平成19年度旧司法試験出題趣旨検討
(憲法第2問)

【問題】

 「内閣は,条約を締結する際,その条約の合憲性について,最高裁判所の見解を求めることができる。最高裁判所が違憲であるとの見解を示した場合は,内閣はその条約を締結することはできない。」という趣旨の法律が制定されたと仮定する。この法律に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

【出題趣旨】

 本問は,内閣が条約を締結するに際し,その合憲性について最高裁判所の見解を求めることができるかという点について,違憲審査権の性格,司法権の意義,憲法と条約の関係,国会の条約承認権等に関する基本的理解を踏まえながら,論理的記述ができるかどうかを問うものである。

前提論点が勝負

「論理的記述」という文言が目に付く。
第1問と同じく論理性が問われている。
ただ、ここでいう論理性の中身は大したことがない。
付随的審査制からは、本問法律は違憲という程度のレベルである。
ここでは差は付かないと思う。

むしろ、「基本的理解」の方で差が付いたのではないか。
前提論点の数が多いからである。
出題趣旨は、違憲審査権の性格,司法権の意義,憲法と条約の関係,国会の条約承認権を列挙している。
とりわけ、憲法と条約の関係については、本問では端折ってしまいたくなる。
また、国会の条約承認権も、論点として書くには躊躇しがちである。
その結果、これらの論点落ちによって評価を下げた人が少なくなかったのではないか。
本問のような出題につき、「前提論点なんて考査委員は読んでくれない、カナダの参照違憲制度類似の制度導入の可否を正面から論じないと点が付かない」などと言われることがある。
しかし、過去の傾向、今回の結果を見る限り、それは無い。

出題趣旨を見ても、それはわかる。
基本事項については具体的に列挙している。
しかし、本問の特殊性の処理については、解釈の一例すら挙がっていない。
新司法試験では、出題趣旨に具体的な思考の一例が挙がっている。
そのあたりから、採点のウェイトの違いを推知できる。

統治は前提論点から一刀両断でOK

過去の再現答案などを見る限り、統治の論理はシンプルでよい。
本問なら、付随審査制→違憲で構わない。
ここを頑張りすぎると、自分でもわからないほど複雑になってしまい、論理矛盾を取られて自滅する。
むしろ、その論理の前提になる基本論点をしっかり書く方が上位になりやすい。
基本論点を書いたら、そこから最も素直な筋で結論を導く。
これが、もっとも統治を無難に乗り切る方法である。

怖い統治

過去の結果に照らすと、統治は採点が極端になる傾向がある。
統治は採点のポイントが比較的少なく、出来ている人と出来ない人の差がはっきりでるようだ。
すなわち、基本論点を書く人は大体無難に書ける。
論点自体は難しくないからだ。
他方、落とした人は丸々点を落とす。
その結果、底辺と天井とに2分されることになるのだろう。

今年についても、それがあてはまるようだった。
特に、条約と憲法の関係を丸々落とすとかなり評価を下げた印象である。

論点ブロックを有効に使う

基本論点の論述は、いわゆる論点ブロックに忠実な方が上位になりやすい。
考えてみれば、統治は問題の抽象性が高い。
従って、ブロックに修正を加える必要性は低い。
ブロックのコピペが最も効果を発揮するのは、統治であるともいえる。
逆に、自分の言葉で書いて、低い評価になる事も多い。

本試験は意外な程、論点主義である。
出題趣旨が論点列挙に等しい構成になっていることからも、それは理解できる。
基本論点を理解し、いつでも書けるくらい覚える。
これが重要だ。
よく、暗記はよくないといわれる。
しかしそれは、理解の伴わない記憶だからである。
理解した上での記憶は、よくないどころか、必須である。

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