平成19年度新司法試験短答式公法系
第11〜15問解説

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【第11問】

アについて

いわゆる政令201号事件である。
公共の福祉論と全体の奉仕者論を用いて合憲とした。
よって、本肢は正しい。

イについて

全逓東京中郵事件判決は、必要最小限度か否かによって判断している。
「立法裁量を明らかに逸脱しているか」によって判断しているわけではない。
よって、本肢は誤りである。

ウについて

都教組事件判決全司法仙台事件判決は、いずれも全逓東京中郵事件判決を踏襲し、合憲限定解釈を行った。
都教組事件判決の「二重の絞り」論が有名である。
よって、本肢は正しい。

エについて

全農林警職法事件判例が変更したのは、全司法仙台事件判決である。
全逓東京中郵事件判決ではない。
よって、本肢は誤りである。
ここは、結構引っかかった人が多かったのではないか。
なお、全逓東京中郵事件判決を変更したのは、名古屋中郵事件判決である。
全逓東京中郵事件は、公共企業体等労働関係法の問題。
都教組事件は、地方公務員法の問題。
全司法仙台事件と全農林警職法事件は、国家公務員法の問題。
問題となる法令が異なる点に注意しよう。

【第12問】

アについて

本肢は誤りということになっている。
言論の自由ではなくて、結社の自由ということだろう。
ただ、これは本試験の現場では意外と悩む肢かもしれない。
広義の言論の自由に、ひょっとして結社の自由も入るのではないか。
そういう疑問を持ってしまうと、単純正誤問題だけに、迷ってしまうだろう。

イについて

本肢は正しいということになっている。
本肢の言っていること自体、おかしいことではないので、正しいのだろう。
ただ、これも現場では迷う肢である。
「憲法に政党を直接規定する」だけである。
直ちに本肢のようなおそれが生じると断定してよいか微妙だからだ。
ドイツでは国民に憲法忠誠義務を課す等、政党以外の部分でも「闘う民主制」の考え方が憲法に規定されている。
規定のされ方、その他の条項との兼ね合いによって、変わってくるように思う。
単純正誤でこういう肢は、受験生泣かせといえるだろう。

ウについて

本肢は正しい。
この肢はアイよりも判断しやすい。
論理的に素直な文脈になっているからだ。

エについて

本肢は誤りと断定できる。
「政党法」なる法律がないからである。
我が国には政党一般を規律する法律はない。
だからこそ、その後に列挙されるような個別の法律で対応しているのである。

【第13問】

アについて

政府見解を訊く問題である。
昭和29年の第21回参議院予算委員会の議事録に、以下のような記述がある。

林政府委員 今の九条の内容は法律解釈の問題になりますので、私からお答えいたします。今お尋ねになりましたように、九条の一項につきましては、これは国の固有の権利としての自衛権というものを否定していないことはほとんど異論のないところであろうと思います。同時に従つて、一項は国際紛争解決の手段としての武力抗争あるいは戦争を否定しておるだけでありまして、自衛隊の発動としての武力抗争ということを否定しておらないことも、これまたほとんど異論のないところであろうと思うわけであります。問題は結局第二項に参るわけでありますが、第二項に、陸海空軍その他の戦力を保持しないという規定があるわけであります。これにつきましては学説がいろいろ出ておるわけであります。しかしいずたいたしましても、この二項の規定は、もちろんこの一項の規定と関連して、あるいは憲法全体の考え方から合理的に読まなければならないものであろうと思うわけであります。この第三項で陸海空軍その他の戦力を保持しないといいますけれども、第一項で自衛権を認め、自衛のための武力抗争、ともかく外国から侵略を受けた場合にただ黙つておるというような態度でない以上は、この二項につきましてもその見地からそれを合理的に読まなければならないであろう、かように考えるわけであります。「陸海空軍その他の戦力」という言葉は、やはりそこの意味からいつて一切の戦い得る力を否定しておるものではない、かように考えるわけでございます。つまり先刻来大村大臣から申しました通りに、自衛権があるというとことから参りまして、自衛のための任務を持つておるわけであります。もう一つにおいては結局一項において国際紛争解決の手段としての戦争を放棄しておる、こういう関係から申しまして、自衛のために必要相当な限度の実力部隊、こういうものを持つことは二項は当然認めておるものである、そこで保持を禁じておる戦力には当らないものである、かように考えるわけでございます。

政府見解は「前項の目的を達するため」という文言は理由付けにしていない。
よって、本肢は誤りである。

イについて

自衛隊機の離着陸の差止めが問題となった判例として、最判平5・2・25がある。
判例は、差止請求を却下したが、統治行為論を用いていない。
公権力の行使に当たる行為であるから、行政訴訟としてならともかく、民事上の請求としては無理だと言ったに過ぎない。
よって、本肢は誤りである。

ウについて

正当防衛・緊急避難にあたる場合の武器使用については、組織的活動としての武力の行使とは区別される。
PKO等における武器使用はこのカテゴリーである。
よって、本肢は正しい。
なお、平成19年12月11日の外交防衛委員会の議事録に以下のような記述がある。

風間直樹君 ・・・実力行使が可能な自衛隊、軍隊というものを海外に出す、そのことの意味の重さというものを踏まえてお尋ねをしますが、ゼロ%ではない、けれどももし攻撃があった場合には速やかにそこから避難をする、あるいは退避をすると、この考え方はそれなりに理解ができるわけでございますが、仮に攻撃を受けた場合、これに対する反応としてはどういうことを想定されていらっしゃるんですか。つまり、何らかの武力を用いた反応をそこでするのか、あるいはせずに退避をするというふうに考えていらっしゃるのか、いかがでしょうか。

国務大臣(石破茂君) それは正当防衛であり緊急避難であり、あるいは武器等防護という権限を行使をすることは当然ございます。しかしながら、それは当然認められるものであって、そこに反撃というんですかね、そういうような自己保存以外のものが入るということは極めて考えにくい。武器等防護は九十五条の規定のとおり御理解をいただきたいと存じます。

全体について

以上から、7が正解ということになる。
普段受験生が押さえていないところである。
しかも、肢の組み合わせが全て選択肢になっているため、正誤を一つでも誤ると不正解になる。
従って、出来は相当悪かったと思われる。
難問だったと言っていいだろう。

【第14問】

アについて

52条、53条が常会と臨時会を分けて規定していることから、会期制を採用しているといえる。
しかし、常会の会期を1年とした場合、国会は常設ということになり、会期制を採用した意味が無くなる。
よって、会期を1年とすることはできないとされる。
よって、本肢は誤りである。

イについて

正しい(国会法12条、13条)。
国会法もある程度やっておけということである。

ウについて

正しい(53条後段)。

エについて

憲法上会期不継続の原則の現れとみるべき条文はない。
よって、「憲法は会期不継続の原則を採用している」が誤っている。
なお、後段部分も誤っている。
甲議院で可決後、継続審査となって後会に継続し、乙議院で可決された場合は、再度甲議院に送付される(国会法68条ただし書、83条の4・83条、平成19年改正施行後は83条の5・83条)。
そのため、再度甲議院で議決を要することになるからである。

(参考)衆院商工委員会昭和32年11月13日

福田委員長 御承知の通り、中小企業団体法案及び中小企業団体法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案は、第二十六回国会において内閣より提出せられ、本委員会において十分慎重審議を行なった後、本院におきましては修正議決し、またこの両案の審査の過程において、中小企業団体法案との関連により、中小企業等協同組合法の一部を改正する必要を認め、委員会において成案を得、本院の議決を経て、これら三案は参議院に送付せられたのであります。
 自来、参議院において継続審査の後、本日衆議院送付案通り可決の上、国会法第八十三条の四の規定により、本院に送付せられて参ったものであります。従いまして、右三案の趣旨は十分御承知のことと存じますので、直ちに質疑に入りたいと存じますが、御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

オについて

一事不再議の原則については、憲法は例外だけを規定している(59条2項)。
よって、原則を規定しているとする本肢は誤りである。

よって、正解は5となる。

【第15問】

アについて

正しい(66条1項、68条1項本文、7条5号)。
認証は、任命が正当な手続で有効になされたことを証するものである。
従って、それ自体有効要件ではない。

イについて

行政各部の指揮監督は、内閣の権限である。
それ自体、行政権に含まれるからである。
もっとも、これを実際に行うのは、内閣を代表する内閣総理大臣である。
そして、これは行政権の行使であるから、内閣は国会に対して連帯責任を負う(66条3項)。
この責任は、具体的な法的要件効果の規定がないことから、政治責任である。
以上から、本肢は正しい。

ウについて

65条は、まさに内閣が行政事務を行う一般的権限を示すといえる。
従って、本肢は誤りである。

エについて

本肢の立場は、政令に法律の基礎を要するとするものである。
従って、独立命令だけでなく、代行命令も許されない。
よって、本肢は誤りである。

以上から、正解は1となる。

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