新司法試験受験予定者公表

受験予定者の中身は

旧司法試験の出願者数公表と同日、法務省は新司法試験の受験予定者数を公表した。
受験予定者総数は、7710人。
数が増えることは、当然のことである。
では、その中身はどうか。
以下は、平成18年以降の推移である。

  平成18年 平成19年 平成20年
受験予定者総数 2125 5280 7710
うち男性 74.2% 70.0% 69.7%
うち女性 25.7% 29.9% 30.3%
倒産法 21.8% 22.4% 23.6%
租税法 5.2% 5.2% 4.8%
経済法 9.9% 9.4% 9.4%
知財法 16.7% 16.5% 15.2%
労働法 32.5% 31.3% 31.8%
環境法 4.9% 5.6% 5.7%
国際公法 2.2% 2.0% 2.0%
国際私法 6.3% 7.2% 7.2%
東京都 62.6% 56.1% 54.7%
大阪市 26.4% 23.4% 22.5%
名古屋市 4.2% 6.0% 7.1%
福岡市 2.0% 5.3% 5.7%
仙台市 2.4% 3.8% 3.8%
札幌市 2.1% 2.2% 2.1%
既修・法学部 不明 47.5% 39.0%
既修・非法学部 不明 5.87% 5.3%
未修・法学部 0.0% 25.0% 32.9%
未修・非法学部 0.0% 21.5% 22.6%
受験者総数 2091 4607
受験率 98.4% 87.3%
合格者数 1009 1851
受験者合格率 48.2% 40.1%

(平成18年度の男女割合については、受験予定者の数字が見当たらない。
そのため、実際の受験者における割合である。
平成19年度の既修・未修等の割合は、受験予定者の数字が見当たらない。
そのため、出願者ベースの割合である。)

男女比

平成18年の段階では、男:女の比率は、概ね75:25だった。
それが、平成19・20年では、概ね70:30となっている。
今後も7:3くらいの比率で推移しそうである。

旧司法試験では、男女比は概ね8:2くらいだった。
平成20年度で言えば、出願者総数21994に対し、女性は4210人。
全体の19.1%となっている。
旧司法試験は、受けたいと思えば基本的に誰でも受験できる。
従って、法曹を志す者の男女比は、大体8:2ということになる。

これが、新司法試験になって、受験予定者の男女比が7:3になった。
女性を優遇的に入学させているロースクールがあるためだろう。

また、未修者が受験する平成19・20年が平成18年に比べて女性割合が高い。
そうすると、未修者に女性が多いのではないかと考えることができる。

選択科目

選択科目の比率は、意外なほど固定化している。
未修受験者が増えても、ほとんど変化が無い。
法科大学院の講義科目や、教官・テキストの普及度など、固定化された原因によるのだろう。
あまりに受験者の少ない科目は、将来的には選択科目から外される可能性がある。

受験地

基本的には、ロースクールの分布に依存する。
平成19年にやや変化が見られるのは、未修のみの法科大学院が参戦したからである。
大宮、鹿児島、桐蔭横浜、東北学院、琉球あたりがそれである。
今後は、この数字にそれほど変化はでないはずである。

既修・未修等

既修と未修という点に着目すると、平成19年は、既修53.3%に対し、未修46.5%。
これが、平成20年には、既修44.3%、未修55.5%になっている。
既修が減って未修が増えている。
多様な法曹というロースクール構想の趣旨に沿っているように思える。
しかし、法学部・非法学部という部分に着目すると、そうではないことがわかる。
平成19年は、法学部72.5%、非法学部27.3%である。
平成20年は、どうか。
法学部71.9%、非法学部27.9%。
法学部、非法学部の比率は、変わっていない。
要は、既修・法学部が減って、未修・法学部が増えているだけなのである。
すなわち、法学部生が、既修から、未修へ流れている。
この傾向が今後も続くのか、注目したい。

予想合格率は31.9%

今年の受験率は、予想しがたい。
まだ、新司法試験は過去2回しか行われておらず、見通しが立てにくいからだ。
本来、受験初年度から受け控えをするということには合理性が無い。
5年間という受験制限がある以上、受験は3回までできるが、受け控えは2回しかできない。
初回に受け控えをすれば、もう後1回しか受け控えはできなくなる。
また、本試験の受験経験を積んだ方が、有効な勉強ができる。
しかし、受け控えによって、本試験を経験せずに貴重な一年を過ごすことになる。

とはいえ、実際には受け控えをする受験生は少なくない。
昨年の受験率は、87.3%である。
今年は、昨年とやや状況が違うので、違う数字になる可能性も高い。
しかし、一応参考のため、昨年の受験率で、今年度の合格率等を推計してみよう。

そうすると、今年度の受験者は、7710*0.873≒6730人となる。

そして、今年度の合格者数は、以前の記事で述べたとおり、2100人強と予想される。
仮に、ここでは2150人としよう。

そうすると、予想合格率は、2150/6730≒31.9%ということになる。

誤った報道

マスコミの記事では、以下のように報道されている。

時事通信2008/04/22、11時32分配信

(以下引用)

新司法試験、7700人が受験へ=予想合格率は27〜32%−法務省

法務省は22日、今年の新司法試験(5月14〜18日)の受験予定者が7710人になったと発表した。

(中略)

同省は今年の合格者数の目安は2100〜2500人としている。予想合格率は約27〜32%。昨年(合格率約40%)よりやや「狭き門」となりそうだ。

(引用終わり)

これは、誤りといっていいだろう。
合格者数の目安については、間違ってはいない。
しかし、この記事は、予想合格率の下限として、2100/7710≒27.2%を用いている。
同じく予想合格率の上限として、2500/7710≒32.4%としている。
すなわち、受験予定者ベースの合格率を計算している。
にもかかわらず、昨年の合格率は、実際の受験者ベースの合格率40.1%を挙げている。
昨年の受験予定者ベースの合格率は、1851/5280≒35.0%である。
記事だけを読むと、昨年より8%〜13%合格率が下がると誤解するだろう。
しかし、実際の受験予定者合格率は、3%〜8%程度しか違わない。

そもそも、「予想合格率」という場合、通常は、実際の受験者ベースの数字をいうはずである。
受け控えを不合格者として算定することは、自然とはいえないからだ。
結果的に、受験生の不安を不当に煽るだけの記事になっている。

戻る