定める市街地宅地評価法をみると,その評価方法は,地区の区分,状況が相当に相違する地域の区分,主要な街路の選定,標準宅地の選定,標準宅地の適正な時価の評定,主要な街路とその他の街路の各路線価の比準,所要の補正を含めた画地計算法の適用等が,いずれも適正に行われることを要請するものと解され,これらを適正に行うことなく決定された価格は,そもそも,固定資産評価基準によって決定された価格ということはできないが,他方,これらが適正に行われれば,上記評価方法が各筆の宅地の適正な時価への接近方法として一般的に合理性を有することに鑑みれば,これによって算定した宅地の価額は,特別の事情のない限り,適正な時価を超えるものではないと推認される。

 固定資産評価基準第1章第3節二(一)4は,市街地宅地評価法による各筆の宅地の評点数の付設に関して,各筆の宅地の評点数は,路線価を基礎とし,画地計算法を適用して付設するものとするが,市町村長は,宅地の状況に応じ,必要があるときは,画地計算法の附表等について,所要の補正をして,これを適用するものとしている。これは,価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること,またその影響が局地的であること等の理由から,その価格事情を路線価の付設によって評価に反映させることができない場合があることから,かかる場合には,その価格事情が特に著しい影響があると認められるときに限り,個々の画地ごとに特別の価格事情に見合った所要の補正を行うことができるとしたものである。
 そして,上記の如き事情が宅地の価格に与える影響の程度は,各市町村における当該宅地の個別の状況によって異なり得るものである一方,評価の適正と均衡を確保しつつ,大量の固定資産を一定の期間内に評価しなければならない固定資産税における評価事務の性質上,「所要の補正」として行う宅地の減価補正についても,各市町村の個別事情に応じながらも,定型的な基準に基づいて画一的に行うことが,公平な賦課徴収のために必要である。
 そのため,各市町村においては,それぞれその実情に応じた所要の補正の取扱要領等を定めているところであって,被告においても,前記法令等の定め記載のとおり,「鳥栖市固定資産土地評価事務取扱要領」(乙10)の15条(画地計算による本市の所要の補正)において,路線価に反映し難い外的要因について,所定の補正項目を定めている。

 固定資産評価基準における所要の補正は,前記のとおり,評価に当たり,課税対象不動産の個別の状況を一定程度考慮しようとするものであるが,その究極の目的は,不動産鑑定評価基準などと異なり,固定資産税の公平な賦課徴収にあることは明らかであるから,不動産鑑定評価基準においては減価するべきものとされている場合であっても,少なくとも,不動産減価の要因が外的人為的なもので,その原因行為者の責任追及を行うことにより原状回復が論理的に可能な場合は,これを理由に「所要の補正」をしない取扱いをすることも許されるものと解するのが相当である。

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