平成19年度新司法試験出題趣旨分析
(公法系第1問)

論点は絞って書く

問題文は資料も含めて長文だった。
しかし、論点は3つ、被侵害利益は宗教的行為の自由だけだったようだ。
これは以下の記述からわかる。

・本問は人権と統治を組み合わせた問題となっており,仮想的な事案をめぐって3つのテーマが問われている。それは,法律と条例の関係,人権の保障と民主主義の関係,そして人権の保障と安全・安心の確保の関係である。

・条例自体の違憲性及び不許可処分の違憲性に関しては,どの人権が侵害されているのかが問題となる。本事案において専ら問題になるのは,宗教的行為の自由である。

来年以降の教訓としては、あまりに論点を拾いすぎないようにすることが重要ということになる。

あてはめ重視

各論点の書き方であるが、出題趣旨は一見、論証とあてはめの両方をパーフェクトに書けといっているようにも見える。
だが、その書き方を見る限り、あてはめ重視である。

論証にあたる部分については、以下のように記述されている。

・徳島市公安事件上告審判決がポイントとなるが,まず,当該判決を正確に理解していることが求められる。

・審査基準論が用いられる文脈,意義・内容を正確に把握した上で検討することが求められる。

・まず設問1においては,これらの問題に関して,判例・学説を正確に理解した上検討し・・・

抽象的に、「正確に理解」することが求められているだけである。

他方、あてはめにあたる部分については、以下のように記述されている。

・その上で,法律と条例の目的・趣旨・効果をどのように比較するのか,どのような点で法律の範囲内である/ない,という結論を導くのかについて論じることが,必要である。

・ここでは,B教団の「危険性」に関する評価が焦点となるが,資料に掲げられた事実の一面だけをとらえて,危険だから不許可は合憲,危険でないから不許可は違憲といった資料の読み方では不十分である。本問で前提となっているのは,教団の「危険性」への懸念にも一定の理由があるが,その有無・程度等には不確実な面もあるといった状況である。

・法律との抵触や,宗教的行為の自由の侵害を抽象的に指摘しただけで,直ちに審査基準論を展開するというのでは,不十分である。まず,どのような点で,どのような抵触や侵害が生じているのかを,B教団の立場から具体的に論じることが必要である。

比較的詳細にポイントを挙げている。
また、「〜では不十分」という形で、安易なあてはめを否定している。
論証部分については、「単に一般的な理由と結論を挙げるだけでは不十分」などとは言っていない。
そういうことを考えると、論証部分については、理由と結論を簡潔に述べれば十分である。
ただ、もちろん、その内容は正確でなければならない。
それは結局、現場で正確に理由と結論を吐き出せるくらい覚えろということになろう。
他方で、あてはめは単なる問題文の引用ではなく、自分なりの評価を加え、詳細に衡量する必要がある。

なお、出題趣旨最後の段落で、以下のような記述がある。

「あなた」の見解は,必ずしも,B教団側の主張かC市側の主張か,という二者択一であるとは限らない。「あなた」の見解は,それらとは異なる「第3の道」となることもあり得る。例えば,徳島市公安事件上告審判決の判断には問題もある。同判決の判断が公安条例の場合を超えて,他の条例の場合にどこまで妥当するのかは,必ずしも明確ではない。ここで,この問題が論じられ,判例とは異なる「あなた」の見解が主張されることもあり得よう。また,B教団側の主張あるいはC市側の主張と「同じである」という答えでは,不十分である。なぜ,一方の主張に賛成するのかについての説得力のある理由が述べられていなければならない。

この、徳島市公安事件上告審判決の問題点云々は、論証部分とあてはめ部分の双方を含んでいる。
要するに、判例の射程範囲の問題のことである。
しかし、これを本問で検討するには、資料も紙幅も時間も全然足りない。
「判例とは異なる「あなた」の見解」を主張した受験生は、ほとんど皆無だろう。
「例えば」とあるように、一種の例示であって、あまり気にする必要はないように思う。
この部分で言いたいことは、「B教団側の主張かC市側の主張か,という二者択一であるとは限らない」ことである。

資料がヒント

今年書くべきだった論点は、どれも資料を見ると気付きやすい。
法律と条例の関係については、資料1「都市計画法及び都市計画法施行令」と資料2「C市まちづくり条例(抜粋)」という題名自体がもうヒントである。
宗教的行為の自由が被侵害利益であるという点は、資料3から読み取れよう。
ただ、あまり細かい文言(「信者は集団で居住し」等)にとらわれると、居住移転や財産権に流れてしまいかねない。
より優先的な人権は何かという観点から、人権を絞っていくべきだったといえよう。
また、人権の保障と民主主義の関係、人権の保障と安全・安心の確保という点は、資料3のC市の言い分などから読み取れる。
被侵害利益に対する対立利益は何かという視点で眺めてみると、これは気付くと思う。
ただ、これを個別の論点として取り上げるのは難しい部分もある。
答案の形式としては、宗教的行為の自由の検討のあてはめの中で、これらの観点が出てくれば十分だろうと思う。

条例の違憲と処分の違憲の区別

出題趣旨では、条例自体の問題と不許可処分の問題とが分けて記述されている。
問題点の整理としては、その通りだと思う。
ただ、現場の答案でこのように分ける必要は、必ずしもなかったのではないか。
そもそも、法令の違憲と、その適用としての処分の違憲を明確に区別するような考え方は、判例でも採られているとはいえない。
第三者所有物没収事件判例について評価が分かれているのはその典型である。
論理的には、処分が違憲ということは、その根拠法の一部に違憲となる領域があることになる。
よって、法令の違憲ともなりうる。
また、法令が全く合憲で、処分に問題があるという場合は、裁量逸脱による違法の有無を検討すべきともいえる。
逆に、付随的審査制かつ個別的効力説を採る限り、適用違憲しか本来出せないともいえる。
この辺りの学説は相当に錯綜している。

従って、答案では「条例とそれに基づく処分は・・であるので違憲ではないか」くらいにまとめて書いておいて良いと思う。
検討すべき論点が検討されていれば評価されるだろう。
逆に、いつも法令の違憲と処分の違憲を区別するように書こうとするのはやめるべきだろう。
多くの場合、論述が重複する事になってしまうからだ。

戻る