平成19年度新司法試験出題趣旨検討
(民事系第1問)

論点は明確

民事系第1問の問題は典型論点組合せという感じだった。
予備校答練に近かったといえる。
それだけに、出題趣旨はわかりやすい。
設問ごとに書くベき論点がはっきりしている。
このような場合、論点落ちが評価に響きやすい。
予備校問題も、馬鹿にしないでしっかりやっておく必要がある。

設問1について

出題趣旨は以下のようになっている。

 設問1は,甲会社において,第三者割当て実施後に,B派が執り得る対抗手段を解答させる問題である。甲会社の募集株式の発行の手続等の瑕疵を見付け出し,それに基づき,いかなる法的手段が可能かを検討させるものである。具体的には,新株発行無効の訴えの提起が許されるかどうかの検討が必要である。会社法は,新株発行無効の訴えの制度を定めているが(会社法第828条第1項第2号),無効原因については規定されておらず,どのような瑕疵を基に,新株発行無効の訴えが認められるかが問題となる。本件では,発行直前の市場価格を大きく下回る価額での発行が行われているが,募集株式の発行に当たって株主総会の決議を経ていないため,有利発行規制に違反するかどうかが論じられなければならない。また,本件では,募集株式の発行に関する取締役会決議はB派の取締役が海外出張中に行われたので,かかる取締役会決議の効力が問題となり得る。さらに,本件の第三者割当てがA派の支配権を維持するための不公正発行であったといえるかどうかも問題である。これらの募集株式の発行に関する瑕疵が認められるとするならば,続いて,それらが募集株式の発行の無効原因となるかが論じられなければならない。募集株式の発行に瑕疵があった場合における募集株式の発行の効力に関する判例及び学説を踏まえつつ,本件特有の事情を考慮して,自己の見解を述べる必要がある。なお,不公正な払込金額で株式を引き受けた者の責任(会社法第212条第1項)を乙会社に問うことができるかどうかも問題となる。

新株発行無効の訴えを入り口にして、有利発行・取締役会決議の効力・不公正発行を検討する。
そして、それぞれが無効事由にあたるかを書く。
その際は、「判例及び学説を踏まえつつ,本件特有の事情を考慮」しなければならない。
あてはめを丁寧に、ということである。
論証については、「踏まえ」ればよい。
詳論は不要だろう。

会社法第212条第1項の責任については、なお書きにすぎない。
加点事由にとどまるだろう。

設問2について

出題趣旨は以下のようになっている。

 設問2は,第三者割当てにより甲会社株式を引き受けた乙会社の取締役の会社に対する責任の有無を解答させる問題である。甲会社の株式を引き受けたものの,その後保有する株式の価値が大きく下落した場合に,どのような責任が乙会社の取締役に発生するか(若しくは発生しないか)を検討させるものである。具体的には,会社法第423条が定める任務懈怠の責任の有無が判断されなければならない。任務懈怠の責任と善良なる管理者の注意義務との関係,さらに,注意義務違反の判断基準を理解しているかが問われている。その際に,経営判断の原則の意義についての的確な記述が求められる。その上で,経営判断の原則を本件にどのように適用するかが論じられる必要があるが,弁護士事務所の意見書と監査法人の報告書はそれぞれ異なる視点から作成されており,これらの資料を読み解き,乙会社の取締役の責任の有無につきどのように考えるのかについて,説得力のある解答が期待されている。取締役の責任があるとする場合には,賠償すべき損害額についても検討する必要がある。

入り口は423条の任務懈怠要件。
これは誰もがわかったと思う。
しかし、「任務懈怠の責任と善良なる管理者の注意義務との関係」と「注意義務違反の判断基準」は、難しい論点である。
書けた人は少なかったのではないか。
ストレートに経営判断原則に入った人がほとんどだと思う。
この部分のあてはめがしっかりしていれば、上記の一般論は書けなくても問題無かったのではないか。

任務懈怠と故意過失・善管注意義務・忠実義務の相互関係は、新法になって議論されている論点である。
それとの関わりで、経営判断原則がどの要素における議論なのかも問題になってくる。
京大法科大学院の潮見佳男教授が、「民法からみた取締役の民事責任――取締役の対会社責任の構造」(商事法務1740号32〜42頁)において、この点を詳論している。
潮見教授は、新司法試験の考査委員である。
ただ、民法担当なので、影響力があったかはよくわからない。
出題趣旨にあえて触れられている論点なので、本来なら落としてはいけない論点になる。
だが、この部分に関しては、結果的に加点事由になった可能性が高い。

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