平成19年度新司法試験出題趣旨検討
(公法系第2問)

設問1の(1)〜訴訟選択で明暗

設問1の(1)について、出題趣旨は以下のように述べている。

 設問1の(1)は,収容やその後に予定される送還を停止するための法的手段に関する基本的理解を問うものである。例えば,退去強制令書の発付が処分に当たることを説明した上で,その執行停止を解答する場合には,発付処分の取消訴訟を提起することに加えて,行政事件訴訟法第25条所定の要件に即して検討する必要があろう。同条第2項の「重大な損害」という要件については,学業継続の支障,事後的な損害賠償による損害回復の困難性,人格の尊厳への侵害など,具体的根拠を伴った解釈論が望まれる。収容の継続と送還とを区別した上でそれぞれの部分についての執行停止の要否,可否を論ずるといった配慮も期待されるところである。

訴訟選択としては、執行停止&取消訴訟を選択すべきだった。
そして、その要件を具体的に検討する。
これで、主題趣旨の要求はほとんど充たす。
収容の継続と送還の区別(回復困難性・賠償可能性等)については、加点自由だろう。
「期待される」とされているにとどまるからだ。
実際、この点はほとんど書けている人はいないようだ。

重要なことは、条文にある要件を丁寧にあてはめること。
現場だとつい雑になりがちなので、意識的に練習しておく必要がある。

逆に、差止訴訟や仮の差止めを選んだ場合、ハードルがかなり高くなる。

 以上のような発付処分の取消訴訟と執行停止の組合せではなく,それ以外の方法を選んで解答する場合には,その方法が現行法上可能かつ適切であり,その方法によって確実に収容や送還が停止できることを示すことが重要である。例えば,差止訴訟及び仮の差止めの方法を選択するのであれば,取消訴訟及び執行停止の可能性との関係をどう考えるかの検討は不可欠であろう。

差止訴訟や仮の差止めを選んだ受験生の多くは、意識的にこれを選んだわけではない。
執行停止が本筋であることに気付かなかっただけである。
そのような場合に、「その方法が現行法上可能かつ適切であり,その方法によって確実に収容や送還が停止できることを示すこと」は無理だろう。
取消訴訟及び執行停止の可能性との関係(補充性の問題)などに気付いていれば、素直に執行停止を書くものだ。
そういうことで、こちらのルートに入ってしまった受験生は苦しくなる。
入り口の訴訟選択が重要だったといえる。

直前に裁判例を参照していれば、ここで間違える可能性は低くなる。
その意味で、漏洩の効果は大きかったといえる。

設問1の(2)〜結論を導ければOK

設問1の(2)については、出題趣旨は以下のように述べる。

 設問1の(2)は,退去強制事由に該当するという行政判断を争うための訴訟選択に関する問題である。ここでは,取消訴訟の対象を認定と裁決のどちらとすべきかが,問われている。入管法所定の審理の仕組みに関しては,資料に示されているように,様々な見解が存在するところであるが,本問では,2つの行為の関係を原処分と裁決の関係として解釈することを前提とした上で,原処分主義と解釈して認定の取消訴訟を提起すべきか,それとも裁決主義と理解して裁決の取消訴訟を提起すべきかという点について,解答者の立場を示すことが求められている。

設問1(1)の場合と比べて、要求のレベルは落ちている。
「解答者の立場を示す」だけでよい。

ただ、内容的には難しかった。
ここの部分は白紙に近い人も多かったらしい。
3段階の行為を一体に捉える説が原処分主義と裁決主義のどちらに結びつくのか。
これを現場で考えて、一応の筋を示せれば、十分だった。

設問2〜資料1の誘導をなぞればOK

設問2について、出題趣旨は以下の通りとなっている。

 設問2は,実体法の問題として,入管法所定の退去強制事由に該当するという行政判断の当否を問うものである。これは,留学の在留資格に係る退去強制事由の解釈とその具体的適用に関するものであり,行政庁の広汎な裁量権が問題となるいわゆる在留特別許可に関するものではない。解答に当たっては,関係する条文の構造,問題文や資料で示された入管政策や入管実務における解釈を正確に把握した上で,検討を進めることが期待される。入管は,就労しつつ勉学するという留学の形態を原則として認めない基本政策を前提に,資格外活動を限定的に捉えている。その上で,在留目的を変更したと認められるような態様で資格外活動がなされていれば,第24条の「専ら行つている」という要件に該当すると解釈するのである。これによると,量の面では,滞在費の大半がアルバイトで賄われていれば上記要件に該当し,質の面では,風営店でのアルバイトは一律該当と解釈される。
 こうした行政判断について実体法上の検討を行うにあたっては,まず,本件のアルバイトが第19条に違反するものであるのかを,問題文,資料に示された事実関係に即して検討することが必要である。その上で,第24条の「専ら行つている」の要件該当性を検討することとなろう。その際には,第19条と第24条の関係に言及することが望まれる。論じ方としては,第24条で退去強制について第19条違反だけでなく報酬活動を「専ら行つている」という要件を加えており,また,単なる第19条違反には軽い刑罰を規定する一方で同条違反の活動を「専ら行つている」場合には重い刑罰を定めているなど,入管法が2つの要件を書き分けている点に着目することが考えられよう。また,法律には存在しない「在留目的」といった語を用いてその実質的な変更を問題とする入管実務の解釈方法について検討したり,風営店でのアルバイトを一律禁止とする入管の見解に対し,本件の事実関係に即して,アルバイトに至った経緯,学業成績,出席状況,アルバイトの継続性,アルバイトの具体的内容などを取り込んだ解釈論を展開することも考えられる。

すなわち、以下の要素の検討すべきだった。

・本件のアルバイトが第19条に違反するものであるのか
・第24条の「専ら行つている」の要件該当性

これは、問題文の資料1で指摘されている。

Bの第2発言

本件では,まずは退去強制事由非該当の主張が中心になりますから,この点を網羅的に検討したいと考えています。まず,第19条第2項の資格外活動の許可の基準はどうなっていますか。

Bの第8発言

それでは,本件における諸般の事情を総合判断して,「専ら行つている」という要件について,解釈と当てはめを具体的に検討してください。

この指示に従って書けばよい。

また、以上の二つを書く際に触れるべきこととしては、以下の要素が挙げられている。

1.第19条と第24条の関係(入管法が2つの要件を書き分けている点に着目)
2.法律には存在しない「在留目的」といった語を用いてその実質的な変更を問題とする入管実務の解釈方法についての検討
3.風営店でのアルバイトを一律禁止とする入管の見解に対し,本件の事実関係に即して,アルバイトに至った経緯,学業成績,出席状況,アルバイトの継続性,アルバイトの具体的内容などを取り込んだ解釈論

この点についても、資料1で指摘されている。
結局、資料1の誘導に従えば問題なかったということになる。
ただ、資料1の中身は必ずしも整然とはしていない。
そのために、論点を整理しきれなかった人も多かったようだ。

1.について

Cの第6発言

 退去強制の要件を定める第24条は,第19条第1項違反という要件と,「専ら行つている」という要件の二つから構成されていますね。

Bの第7発言

 確かに,第73条と第70条第1項第4号を見ても,二つの罰則規定を法律は書き分けていますね。これを参考に,第24条と第19条第1項の関係も検討してください。

2.について

Cの第5発言

 入管当局は,在留資格制度の趣旨から,滞在経費を専ら賄うアルバイトは第19条第2項の許可対象ではなく,それがされれば,在留目的が実質的に変更され,第24条第4号イの「報酬を受ける活動を専ら行つている」という要件に該当することになると説明しています。また,風営店でのアルバイトは,およそ学業と両立せず,したがって,そのようなアルバイトは在留目的変更の有力な証拠ととらえています。

B:の第6発言

 実質的に在留目的が変更されたというのは一つの解釈ですが,その当否の検討が必要ですね。

3.について

Bの第4発言:

 風営店での活動が一律不許可なのは,どのような理由からですか。

Cの第4発言

 学業と両立しないもので,留学生が通常行うアルバイトの範囲外という理解だと思います。

B:の第5発言

 風営店での活動も多様ですから,具体的に判断すべきですね。

来年に向けて〜基礎知識をつける

出題傾向としては、年を追うごとに書くべきことを誘導してくれる方向にある。
それでも何を書いていいかわからないのは、前提知識を欠いているからである。
来年の対策としては、基礎知識をつけることに尽きる。
短答式の問題でよいので、繰り返し解いていくべきだ。
素材が足りなければ、行政書士の問題集などを使うのもいいだろうと思う。

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