「司法試験定義集(公法系・民事系・刑事系)」
出版しました

でじたる書房より、司法試験定義集(公法系・民事系・刑事系)(税込315円)を出版しました。
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法及び刑事訴訟法の7科目分の定義を収録しています。
収録定義数は全部で346です。
事例問題主体の最近の傾向においても必要と思われる定義を厳選して収録しました。
行政法や、会社法対応の定義集は、市販ではあまり見当たらないので、役に立てばと思います。
なお、行政手続法、会社法など、詳細な定義規定がついたもの(行政指導や社債など)は外してあります。
詳しくは、リンク先を参照して下さい。

以下は、本書の「はじめに」の引用です。

  旧司法試験においては、定義を覚えることは、合格のために必要なことであるとされてきた。とりわけ、応用三法(商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)においては、必須とも言われていた。その理由は、一行問題がたびたび出題されていたからである。一行問題というのは、例えば、「自由心証主義の意義と機能について論じなさい」というような問題のことである。基本的制度・概念を端的に問う出題形式である。このような出題形式においては、問われた制度・概念の定義から答案を書き出すことが定石とされた。すなわち、「自由心証主義とは、・・・である。」という書き方である。そのためには、制度・概念の定義を正確に覚えていなければならない。そして、多くの受験生が定義をしっかり書いている中で、定義を書けていないと、差が付いてしまう。このように、言われ続けてきた。
 新司法試験においては、一行問題が出ることはまずあり得ない。長文の事例問題が出るということは、おそらく今後しばらくは間違いないと思われる。そうすると、新司法試験においては、定義を覚える必要性は、低いということができる。
 しかし、定義を一切覚えなくて良いかというと、そうではない。理由は二つある。
 一つは、事例問題においても、問題点の法的整理や条文へのあてはめのために、まず定義を明らかにし、その定義に問題文の事例をあてはめるという作業が必要になることである。例えば、事前抑制が主要な論点となる問題について、冒頭に本問が検閲にあたらないことを示しておくべき場合がある。このような場合には、「検閲とは、・・・をいうところ、本問では、・・・であるから、検閲にはあたらない」などというような記述をすることになる。そのためには、検閲の定義を覚えておかなければならない。また、民法において、ある支出が有益費にあたるのか、必要費にあたるのかを判断するためには、「本問の支出は、・・・であるから、有益費にあたる」などと記述することになる。この・・・の部分には、有益費の定義が入ってくることになる。そのためには、有益費・必要費の定義を覚えておかなければならない。刑法各論の構成要件などについても同様のことが言えるだろう。
 もう一つの理由は、新司法試験に傾向変化の予兆があることである。これまで、新司法試験の問題は、回を重ねるごとに、基本的な問題になってきているように感じられる。それは、考査委員の方で、受験生のレベルに合わせた出題をせざるを得なくなっているからである。実際、考査委員に対するヒアリングにおいて、基本的な制度への理解が不十分であるという指摘が多くなされている。そうすると、今後、基本的な制度・概念の理解を直接訊いて来る可能性は否定できない。かといって、旧司法試験のような一行問題が出るということはない。そうではなく、例えば、「取締役会制度の意義について簡潔に触れた上で、本問において甲乙の負うべき責任について論じなさい」というような、事例分析の前提として一行問題的な要素のある出題形式を採用してくる可能性は、大いにあるといえる。このような出題形式においては、旧司法試験の一行問題と同様、定義で書き出すことが定石となるだろう。そうなると、やはり定義を覚える必要が生じてくる。その傾向が感じられるのは、例えば、平成19年度の刑事系第1問である。あの問題は、「欺罔」と「恐喝」の区別を論じさせている。そして、そのことを小問で明示的に提示し、これは最低限書きなさいと指定して来た。すなわち、「欺罔」及び「恐喝」の意義が直接問われていたといってもよい問題である。この問題を解くに当たり、それぞれの定義を覚えている人は、かなり書きやすかったと思う。「欺罔とは・・であるのに対し、恐喝とは、・・・である。本問では、・・・である。よって、・・」というような書き方ですんなり書けたはずだ。今後、他の科目でもそのような傾向が強まると予想される。旧司法試験の傾向なども踏まえると、最もそのような傾向となりやすいのは、民事訴訟法であろう。
 以上のような二つの理由から、新司法試験においても、定義を覚える必要性はある。しかし、旧司法試験の時と同程度ではない。本書では、新司法試験においても覚えておくべき基本的制度、及び、事例分析のあてはめに役立つ条文の文言ないし概念の定義を中心に、数を絞って収録した。会社法については、新会社法に合わせて定義を新しくしている。また、定義自体に争いがあるものについては、解釈論として覚える方がよいので、本書では省いている。刑法の相当因果関係・違法性などがそうである。もっとも、争いのある定義であっても、判例・通説の基準を示して短く補足的に書くべき場面があると思われる定義については、判例・通説の定義を収録している。検閲や、不法領得の意思などがこれにあたる。
 本書を使うに当たって、いくつか注意して欲しいことがある。
 まず、これらの定義を全部覚えないと受からないということはないということである。前述のように、定義を覚えていることで、答案がかなり書きやすくなる。しかし、覚えていない場合は、定義をスキップして答案を書けばよい。もちろん、その部分の評価を若干落とすだろうけれども、それだけで不合格になるということはない。より重要な部分は、解釈論であったり、事例の評価の仕方であったり、そういう部分であるから、その部分をしっかり書けば、良いわけであり、まずはそのための勉強に時間を割くべきである。定義を覚える時間は、例えば就寝前の30分とか、電車による移動時間など、本格的な勉強をするには難しいちょっとした空き時間を充てるとよいだろう。本試験の当日までに一つでも多く覚えるが、覚えられなかった部分は無理をしない。そういうスタンスで構わないと思う。暗記の時間を重視しすぎることのないようにして欲しい。
 また、覚える際には、一字一句の丸暗記をするのではなく、パーツごとの意味に留意しながら覚える方がよい。例えば、検閲ならば、「行政権が主体となって思想内容等の表現物を対象とし、その全部または一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」という定義であるが、「行政権が」という部分は、裁判所による事前抑制の場合を排除する。「思想内容等の表現物」という部分は、思想とまではいえない表現行為を含まない意味がある、等々である。このように、一つ一つのパーツごとに覚えていき、それを繋げて全体の定義を完成させるという発想で覚えていけば、長い定義でも少しずつ覚えていけるはずである。また、しっかりと理解した上で覚えておけば、答案で用いる場合でも、短く書く必要がある場合にはどの部分は省けるのか、ということが判断でき、臨機応変な対応が可能となる。くれぐれも、丸暗記だけはしないで欲しい。それならば、むしろ定義は覚えない方がいい。
 それから、同一概念であっても、定義は一つとは限らないということである。自分の使っているテキストや、法科大学院で学んだ定義と、本書で収録した定義とが、違っている場合は当然ありうることである。それは、どれかが間違っているということではない。基本書によって、定義は様々である。本書では、比較的覚え易いもの、論理的に構成されているものを優先して収録している。ただ、やはり自分の馴染んでいるものの方が覚えやすいはずである。仮に、自分の使っているテキストや、ロースクールで学んだ定義の方が覚えやすいということであれば、そちらを覚える方がよい。
 本書が受験生の方々の合格に少しでも寄与できれば幸いである。

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