「規制改革推進のための3か年計画」改定の意味

正式に閣議決定

3月25日に、「規制改革推進のための3か年計画」の改定が閣議決定された。
以前から言われていた通り、法曹人口についての記述が変更された。
具体的に、何がどう変わったのか、その点を確認しておきたい。

どこが変わったか

実際に、前回と今回の記述を見比べて見よう。
該当する箇所は、法務関係・アの@「法曹人口の大幅増員等」という部分である。
具体的な措置内容として、a とb の項目に分かれている。
まずは、a の部分から見比べてみる。

●前回(平成19年6月22日閣議決定)

 司法試験合格者数を、年間3,000人とするため、平成16年にはその達成を目指すべきとしている1,500人程度への増員以降、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃にその達成を目指すべきとされている3,000人程度への増員に向けて計画的かつ早期の実施を図る。
 また、実際に社会の様々な分野で活躍する法曹の数は社会の要請に基づいて市場原理によって決定されるものであり、平成22年頃までに3,000人程度に増員されても、これが上限を意味するものではないので、この点を踏まえて、その後のあるべき法曹人口について更なる研究・検討を行う。

 

●今回(平成20年3月25日閣議決定)

 司法試験合格者数を、年間3,000人とするため、平成16年にはその達成を目指すべきとしている1,500人程度への増員以降、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃にその達成を目指すべきとされている3,000人程度への増員に向けて計画的かつ早期の実施を図る。
 また、実際に社会の様々な分野で活躍する法曹の数は社会の要請に基づいて市場原理によって決定されるものであり、平成22年頃までに3,000人程度に増員されても、これが上限を意味するものではないので、この点を踏まえて、その後のあるべき法曹人口について更なる研究・検討を行う。

一字一句確認しても、違いを見つけることはできない。
措置内容a の部分については、全く変更されていない。
そうすると、平成22年頃に3000人。
この目標の「計画的かつ早期の実施」を目指すことには変わりがないということになる。
また、3000人が上限ではないということ、この点も変わらない。
研究・検討の結果、やはりもっと増やすということもありうる。

次に、措置内容b の方を見てみよう。

●前回(平成19年6月22日閣議決定)※下線は筆者

 司法試験合格者数の拡大について、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、現在の目標(平成22年ころまでに3,000人程度)を前倒ししてこれを達成することを検討するとともに、その達成後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配意しつつ、社会的要請等を十分に勘案して、更なる増大について検討を行う。
 その際、国民に対する適切な法曹サービスを確保する観点から、司法試験の在り方を検討するために必要と考えられる司法試験関連資料の適切な収集、管理に努めることとし、司法試験合格者の増加と法曹サービスの質との関係の把握に努める。

 

●今回(平成20年3月25日閣議決定)※下線は筆者

 司法試験合格者数の拡大について、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、現在の目標(平成22年ころまでに3,000人程度)を確実に達成することを検討するとともに、その後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配意しつつ、社会的ニーズへの着実な対応等を十分に勘案して検討を行う。
 その際、国民に対する適切な法曹サービスを確保する観点から、司法試験の在り方を検討するために必要と考えられる司法試験関連資料の適切な収集、管理に努めることとし、司法試験合格者の増加と法曹サービスの質との関係の把握に努める。

下線部分が変更された部分である。
順に見ていく。

平成22年頃までに3000人。
この目標が、「前倒しして達成」から「確実に達成」に変更された。
「平成22年ころ」より前に3000人に増やすことはないということになる。
その意味では、増員計画の後退といえる。
しかし、これはほとんど意味が無い。
今年は、もう平成20年だからである。

なお、「その達成後の」が、「その後の」に変更されている。
「その」が指すのは、明らかに合格者3000人計画のことである。
前者では、前倒しの可能性があるので、「その達成後」ということになる。
後者は、前倒しがないので、単に、「その後」という表現になった。
これは、言葉の問題に過ぎない。

そして、「質の確保に配意」することは、これまでと変化が無い。
これまでも質の確保に配意してきたし、これからも同じように配意する。
こういうことである。
もっとも、勘案する内容に変更がある。
前回は「社会的要請等」であったが、今回は「社会的ニーズへの着実な対応等」。
これは違う意味なのだろうか。
「要請」を英語にすると、「ニーズ」になるだろう。
また、「着実に対応」が付け加わったことで具体的に何か違いが生じるとも思えない。
この点は、結果的にほとんど無意味な変更だったということになる。
おそらく、様々な折衝の結果、こうなったのだろう。
「ニーズ」にすることで、弁護士に対する需要が本当にあるのかを検討させたい。
「着実に対応」を入れることで、この部分を強調したい。
その意図はわかるが、結局はどうとでも取れる文言になっている。

他方、「更なる増大」が削除された点は重要である。
これまでは、増員は検討するが、現状維持・減少は検討しない。
そういう文脈になっていた。
それが、この削除によって、現状維持・減少も視野に入れて検討するということになる。
厳密には、この部分のみが、「法曹増員の見直し」を意味している。

今後の展開

今回の改定は、実質的には、3000人計画達成後の検討の段階に変更があっただけである。
従って、当面の合格者数の推移はこれまでの予定と変わらないはずだ。
そうすると、結局、これまでの合格者数案にそのまま準拠するような数となるだろう。
すなわち、今年の合格者は新司法試験が2100〜2700人、旧司法試験は200人前後ということになる。
ただ、昨年が下限に近いような数字だった。
それが踏襲されるとすれば、今年は新司法試験が2100人強、旧司法試験は200人弱ということになるだろう。
合格者総数としては、2300人前後くらいか。
来年、再来年は前年プラス300人〜400人という形で、再来年に3000人を達成する。
これがもっともありうる数字だろう。

そして、検討が開始されるのは、平成22年頃に3000人を達成した後である。
上記合格者数案通りとなれば、平成23年度の合格者数からということになる。
ここから、増えるのか、減るのか、3000人のままか、これはまったくわからない。

以上が、今回の改定から読み取れることである。
重要なことは、平成23年以降の、検討開始時点の空気がどうなっているかである。
その空気作りは、既に始まっている。

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