「司法試験平成19年行政法裁判例集(上)」
を出版しました

でじたる書房より、司法試験平成19年行政法裁判例集(上)を出版しました。
価格は税込で315円です。

平成19年の1月から6月までの行政法裁判例のうち、新司法試験の論文式試験において出題され得る論点を含むものを収録しました。
新司法試験論文式の行政法では、直近の裁判例を素材にしたと思われる問題が出題されています。
従って、事前に直近の裁判例をチェックしておくことにより、本試験で検討すべき事項を素早く発見できる可能性があります。
また、そのようなヤマ当て的な目的以外でも、抽象的になりがちな行政法を具体的に理解するための教材として価値があると思います。
学説が錯綜している問題点や、基本書等で詳しく書かれていない条文などについて、裁判例がどのように解釈をし、事実に対してあてはめをしているのか。
そういう部分を確認するために、実際の裁判例を読むことはとても役に立ちます。
ただ、生の裁判例自体は非常に量が膨大で、自分で読みこなすのは大変です。
本書では新司法試験に直結する部分に絞ってコンパクトに抜粋しました。
また、判旨のポイント部分には下線を付し、時間がないときには下線部を読み流すだけで、大体のイメージはつかめるよう工夫をしています。
収録した裁判例の数は25、総ページ数は75ページです。
印刷に便利なPDF形式となっています。
本書が行政法学習の役に立てば幸いです。

以下は、本書の一部抜粋です。

●東京地裁判決平成19年01月16日
【事案】
 被告が株式会社P1(以下「P1」という。)に対して、@平成17年7月20日付けで別紙物件目録記載の建築物(以下、下記AないしCによる変更の前後を問わず「本件建築物」という。)についてした建築基準法6条の2第1項に基づく確認の処分(以下「本件確認処分」という。)、A同年9月30日付けで本件確認処分に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本件変更処分1」という。)、B同年11月16日付けで本件変更処分1に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本件変更処分2」という。)及びC同18年4月5日付けで本件変更処分2に係る計画の変更についてした同項に基づく確認の処分(以下「本件変更処分3」といい、上記A及びBの各処分と併せて「本件各変更処分」という。)のうち、本件各変更処分について、原告らが、被告に対し、同法6条1項にいう建築基準法令の規定に違反する違法事由があるなどと主張して、その取消しを求める事案。なお、本件変更処分1及び本件変更処分2の取消しを求める事件を「甲事件」、本件変更処分3の取消しを求める事件を「乙事件」という。
 原告らは、平成17年8月5日の時点で本件確認処分について東京都建築審査会に審査請求をしている(以下「本件審査請求」という。)が、本件各変更処分については審査請求をしていない。

【判旨】
 建築基準法96条は、指定確認検査機関の処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができないと定めているところ、原告らは、本件各変更処分についての審査請求をすることなく、甲事件及び乙事件の各訴えを提起した
 そこで、上記各訴えの提起について、「その他裁決を経ないことにつき正当な理由がある」(行訴法8条2項3号)か否かを検討する。
 まず、建築基準法6条1項、6条の2第1項は、建築主事又は指定確認検査機関(以下「建築主事等」という。)による確認を受けた建築物の計画の変更をして建築物を建築しようとする場合、建築主は、変更に係る計画について建築主事等の確認を受けなければならないと規定するところ、建築確認変更処分は、既にされた建築確認処分を前提とするものではあるが、建築主事等としては、建築確認変更処分をするに当たり、既にされた建築確認処分が建築基準法令の規定等に適合するものであることを所与の前提として、変更に係る部分についてだけ、建築基準法令の規定等に適合するか否かを判断するものではなく、変更に係る部分及びその余の部分の全体につき、改めて建築基準法令の規定等に適合するか否かを判断し、適合すると判断した場合に既にされた建築確認処分を変更することになるのであるから、新たな行政処分である建築確認変更処分がされると、これにより既にされていた建築確認処分は取り消され、消滅することになると解するのが相当である。
 したがって、本件では、@本件変更処分1により本件確認処分は取り消されて消滅し、A本件変更処分2により本件変更処分1は取り消されて消滅し、B本件変更処分3により本件変更処分2は取り消されて消滅したことになる。
 このように、本件確認処分と本件各変更処分とはそれぞれが別個の行政処分ではあるが、本件確認処分から本件変更処分3に至るまでには、おおむね別紙図面2の1ないし6記載の計画の変更があったものの、原告らが本件審査請求において主張した本件確認処分の違法事由は、本件訴訟において原告らが主張する本件各変更処分の違法事由と同旨のものである。
 そうすると、東京都建築審査会としては、本件審査請求の手続中において、原告らが主張した違法事由について審査をする機会が十分にあったのであり、実際、同審査会は、これらの違法事由が存在しないと判断した上で、職権により、本件確認処分が世田谷区斜面地条例に違反すると判断して、本件確認処分を取り消したものである(なお、上記で述べた建築確認変更処分の性質に照らすと、本件確認処分は本件裁決がされる前に本件変更処分1により取り消されていたのであるから、客観的に見れば、本件審査請求は、その対象を欠くこととなって、却下されるべきものであった。)。
 したがって、本件各変更処分について、原告らが本件訴訟において主張する違法事由を改めて東京都建築審査委員会に審査させる必要性は乏しいものというべきであり、さらに、本件裁決の理由に照らせば、原告らが上記違法事由を主張して改めて本件各変更処分につき審査請求をしたとしても、同審査会により、その違法事由の主張が採用されることを期待することは困難であったということができる(なお、本件裁決において本件確認処分の取消事由となった世田谷区斜面地条例に違反する部分は、本件変更処分2により是正されている。)。
 これらの事情に加えて、本件審査請求については、平成17年10月17日に公開による口頭審査が行われて、被告及びP1の各代理人がこれに出頭しており、また、被告は同年11月14日付けの弁明書を東京都建築審査会に提出したことが認められるにもかかわらず、少なくとも本件変更申請1及び本件変更処分1並びに本件変更申請2があった事実が同審査会及び原告らを含む審査請求人に知らされたことをうかがわせる証拠はないことなどの事情を総合考慮すれば、原告らにおいて、本件各変更処分につき審査請求をせずに、甲事件及び乙事件の各訴えを提起したことについて、行訴法8条2項3号所定の「正当な理由」があると認めるのが相当である。


●大阪地裁判決平成19年01月30日
【事案】
 本件は、原告が、近畿経済産業局長に対して、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)3条に基づき、エネルギーの使用の合理化に関する法律(平成17年法律第93号による改正前のもの。以下「省エネ法」という。)11条に基づき各事業者から提出された定期報告書の開示請求をしたところ、同局長がその一部につき情報公開法5条2号所定の不開示情報に該当するとして不開示とする処分をしたため、原告が、上記一部不開示決定処分の一部の取消しを求めるとともに、同部分につき開示処分の義務付けを求めている抗告訴訟である。

【判旨】
 情報公開法は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とするものであり(1条)、何人も、同法の定めるところにより、行政機関の長に対して、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができ(3条)、行政機関の長は、当該行政文書に同法5条各号所定の情報が記録されている場合を除き、当該行政文書を開示しなければならない(同条柱書)。
 同条2号イは、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報のうち、公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを不開示情報と定めているが、情報公開法の立法趣旨が上記のとおり政府の説明責任を全うさせるところにあり、開示請求権者を限定していないのもその趣旨と解されること、行政文書は開示されるのが原則であり、一定の事由に該当しなければ不開示とすることができないとされていることに照らすと、利益侵害情報として不開示情報に当たるといえるためには、主観的に他人に知られたくない情報であるというだけでは足りず、当該情報を開示することにより、当該事業者の権利や、公正な競争関係における地位、ノウハウ、信用等の利益を害するおそれが客観的に認められることが必要であり、上記のおそれが存在するといえるためには、単に事業者の利益が侵害され得るという抽象的な可能性が認められるだけでは足りず、法的保護に値する程度の蓋然性をもって利益侵害が生じ得ると認められることが必要と解するのが相当である。
 また、行政文書に記載された情報には様々な類型があり、当該情報が関係する事業者にも様々な種類、業態、規模、商圏や取引態様等を有する者がある。そして、情報の類型によっては、あらゆる事業者にとってその公開がその正当な利益を侵害することとなるものがある一方、当該事業者の個性に照らして、公開されることでその正当な利益を侵害すると初めて判断し得る情報も存在するのであり、そのような場合は当該事業者の個別的な事情も検討することが必要である。このことは、情報公開法5条2号イが「当該法人又は当該個人」の正当な利益を害するおそれのある情報を不開示情報と定めていることからも窺われる。 

戻る