合格点230点
旧司法試験と同日の6月5日に新司法試験の短答式の結果が公表された。
以前の記事で、今年の短答の合格点も210点だろうと書いた。
科目別の足切りラインが満点の40%で固定されている。
同じように、全体の合格点も満点の60%で固定されているのではないか。
このように考えていた。
しかし、実際は230点。
予想は外れた。
もう一度、合格点の設定基準を考えてみる必要がある。
なぜ230点になったか
合格点を設定するとき、上位何%・何人を合格させるという考え方がある。
そうすると、合格点は毎年変動し、それも、キリの悪い数字になりやすい。
旧司法試験の択一論文や、新司法試験の論文はこのタイプである。他方、一定の点数を決めて、そこに達すれば合格させるという考え方もある。
これによると、合格点は比較的安定し、キリの良い数字になりやすい。
日商簿記がこのタイプだろう。今年の結果は、合格点が変化し、同時に、キリの良い数字になった。
これは、どのような基準によるのだろうか。
以下は、これまでの短答式の合格点等を年度別にまとめたものである。
年度
平均点
受験者数
短答合格者数
最終合格者数
210点以上
の割合230点以上
の割合累計80%を最初に
超える点数18
242.92
2087
1684
1009
80.6
56.7
210
19
247.6
4597
3479
1851
80.2
61.3
210
20
267.9
6238
4654
2100〜2500
87.8
76.15
224
平成18・19年度は偶然の一致があった。
上位80%を取ろうとすると、合格点がピッタリ210になっていた。
そのため、210という点数ではなく、8割合格させただけではないかとも思われた。
ただ、今年は8割合格だと、224点が合格点になるはずである。
そのため、今年度に関して、上位8割を取ったという説明は妥当しない。平均点に着目すると、過去と比べて大体20点くらい高い。
だから、合格点も20点上げてみた、という考え方もできなくはない。
しかし、それはちょっと短絡的過ぎる。
4対6の法則か
上記の表だけだと、平成18・19年度は共通性が多いが、今年度とは異質な部分が多い。
共通の基準を見出しにくい。
そこで、今度は別の視点で表を作成してみた。
下記は、年度別の全体不合格者、短答不合格者及び論文不合格者の表である。
なお、平成20年度については最終合格者数が未定である。
そこで、下限とされる2100と、上限とされる2500の二通りを算出している。
年度
全体不合格者数
短答不合格者数
論文不合格者数
18
1078
403(37.3%)
675(62.6%)
19
2746
1118(40.4%)
1628(59.2%)
20
(2100)4138
1584(38.2%)
2554(61.7%)
20
(2500)3738
1584(42.3%)
2154(57.6%)
短答対論文の比率にして、4:6の割合で落としているようにみえる。
厳密な一致ではないので、はっきりとしたことはわからない。
ただ、概ね4:6で不合格者を配分するような点数で、キリのよいものを選んでいる可能性はある。参考までに、旧司法試験で同じような数字をまとめてみた。
以下の表がそれである。
なお、平成20年については、最終合格者を180と仮定して算出している。8:2と言えなくはないが、さほど安定した数字にはなっていない。
最近の3年間でみると、むしろ9:1になってしまっている。
年度
全体不合格者数
択一不合格者数
論文不合格者数
元
20785
17288(83.1%)
3497(16.8%)
2
20469
17161(83.8%)
3308(16.1%)
3
19993
16033(80.1%)
3960(19.8%)
4
20797
16828(80.9%)
3969(19.0%)
5
16955
13157(77.5%)
3798(22.4%)
6
18649
14467(77.5%)
4182(22.4%)
7
20519
16418(80.0%)
4101(19.9%)
8
21153
16682(78.8%)
4471(21.1%)
9
22829
17911(78.4%)
4918(21.5%)
10
25905
20619(79.5%)
5286(20.4%)
11
28852
24173(83.7%)
4679(16.2%)
12
30703
25604(83.3%)
5099(16.6%)
13
33093
27353(82.6%)
5740(17.3%)
14
40215
35002(87.0%)
5213(12.9%)
15
44171
38386(86.9%)
5785(13.0%)
16
41831
35929(85.8%)
5902(14.1%)
17
37974
31791(83.7%)
6183(16.2%)
18
29706
26428(88.9%)
3278(11.0%)
19
23056
21087(91.4%)
1969(8.5%)
20
18021?
16596(92.0%?)
1425?(7.9%?)
従って、現段階では、よくわからないというのが結論だ。
点数で切るのは変わらないが、その要求水準を平均点を見ながら上下させるのか。
それとも、人数で切っているが、たまたまキリのいい数字になったのか。
人数で切りつつ、その前後のキリのいい数字を設定しているのか。
来年以降の合格点に注目したい。