平成20年度旧司法試験論文民訴法第1問参考答案

第1.まず、口頭弁論に適用される諸原則について述べる。
1.公開主義
 訴訟の審理及び裁判は、国民一般が傍聴しうる状態で行わなければならないことをいう。手続公正の担保及び国民の司法手続に対する信頼確保の趣旨である。
 憲法82条1項は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と規定しており、民訴法は、口頭弁論の公開の規定に違反したことにつき、絶対的上告理由としている(312条2項5号)。
2.双方審尋主義
 主張の機会は当事者双方に平等に与えなければならないことをいう。平等原則(憲法14条1項)及び裁判の公平の要請に基づくものである。
 当事者の一方の死亡等による訴訟手続中断の規定(124条1項)や、代理権欠缺等が絶対的上告理由(312条2項4号)及び再審事由(338条1項3号)とされていることは、この現われといえる。
3.口頭主義
 弁論及び証拠調べ等の訴訟行為は、口頭で行わなければならないことをいう。口頭による陳述は印象が新鮮で、争点及び事案の真相をつかみやすく、不明確な部分をその場で発問してただすことができる長所がある反面、脱落が生じやすく、記憶や保存に難点があることから、書面による補完が必要である。
4.直接主義
 判決は、口頭弁論に関与した裁判官がしなければならないことをいう(249条1項)。口頭弁論に関与した裁判官が最も当該事件について詳細を把握しているから、判決をするに適しているからである。
 もっとも、限られた裁判官の人員の下では、厳格にこれを貫くことは困難である。そのため、弁論の更新(同条2項)や受命裁判官による証拠調べ(185条)など、一定の後退がみられる。ただし、証人尋問及び当事者尋問においては、供述態度の観察が重要であるため、直接主義に配慮がなされている(249条3項、195条、210条)。
5.適時提出主義
 攻撃防御方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出されなければならないことをいう(156条)。
 提出時期を定めなければ、提出遅延による訴訟の引き延ばしのおそれがある反面、提出時期を厳格に区切ることは仮定的主張を誘発してかえって訴訟を遅延させるため、両者の調和を図ったものである。
 かかる観点から、時機に後れた攻撃防御方法については、却下の対象となる(157条1項)。
第2.以上を踏まえ、弁論準備手続の特徴及びその終結の効果を論ずる。
1.弁論準備手続とは、法廷外において当事者対席の下、争点及び証拠の整理を行う手続をいう(168条)。準備的口頭弁論(164条)と異なり、口頭弁論手続ではない。従って、口頭弁論に適用される諸原則がそのまま適用されるわけではない。
2.もっとも、準備手続においても、当事者双方の主張の機会が平等であることは必要である。また、口頭での相互の意見交換は、整理の効率を向上させる。すなわち、双方審尋主義、口頭主義の趣旨は、弁論準備手続にも妥当する。
 そのため、当事者双方の立会いが原則とされる(169条1項)。また、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によることができる(170条3項本文、4項)。しかし、その場合でも当事者の一方の出頭を必要としている(同項ただし書)。当事者の出頭負担軽減と双方審尋主義・口頭主義との調和を図るものである。
 なお、口頭主義との関係において、口頭弁論の場合(160条、161条)と同様に、調書及び準備書面(規則88条、法170条1項)の活用による書面主義の補完がある。
3.他方、争点及び証拠の整理は柔軟かつ円滑に行わなければならない。公開主義の徹底は、かえってこれを阻害する。他方、完全に密室となると、公正さの担保を欠く。そこで、一般の傍聴は許されず、裁判所が相当と認める者の傍聴が許される(関係者公開、169条2項)。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認められる場合を除き、傍聴を許さなければならない(同項ただし書)。
4.また、直接主義の趣旨からは、判決をする裁判官は整理手続にも関与した方がよい。しかし、それは訴訟経済上困難であるため、弁論準備手続は、受命裁判官が行うことができるとされる(171条1項)。同条2項かっこ書は、「裁判」を除くのみであるから、受命裁判官は文書の証拠調べをすることができる。
 もっとも、弁論準備手続においては証人尋問はなしえないこと(170条2項)、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述することとされている(173条)こと等、直接主義に一定の配慮がなされている。
5.そして、弁論準備手続が終了した場合、その後における攻撃防御方法の提出には、相手方の求めに応じて弁論準備手続の終了前に提出できなかった理由を説明しなければならない(174条・167条)。これは、適時提出主義の趣旨に基づくものであり、説明義務を十分に果たせなかった場合には、時機に後れた攻撃防御方法として却下の対象となりうる。

以上

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