平成19年度新司法試験短答式公法系
第21〜25問解説

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【第21問】

アについて

判例は公務員個人の賠償責任を否定する(最判昭30・4・19)。
軽過失か故意・重過失かは関係が無い。
よって、本肢は誤りである。
なお、故意・重過失がある場合は、国・公共団体が当該公務員に求償が出来る(国賠法1条2項)。

イについて

国賠法2条1項の責任は無過失責任である(最判昭45・8・20、高知落石事件)。
そうすると不可抗力による免責の余地はなさそうに思える。
しかし、上記判例は同時に、「その他、本件事故が不可抗力ないし回避可能性のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる」とも判示している。
従って、上記判例は、不可抗力ないし回避可能性のない場合における免責の含みを残しているといえる。
また、最判昭50・6・26は、道路の安全性欠如を認めた上で、安全な状態にすることは不可能な状況であり、管理の瑕疵がないとして、免責している。
これは、一種の不可抗力による免責であるとされている。
以上から、免責の余地を否定する本肢は、最高裁の判例の趣旨に照らせば、誤りとなる。

ウについて

最大判昭56・12・16(大阪国際空港公害訴訟判例)は、利用者以外の第三者に対する危害をも含むと判示している。
よって、本肢は後段が誤っている。

以上から、正解は8となる。

【第22問】

アについて

判例は、直接憲法29条3項で補償請求できる余地があることを理由の一つとして、法令は違憲無効とならないとする(最大判昭43・11・27)。
よって、本肢は正しい。

イについて

最判昭48・10・18は、補償価格算定に、都市計画事業の建築制限を斟酌してはならないとする。
よって、本肢は正しい。

ウについて

最判昭58・2・18は、道路工事の施行を直接の原因として生じた損失に限られ、工事によって警察法規に違反する状態を生じ、工作物の移転等を余儀なくされたことによって被った損失は、補償対象に属しないとする。
よって、本肢は誤り。

以上から、正解は2となる。

【第23問】

アについて

上級行政庁は下級行政庁に対して、訓令・通達などの指揮命令権を有する。
逆に言えば、上級行政庁が下級行政庁の権限を直接に行使することは、当然には認められないということである。
よって、本肢は誤りである。

イについて

権限の委任が行われた場合において、受任機関が委任機関の下級機関であるときは、委任機関が受任機関に対し、指揮監督権を有する。
よって、本肢は誤り。

ウについて

上級行政庁の取消・停止権は、指揮監督権の一つとして分類される。
よって、本肢は正しい。
なお、法律の根拠なくこれを認めうるかについて学説の対立がある。
しかし、どちらの説が通説であるかは本肢には関係が無い。
「一般に」の文言は、「特に法律上の根拠がなくても」というように読むべきではない。
本肢は、あくまで取消・停止権がカテゴリー上、指揮監督権に含まれるかという趣旨である。
仮に「国家権力には一般に、刑罰権が含まれる」という肢は、正しいだろう。
しかし、「国家は、法律上の根拠が無くても、刑罰権を行使できる」という肢は、罪刑法定主義から誤りである。
これと同様に考えるべきである。
アの肢では、「法律上の根拠が無くとも・・・できる」となっている。
もし、本肢でその点を訊きたいなら、同様の体裁をとるはずである。

以上から、正解は7となる。

【第24問】

アについて

情報公開法1条に説明責任の原則が明示されている。
よって、本肢は誤り。

イについて

最判平20・1・18は、住民訴訟において、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に、普通地方公共団体が土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約が私法上無効となることを認めている。
よって、本肢は誤りである。
もっとも、受験時にはこの判例はまだ出ていないが。

ウについて

最判昭56・1・27が同旨の判示をしている。
よって、本肢は正しい。

エについて

紀伊長島町水道水源保護条例事件判例が同旨の判示をしている。
よって、本肢は正しい。

【第25問】

アについて

Bが申請を拒否できるのは、許可基準に適合しない場合である(食品衛生法52条2項)。
本問では許可基準が不明である。
もっとも、許可基準は、公衆衛生の見地から必要な基準とされる(同法51条)。
過当競争で不衛生な飲食(中国からの輸入食品等)が供給されるのでは、と考える人もいると思う。
だが、一般的には、過当競争のおそれは、公衆衛生の見地から必要とはいえないとされる。
そうすると、過当競争のおそれを許可基準において、不許可事由とすることはできないはずである。
従って、Bは過当競争のおそれを理由として申請を拒否することはできないことになる。
よって、本肢は正しい。

イについて

陳情の理由は風紀の乱れとでもいうものであり、公衆衛生とは関係が無い。
従って、アと同様、申請を拒否できない。
よって、本肢は誤りである。

ウについて

52条3項の「必要な条件」にあたるかという点が問題となる。
「必要」かどうかは、1条の目的からして、公衆衛生の見地から判断すべきということになる。
そうすると、料金がいくらかということは、公衆衛生とは関係がないから、「必要な条件」にあたらないということになる。
よって、本肢は誤りである。

エについて

瑕疵ある場合が取消し、瑕疵の無い場合が撤回である。
本肢の場合は、本来許可基準を充たさないのに許可をしたのだから瑕疵ある場合である。
従って、撤回ではなく、取消しである。
よって、本肢は誤りである。

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