平成20年度新司法試験論文式の感想(公法系)

憲法について

非常に練って作られた問題である(問題はこちら)。
法律から内閣府令、Q&Aまで仮想のものをわざわざ用意している。
考査委員は気合いを入れて作ったな。
そんな印象を受けた。

内容的には、憲法らしい問題である。
一見すると論点をたくさん含んでいる。
具体的には以下のようなものがある。

(1)検閲
(2)事前抑制
(3)有害情報と表現の自由
(4)有害情報を知る権利
(5)有害情報を拒む権利
(6)パターナリスティックな制約
(7)付随的な大人に対する制約
(8)適正手続・明確性
(9)行政による情報選別・評価
(10)ソフトウェア搭載・削除手続義務とインターネット接続電子機器製造・販売業者の営業活動の自由
(11)インターネット接続電子機器製造業者と財産権(助成措置との関係)
(12)委任命令の限界
(13)適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止と財産権
(14)法適用の合憲性適法性(裁量権の逸脱)

憲法以外の科目であれば、これらの論点を一つ一つコンパクトにまとめた答案が上位になる。
しかし、憲法の場合はそういうわけにはいかない。
論点の中で重要なものに絞って書いた答案が上位になりやすい。

本問で重要な論点は、Aの弁護人という設定から、Aが直接的に侵害されている利益ということになる。
そうすると、書くべきは(1)(2)(3)。
とりわけ、(3)をメインに書くということになるだろう。
(1)、(2)については、それを根拠に違憲としない場合は、前提的に触れる程度でよい。
(4)〜(7)については、規制目的の正当性の関係で少し触れることになるだろう。
すなわち、子供に有害情報を見せないことが合憲的な目的なのかということである。
法令を合憲とした場合は、(14)も書くことになる。
また、(12)については、統治の論点として、別個に論じておいた方が無難である。

差が付くのは、論点の適切な絞込みを行い、あてはめを丁寧に出来たかどうかということになる。

行政法について

今年も抗告訴訟がメインとなった。
検討すべき事項は昨年同様、誘導があるからそれに従えばよい。
弁護士Cの指示に従って検討することになる。
今回は指示の内容がシンプルであり、下記の3点である。

(1)調査が違法に行われたとして,そのことは勧告にどういった影響を及ぼすのか,両者の関係を整理してください。

(2)本件の法的仕組みの中で勧告が占める位置や,その性格からさかのぼって,どのような手続が要求されるのか,もう一度検討してください。

(3)勧告と公表の法的性格を分析した上で,採るべき法的手段について,公表を阻止する観点から検討をお願いします。

指示は、主として設問1についてのものである。
(1)は、調査の違法が、勧告の違法に結びつくかという点。
(2)のうち、「法的仕組みの中で勧告が占める位置や,その性格」という部分は、いわゆる仕組み解釈をしてくれということである。
すなわち、勧告自体の法的効果だけでなく、法的仕組み全体から考えて、処分性を肯定しうるか検討すればよい。
そして、「どのような手続が要求されるのか」という点は、処分と考えた場合の採るべき手続きの検討である
不利益処分と考えるのであれば、行政手続法所定の手続(聴聞又は弁明の機会付与、理由の提示)が必要になる。
これを欠いていれば、勧告手続自体にも違法があることになる。
なお、この場合、勧告は介護保険法に基づくものであるから、行政手続法の適用除外にあたらない(行手法3条3項かっこ書)。
(3)については、処分性があれば、取消訴訟、差止め訴訟とそれに伴う執行停止、仮の差止めが可能となる。
このうち、公表を阻止できるのは、公表についての差止めと仮の差止めという手段であろう。
この点、公表差止めの前提として、勧告の取消訴訟を要するかという問題がある。
勧告の処分性を肯定したとしても、勧告に公定力を認めるわけではないと考えれば、勧告の取消訴訟は不要ということになるだろう。

設問2については、とにかくあてはめをするだけである。
丁寧に事実を挙げているか、事実評価の根拠を述べているか、が点数を分けると思われる。

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