平成19年度新司法試験結果について(2)

足切りに注目

今年足切りになった受験生は71人、論文採点対象者の2.04%である。
昨年は12人、論文採点対象者の0.71%だった。
昨年と比較すると、全体の割合から見ても3倍に近い。
未修者の参加がかなり影響しているのだろう。

素点ベースの意味するものとは

昨年の記事で、素点ベースの足切りがかえって救済的に機能したことを書いた。
今年はどうだったか、調べてみたところ、意外な結果となった。
下表は、今年の実際の足切り人数と、得点調整ベースで集計した場合の最低ライン未満の人数である。
公法のみ素点ベースの実際の足切り人数の方が多く、その他は得点調整後の方が多い。
しかも、民事・刑事は素点ベースと得点調整ベースとでかなりの差がある。
仮に、旧司法試験同様の得点調整ベースによる足切りが行われていたら、惨事になっていた。

  実際の足切り人数 得点調整後最低ライン未満人数
公法 38 29
民事 54
刑事 31
倒産 17 24
租税
経済
知財
労働 13
環境
国公
国私

仮説

なぜこのようなことになったのか。
正確なところはよくわからない。
ただ、得点調整の算式(法務省資料参照)を見る限り、一応以下のようなことは言えるだろう。
つまり、バラつきが少ない(=標準偏差が小さい)採点者によって、高得点・低得点とされた少数の受験生の得点は調整により極端に高得点・低得点となりやすい。
他方、バラつきの大きい(=標準偏差が大きい)採点者によって採点された受験生の得点は、得点調整によって中央に集まりやすく、極端な点数にはなりにくい。
そして、前者の場合、素点は中央に集まっているため足切り者は少なく、得点調整をすると、足切り者が増える。
他方、後者の場合、素点ベースの方で足切り者が出るが、得点調整をすると、足切り者が減る。
旧司法試験においては、おそらく後者の場合だったため、実際の足切りは一人も出なかった(詳細は以前の記事参照)。
新司法試験においては、前者すなわち、なるべく差がつかないような点数をつけるようになっているのではないか。
差がつかないような出題であったともいえよう。

ただ、今年については、公法だけが例外となっている。
これは、行政法の影響によるものではないかと思う。
今年の行政法は、入り口を誤ると、あらぬ方向に突っ走ってしまいやすい。
逆に、退去強制令書の執行停止を検討できれば、ある程度のところまでは点数がつく。
そうなると、素点ベースの段階でバラつきが相当出てくる。
素点ベースの足切り者が非常に多い事からも、このことが裏付けられよう。
これが、例外的に後者のケースになった原因ではないだろうか。
また、このことは、漏洩の影響が極めて大きかった可能性も示唆している。

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