平成20年度新司法試験論文式の感想(刑事系)

全体について

刑事系はオーソドックスな出題だった(問題はこちら)。
刑法は旧司法試験を長文にした程度のものである。
刑訴法は一応資料が挙がってはいるが、大したものではない。
内容的にも、旧司法試験の過去問を一通り検討していれば、問題なく解けるようなものである。
実力のある人が、順当に点数を取れる問題である。
その意味で妥当な出題といえる。
もっとも、他の科目と比べると、刑事系の考査委員は冷めているという感じも受ける。

刑法について

昨年は検討事項を指定したり、判例を資料とするという工夫が見られた。
しかし、今年に関しては、「罪責について,具体的な事実を示して論じなさい」とするのみである。
何らかの工夫をした場合と、普通に出題した場合とでどうなるか比べようとしているのかもしれない。

内容的には、典型論点の組み合わせといった感じだ。
共謀共同正犯と幇助の区別、共謀の成立範囲、強盗の機会における致傷か、行為後の事情(死との因果関係)あたりが主要な論点である。
どれも典型論点で、過去問や答練を一通り検討していれば気づくことは容易である。
共謀の範囲との関係での論理的整合性など、注意すべき点がないではない。
しかし、それほど難しくはないだろう。
このような問題の場合、注意すべきことは、不要な論点を捏造しないことである。
なお、甲の窃盗既遂後の強盗は、いわゆる居直り強盗とは少し異なる。
居直り強盗とは、一般的には、窃盗未遂段階での強盗をいうからだ。
ただ、強盗に窃盗が吸収されるかという罪数の問題が生じることは同じである。
的確に論点を摘示できているか、あてはめは丁寧かという点で差が付くだろう。
論証自体は多少荒っぽくても問題ないと思われる。

刑訴法について

設問1は、伝聞性の認定、再伝聞と伝聞例外のあてはめ。
設問2は、ガラス窓破壊と「必要な処分」、着手後の令状提示、現行犯逮捕の判断資料として事前の捜査資料を用いうるか(営利目的について)。
論点としてはこの程度であろう。
なお、本問の場合、特信文書(323条3号)にはあたらないと考えるべきだろう(最判昭31・3・27参照)。
従って、321条1項3号を検討することになる。
本問で注意することは、余計なことを書かないことだ。
例えば、本問の捜索差押許可状には「本件に関係する一切の文書・物件」といった概括的記載はない。
従って、令状の特定性などを論じる必要は無い。
また、「捜索差押手続の適法性については論じる必要はない」とある以上、違法収集証拠排除法則を書いてはいけない。
設問1はあてはめの丁寧さで、設問2は必要な論点を的確に論じているかで差が付くと思われる。

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