最新最高裁判例

最高裁判所第一小法廷判決平成19年07月19日

【事案】

 被上告人が,上告人に対し,Aが破産宣告前に上告人との間の金銭消費貸借契約に基づいてした弁済につき,利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき過払金の返還等を求める事案。

【判旨】

 本件各貸付けは,平成15年7月17日の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして,長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり,同日の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというのであるから,本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。
 そして,本件各貸付けのような1個の連続した貸付取引においては,当事者は,一つの貸付けを行う際に,切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても,制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。
 上記のように,本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上,本件各貸付けに係る上告人とAとの間の金銭消費貸借契約も,本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。

 

最高裁判所第二小法廷決定平成19年08月07日

【事案】

 相手方の株主である抗告人が,相手方に対し,相手方のする株主に対する新株予約権の無償割当ては,株主平等の原則に反し,著しく不公正な方法によるものであるから,会社法(以下「法」という。)247条1号及び2号に該当すると主張して,これを仮に差し止めることを求める事案。

【判旨】

 法109条1項は,株式会社(以下「会社」という。)は株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないとして,株主平等の原則を定めている。
 新株予約権無償割当てが新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであっても,これは株式の内容等に直接関係するものではないから,直ちに株主平等の原則に反するということはできない。しかし,株主は,株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ,法278条2項は,株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは,株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど,株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって,法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである。
 そして,本件新株予約権無償割当ては,割り当てられる新株予約権の内容につき,抗告人関係者とそれ以外の株主との間で前記のような差別的な行使条件及び取得条項が定められているため,抗告人関係者以外の株主が新株予約権を全部行使した場合,又は,相手方が本件取得条項に基づき抗告人関係者以外の株主の新株予約権を全部取得し,その対価として株式が交付された場合には,抗告人関係者は,その持株比率が大幅に低下するという不利益を受けることとなる。
 株主平等の原則は,個々の株主の利益を保護するため,会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが,個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。そして,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ,株主総会の手続が適正を欠くものであったとか,判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり,虚偽であったなど,判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。

 本件総会において,本件議案は,議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決されたのであるから,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主が,抗告人による経営支配権の取得が相手方の企業価値をき損し,相手方の利益ひいては株主の共同の利益を害することになると判断したものということができる。そして,本件総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず,また,上記判断は,抗告人関係者において,発行済株式のすべてを取得することを目的としているにもかかわらず,相手方の経営を行う予定はないとして経営支配権取得後の経営方針を明示せず,投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであることがうかがわれるのであるから,当該判断に,その正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない。

 抗告人関係者は,本件新株予約権に本件行使条件及び本件取得条項が付されていることにより,当該予約権を行使することも,取得の対価として株式の交付を受けることもできず,その持株比率が大幅に低下することにはなる。しかし,本件新株予約権無償割当ては,抗告人関係者も意見を述べる機会のあった本件総会における議論を経て,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主が,抗告人による経営支配権の取得に伴う相手方の企業価値のき損を防ぐために必要な措置として是認したものである。さらに,抗告人関係者は,本件取得条項に基づき抗告人関係者の有する本件新株予約権の取得が実行されることにより,その対価として金員の交付を受けることができ,また,これが実行されない場合においても,相手方取締役会の本件支払決議によれば,抗告人関係者は,その有する本件新株予約権の譲渡を相手方に申し入れることにより,対価として金員の支払を受けられることになるところ,上記対価は,抗告人関係者が自ら決定した本件公開買付けの買付価格に基づき算定されたもので,本件新株予約権の価値に見合うものということができる。これらの事実にかんがみると,抗告人関係者が受ける上記の影響を考慮しても,本件新株予約権無償割当てが,衡平の理念に反し,相当性を欠くものとは認められない。

 したがって,抗告人関係者が原審のいう濫用的買収者に当たるといえるか否かにかかわらず,これまで説示した理由により,本件新株予約権無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反するものではなく,法令等に違反しないというべきである。

 また,相手方が,経営支配権を取得しようとする行為に対し,本件のような対応策を採用することをあらかじめ定めていなかった点や当該対応策を採用した目的の点から見ても,これを著しく不公正な方法によるものということはできない。その理由は,次のとおりである。
 すなわち,本件新株予約権無償割当ては,本件公開買付けに対応するために,相手方の定款を変更して急きょ行われたもので,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策の内容等が事前に定められ,それが示されていたわけではない。確かに,会社の経営支配権の取得を目的とする買収が行われる場合に備えて,対応策を講ずるか否か,講ずるとしてどのような対応策を採用するかについては,そのような事態が生ずるより前の段階で,あらかじめ定めておくことが,株主,投資家,買収をしようとする者等の関係者の予見可能性を高めることになり,現にそのような定めをする事例が増加していることがうかがわれる。しかし,事前の定めがされていないからといって,そのことだけで,経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において対応策を講ずることが許容されないものではない。本件新株予約権無償割当ては,突然本件公開買付けが実行され,抗告人による相手方の経営支配権の取得の可能性が現に生じたため,株主総会において相手方の企業価値のき損を防ぎ,相手方の利益ひいては株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしてもこれを採用する必要があると判断されて行われたものであり,緊急の事態に対処するための措置であること,前記のとおり,抗告人関係者に割り当てられた本件新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることも考慮すれば,対応策が事前に定められ,それが示されていなかったからといって,本件新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない。また,株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には,その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法によるものと解すべきであるが,本件新株予約権無償割当てが,そのような場合に該当しないことも,これまで説示したところにより明らかである。
 したがって,本件新株予約権無償割当てを,株主平等の原則の趣旨に反して法令等に違反するものということはできず,また,著しく不公正な方法によるものということもできない。

 

最高裁判所第二小法廷決定平成19年08月08日

【判旨】

 不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条所定の不正アクセス行為を手段として私電磁的記録不正作出の行為が行われた場合であっても,同法8条1号の罪と私電磁的記録不正作出罪とは,犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,本件につき両者を併合罪の関係にあるものとして処断した原判断は相当である。

戻る