平成19年度旧司法試験出題趣旨検討
(民法第1問)

【問題】

 買主Xは,売主Aとの間で,Aが所有する唯一の財産である甲土地の売買契約を締結した。ところが,XがAから所有権移転登記を受ける前に,Aは,Bに対して,甲土地について贈与を原因とする所有権移転登記をした。

 1  上記の事案において,(1) AB間の登記に合致する贈与があった場合と,(2) AB間に所有権移転の事実はなくAB間の登記が虚偽の登記であった場合のそれぞれについて,Xが,Bに対して,どのような権利に基づいてどのような請求をすることができるかを論ぜよ。
 2  上記の事案において,Bは,甲土地について所有権移転登記を取得した後,Cに対して,甲土地を贈与し,その旨の所有権移転登記をした。
 この事案において,(1) AB間の登記に合致する贈与があった場合と,(2) AB間に所有権移転の事実はなくAB間の登記が虚偽の登記であった場合のそれぞれについて,Xが,Cに対して,どのような権利に基づいてどのような請求をすることができるかを論ぜよ。

【出題趣旨】

 本問は,不動産に関する特定物債権の債権者について,二重譲渡関係が生じた場合とそうでない場合のそれぞれに関して,登記なくして物権変動を対抗できる第三者の範囲並びに債権者代位権及び債権者取消権の行使の可否の論述を通じてこれらの法理の理解を問い,さらに,転得者が生じた場合の法律構成の能力や権利外観法理に関する理解を問うものである。

小問1について

二重譲渡が生じた場合というのが、(1)。
そうでない場合が(2)。
「登記なくして物権変動を対抗できる第三者の範囲」は、いわゆる制限説・背信的悪意者排除論ということになる。
「債権者取消権の行使の可否」とは、特定債権への適用の可否、自己への引渡し・取消後の引渡請求の可否。
A答案の人はこの点を外していないようだ。

「債権者代位権の行使の可否」の部分は、書いていなくてもAになっている印象だ。
その意図する内容はよくわからない。
おそらくは、1の(2)の方で書くのだろう。
実際の贈与が無い場合は、AはBに対して引渡し・登記抹消を請求できる。
従って、確かに、Xとしてはこれを代位行使することが考えられる。
しかし、それならば、直接Bに対する引渡し・登記移転をXに請求する方が実効的である。
そのため、ここは多くの人が落としている。
結果的に、ここは加点事由のようになったのではないか。

小問2について

「転得者が生じた場合」が小問2である。
「権利外観法理」が(2)の方で、94条2項類推適用。
(1)の方は、単に「法律構成の能力」としか書いていない。
だが、単純に小問1の(1)で書いた論点について、転得者との関係を書けば良かったのだろう。
具体的には、背信的悪意者からの転得者、債権者取消を受ける者からの転得者。
大体このあたりをコンパクトに触れていれば、Aになっている感じである。

全体について

出題趣旨を見ても、特に深い問題意識はなかったようだ。
単に、個々の論点に答えていけばよかった。
予備校答練とあまり変わらない出題だったといえる。

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