文科省の受験指導敵視

日経ネット2007年10月6日0時28分配信記事

(以下引用)

新司法試験の考査委員だった慶応大法科大学院の元教授が答案練習会をしていた問題を受け、文部科学省は5日、全国の法科大学院を対象に新司法試験対策の状況を調べた結果を公表した。答案練習や論述指導などの受験対策を実施していたのは全体の7割に当たる54校で、延べ711件に上った。慶大の元教授を含め4人の考査委員が答案練習などに関与していた。

 同省は「考査委員の担当科目と別の科目で練習会を行うなど、特段問題はなかった」(専門教育課)と説明したが、改めて「考査委員が正規の講義以外で受験指導をしない」などの順守事項を徹底するよう、5日付で各法科大学院に通知を出した。

(引用終わり)

受験指導一般を敵視

結果は、さほど驚くようなものではない。
大方予想できる範囲内のものである。

ただ、漏洩問題のせいで、受験指導一般が敵視され始めている点は注意が必要だ。
漏洩防止の観点からは、本来、考査委員が関与している受験指導を問題視すれば足りる。
しかし、文科省は、受験指導一般を敵視している。
マークシート式の小テストを実施することすら、受験指導偏重と考えているようだ(読売新聞WEB版2007年10月5日22時6分配信記事)。
また、「新司法試験や法科大学院はあまりに暗記に偏りすぎた旧司法試験の問題を改善するために導入した制度。単なる技術指導に陥れば、本来の理念からかけ離れてしまう」とも述べている。

受験指導は悪か

受験指導が、本来合格する能力の無い者を受からせる危険を内包していることは確かである。
極端な例としては、4級アマチュア無線技士試験の完全丸暗記シリーズ(下はアマゾンのバナー)がある。
4級アマチュア無線技士試験は、出題される問題文と解答が、過去問と同じ問題がほとんどである。
そのため、「この図を見たら答えは××」とか、「○○で始まる問題の答えは△△」と覚えておけば合格できる。
これでは、本来必要な知識の無い者までが、合格してしまう。

しかし、司法試験における答案練習などは、法律論を書く上で必要な技術を磨くものである。
本来の法曹適格性の一部に相当する技術といえる。
これが単なる技術指導というのなら、司法研修所の起案は何なのだということにもなろう。
判例の知識にしても、しっかりと自分の頭で使い、その定着度を確認することが、法曹適格性を欠くことになるとは思えない。
その意味で、アマチュア無線技士などとは同列に語れない。

また、これはアマチュア無線にもいえる事だが、そのような受験指導が通用する出題をする方が悪いということもある。
短答のテクニカルな部分は、そういうテクニカルな出題をするから、対策が必要になる。
知識問題にしても、判例を暗記しなければ解けない出題をしているのは、出題者側である。

受験指導一般を悪と断定する事は、正しくない。

逆効果

法科大学院の受験指導を禁止しても、予備校の受験指導までは禁止できない。
結局、受験生は予備校に通うようになるだけである。

受験生は、予備校の費用まで負担しなければならなくなる。
予備校費用捻出のためのバイトと予備校通学のために時間を割く。
ローの課題は、ほどほどにするようになるだろう。

受験指導の敵視は、受験生を法曹教育に専念させ、予備校化を防ごうとするためである。
これでは、逆効果である。

被害者は受験生

今後、ローでは、法科大学院の法曹教育を受ければ受験指導など無くても十分合格できると言われるだろう。
しかし、これは根拠がない。
ローを信じたがために、不合格、最悪は三振する可能性がある。
慶應はなりふり構わず受験指導をして合格率を伸ばした。
受験指導はしないと公言する東大は、伸び悩んでいる。

他方、受験指導を受けようとするなら、予備校に通うしかなくなる。
予備校に通うとすると、その費用を負担することになる。
法科大学院が受験指導をやるのなら、負担しなくていい費用である。

結局、被害を受けるのは、受験生である。

戻る