平成19年度新司法試験短答式公法系
第31〜40問解説

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【第31問】

アについて

正しい(行政代執行法3条1項)。

行政代執行法3条1項 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。

イについて

誤り(行政代執行法2条、茨木市庁舎事件大阪高決)。
営業を停止する義務は、不作為義務である。
従って、行政代執行法2条の「他人が代つてなすことのできる行為」(代替的作為義務)にあたらない。

行政代執行法2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

大阪高決昭40・10・5(茨木市庁舎事件)
 「行政代執行により履行の確保される行政上の義務は、いわゆる「為す義務」たる作為義務のうち代替的なものに限られる。」

ウについて

正しい(行政代執行法5条、6条1項)。

行政代執行法
5条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。
6条1項 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。

エについて

誤り(行政代執行法2条かっこ書)。

行政代執行法2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

【第32問】

アについて

正しい(茨木市庁舎事件大阪高決)。
行政代執行の戒告は事実行為ではあるが、処分性が認められると解されている。

大阪高決昭40・10・5(茨木市庁舎事件)
 「戒告は代執行そのものではなく、またこれによつて新な義務ないし拘束を課する行政処分ではないが、代執行の前提要件として行政代執行手続の一環をなすとともに代執行の行われることをほぼ確実に示す表示でもある。そして代執行の段階に入れば多くの場合直ちに執行は終了し、救済の実を挙げえない点よりすれば、戒告は後に続く代執行と一体的な行為であり、公権力の行使にあたるものとして、これに対する抗告訴訟を許すべきである。」

イについて

誤り。
代執行の取消しの訴えの利益は、代執行の終了とともに失われる。
代執行による損害の金銭的賠償については、国家賠償をなしうるからである。

ウについて

誤り(世田谷区砧町日照妨害事件東京高判)。
確かに、代執行をするかどうかについては広範な裁量が認められる。
しかし、裁量権の行使が著しく合理性を欠く場合には違法とされる余地がある。
従って、違法と判断される余地は無いとする点が誤っている。

東京高判昭42・10・26(世田谷区砧町日照妨害事件)
 「控訴人は、被控訴人甲の違反増築により日照通風の妨害をうけているが、特定行政庁たる東京都知事は右除却命令の実効を期するため、行政代執行法による代執行の措置をとらなければならないのに、これをしなかつたから、控訴人に対し不作為による不法行為責任を負うべきであるという。しかし・・・、元来行政上の強制執行は国民の私権に深くかかわりを持つものであるから、たとえ(これをなすべき)法律上の要件を具備したからといつて、行政庁が常に必ずこれをなすべき義務と責任を負うものということはできない。けだし、この場合は法規によつて保護さるべき公、私法上の法益と執行によつて不利益を受くべき特定人の法益とが対立しているのであり、その大小、軽重および強制力行使の時期あるいは他に対立解消の方法がないかどうか等は個々の条件につき具体的に考慮、検討することを要し、しかもその考慮にあたつては、関係法規の正確、適切な解釈、運用が不可欠であることは当然ながら、更にその時点における行政全般の時間的および場所的要請を無視することができず、その限りにおいて当該行政庁の合理的判断に基づく自由裁量に委ねることが妥当と考えられるからである。
 みぎのように強制力の行使は元来当該行政庁の自由裁量に委ねることを本旨とすべく、その自由裁量が著しく合理性を欠くと考えられるときに初めて裁判による司法的審査の対象とされるのであつて、この場合その対象が作為たると不作為たるとを問わないのはいうまでもない。本件の場合は東京都知事の不作為が右のような観点において違法であるか否かが検討さるべきものであるが(この意味において都知事が控訴人に対して私法上の作為義務を負うか否かは重要でない。何となれば、控訴人の受けた損害と都知事の不作為との間に相当の因果関係があるか否か、換言すれば、都知事の不作為が違法であつて、被控訴人甲の作為と相まつて故なく控訴人の権利を侵害し控訴人に対し私法上の損害を賠償すべき責任があるか否かの問題であり、その違法が公法上のものか私法上のものかは問うところではないからである)、本件にあらわれたすべての訴訟資料を審査しても、特に都知事が被控訴人甲に対して代執行を行わなかつたことが著しく合理性を欠くものとは断定するに困難である。東京都およびその周辺において違法建築が多発し、その防止、是正のための行政的処置が実効を疑われるに至つていることは当裁判所に顕著であるが、その間の消息を詮索することはひとり行政代執行法の解釈運用についての都知事もしくは担当職員の作為、不作為の法律的評価をもつては足れりとせず、広く都政全般の状況および展望に深くかかわることであつて、司法的審査の領域に属しないといわざるを得ない」

以上から、正解は4となる。

【第33問】

アについて

適切でない(情報公開法2条2項)。
多くの情報公開条例が決済又は供覧の手続きが終了した文書に対象を限定しているという点は正しい。
しかし、情報公開法は、公開の対象となる「行政文書」にそのような限定を加えていない。

情報公開法2条2項 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  政令で定める公文書館その他の機関において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの

東京高判平19・2・14
 「情報公開法は、開示の対象となる「行政文書」の範囲について、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする(情報公開法1条)という情報公開法の目的に照らし必要十分なものとするため、地方公共団体の情報公開条例が要求していることが多いとされる決裁、供覧等の手続の終了を要件とせず、業務上の必要性に基づき保有している文書であるかどうかの実質的な要件をもって規定するものとしている」

イについて

適切でない(情報公開法3条「何人も」)。

ウについて

適切でない(情報公開法4条1項)。
開示の利益等、開示の理由・目的を示すことは要件とされていない。

情報公開法4条1項 前条の規定による開示の請求(以下「開示請求」という。)は、次に掲げる事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を行政機関の長に提出してしなければならない。
一  開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名
二  行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項

エについて

適切でない(情報公開法2条1項各号、26条)。
地方公共団体は情報公開法上の「行政機関」とはされておらず、個別に必要な施策を策定・実施するよう努力するものとされている。

情報公開法
2条1項 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。
一  法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
二  内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 及び第二項 に規定する機関(これらの機関のうち第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
三  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
四  内閣府設置法第三十九条 及び第五十五条 並びに宮内庁法 (昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項 の機関並びに内閣府設置法第四十条 及び第五十六条 (宮内庁法第十八条第一項 において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
五  国家行政組織法第八条の二 の施設等機関及び同法第八条の三 の特別の機関で、政令で定めるもの
六  会計検査院
26条 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。

オについて

適切である。
法律に基づいて行う行政処分に関する文書についても、情報公開条例は適用される。
開示対象となる公文書又は行政文書の規定において、特別の除外がないからである。
これに対し、行政手続条例は、法律に基づいて行う行政処分には適用されない。
行政手続条例は条例及び規則に基づく処分に適用され、法令に基づく処分には行手法が適用されるからである(行手法3条3項かっこ書)。
例として下記に東京都の場合を掲げる。

東京都情報公開条例2条 この条例において「実施機関」とは、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、固定資産評価審査委員会、公営企業管理者、警視総監及び消防総監並びに都が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)をいう。
2 この条例において「公文書」とは、実施機関の職員(都が設立した地方独立行政法人の役員を含む。以下同じ。)が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 官報、公報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二 都の公文書館その他東京都規則で定める都の機関等において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの

東京都行政手続条例2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 条例等 条例及び規則(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第二項に規定する規程を含む。以下同じ。)をいう。
二 処分 条例等に基づく行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
三 申請 条例等に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
四 不利益処分 行政庁が、条例等に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために必要とされている手続としての処分
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

行手法3条3項 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。

【第34問】

アについて

誤り(最判昭55・11・25)。
判例は当該処分が前歴となって道交法上不利益を受けるおそれがある場合まで、訴えの利益が失われるとはしていない。

最判昭55・11・25
 「被上告人は、本件原処分の日から満一年間、無違反・無処分で経過した、というのである。右事実によると本件原処分の効果は右処分の日一日の期間の経過によりなくなつたものであり、また、本件原処分の日から一年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなつたことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行訴法九条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しないというべきである」

イについて

誤り(最判昭40・8・2)。
判例は取消訴訟継続中に有効期間が経過しても訴えの利益は失われないとする。

最判昭40・8・2
 「被上告人が道路交通法(以下道交法と称する。)一〇一条の規定に従い、免許証の有効期間の更新を受けるために、その期間の満了する日の一月前から当該期間の満了の日までの間に上告人に対して適性検査を求めなかつたのは、取消判決が確定しない以上、本件免許取消処分はなお効力を有し、右更新の手続をとりがたかつたためと認められる。したがつて、その免許取消処分が違法で取り消されるべきものであるかぎり、右更新のできなかつたのは、これを上告人の違法処分に基づくものということができる。そして右道交法一〇一条が、免許証有効期間満了にあたり適性検査を行ない、その結果自動車等の運転に支障がないと認められる者については免許証の有効期間を更新して免許を存続させることにし、同法一〇五条が、免許証の有効期間の更新を受けなかつたときは免許は効力を失なうものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、その運転適性を維持しているかどうかについての定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、これら規定は、本件のように免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によつて争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。むしろかような取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至つたものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする」

ウについて

正しい(最判昭55・11・25)。

最判昭55・11・25
 「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもつて被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない

【第35問】

アについて

誤り(行訴法9条2項、最大判平17・12・7、小田急線高架訴訟)。

最大判平17・12・7
 「処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌(すべきものである)」

イについて

正しい(最大判平17・12・7、小田急線高架訴訟)。

最大判平17・12・7
 「当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである」

ウについて

正しい(最大判平17・12・7、小田急線高架訴訟)。

最大判平17・12・7
 「都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものといわなければならない」

以上から正解は5となる。

【第36問】

アについて

誤り。
取消判決の拘束力(行訴法33条1項)により判決の趣旨に従うべき実体法上の義務を負う。
もっとも、理由不備により取消された処分については、他に処分の理由が無いとして処分をしないことも、判決の趣旨に沿うものといえる。
よって、同一内容の処分をしなければならないとする本肢は誤りである。

イについて

正しい。
取消判決の拘束力には反復禁止効がある。
もっとも、これは同一理由で同一内容の処分をすることを禁じるのであるから、異なる理由で同じ処分をすることは可能である。

ウについて

正しい。
取消判決の拘束力により、行政庁は判決の趣旨に従うべき実体法上の義務を負う。
そして、先行処分が取り消されれば、行政庁は後行処分を取り消す義務を負う。
滞納処分は課税処分の続行手続の性質を有する(横浜地決平成19・4・25参照)。
従って、課税処分が取り消された場合、行政庁は滞納処分を続行してはならない。

横浜地決平19・4・25
 「もともと課税処分と滞納処分とは別個の処分ではあるが、国税徴収法47条にいう財産の差押えは国税が完納されないときに行われるものであり、同法94条にいう公売は差押財産を換価して滞納国税に充当するために行われるものであるから、滞納処分は課税処分の続行手続としての性質を帯びたものといえる。してみれば、本案訴訟として課税処分の取消訴訟を提起し、当該課税処分に係る国税の滞納を原因とする滞納処分の続行の停止を求めることは、行訴法25条2項にいう処分に係る「手続の続行の停止」を求めるものとみることが可能である。したがって、本案訴訟として課税処分の取消訴訟を提起していれば、当該課税処分に係る国税の滞納を原因とする滞納処分の続行の停止を求めることは許されるものと解される」

以上から正解は5となる。

【第37問】

アについて

誤り(行訴法10条1項)。

イについて

誤り(最判昭62・4・21、米子鉄道郵便局職員停職事件)。
判例は原処分が当初から修正裁決の内容であったものと考えるので、原処分の取消しを求めることになる。

最判昭62・4・21
 「懲戒処分につき人事院の修正裁決があつた場合に、それにより懲戒権者の行つた懲戒処分(以下「原処分」という。)が一体として取り消されて消滅し、人事院において新たな内容の懲戒処分をしたものと解するのは相当でなく、修正裁決は、原処分を行つた懲戒権者の懲戒権の発動に関する意思決定を承認し、これに基づく原処分の存在を前提としたうえで、原処分の法律効果の内容を一定の限度のものに変更する効果を生ぜしめるにすぎないものであり、これにより、原処分は、当初から修正裁決による修正どおりの法律効果を伴う懲戒処分として存在していたものとみなされることになるものと解すべきである」

ウについて

正しい(最判昭52・12・20、神戸税関事件)。

最判昭52・12・20
 「公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、懇意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである」

エについて

確かに、違法判断の基準時は原則として処分時である(最判昭27・1・25)。
もっとも、原子炉設置許可処分の違法性判断においては、現在の科学技術水準を基準としている(最判平4・10・29、伊方原発訴訟最判平17・5・30、もんじゅ訴訟)。
従って、専門技術的知見も処分当時のものに限定されるとする本肢は誤りということになる。

最判昭27・1・25
 「行政処分の取消又は変更を求める訴において裁判所の判断すべきことは係争の行政処分が違法に行われたどうかの点である。行政処分の行われた後法律が改正されたからと言つて、行政庁は改正法律によつて行政処分をしたのではないから裁判所が改正後の法律によつて行政処分の当否を判断することはできない

最判平4・10・29
 「原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである」

最判平17・5・30
 「規制法の規制の構造に照らすと,原子炉設置の許可の段階の安全審査においては,当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく,その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁参照)。そして,規制法24条2項の趣旨が,同条1項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号所定の基準の適合性について,各専門分野の学識経験者等を擁する原子力安全委員会の科学的,専門技術的知見に基づく意見を十分に尊重して行う主務大臣の合理的な判断にゆだねるものであることにかんがみると,どのような事項が原子炉設置の許可の段階における安全審査の対象となるべき当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点も,上記の基準の適合性に関する判断を構成するものとして,同様に原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行う主務大臣の合理的な判断にゆだねられていると解される。
 また,規制法は,上記基準の適合性について,上記のとおり原子力安全委員会の意見を十分に尊重して行う主務大臣の合理的な判断にゆだねていると解されるから,現在の科学技術水準に照らし,原子力安全委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が上記の具体的審査基準に適合するとした原子力安全委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,主務大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,主務大臣の上記判断に不合理な点があるものとして,同判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解される(前記第一小法廷判決参照)」

【第38問】

アについて

誤り。
非申請型の不作為違法確認の訴のような行訴法上列挙されていない無名抗告訴訟も、一定の要件で認められる。

広島地判平19・10・26
 「抗告訴訟については,行訴法3条2項以下に類型が個別的に法定されているが,同条1項が行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟を抗告訴訟として包括的に定義していることからすると,本件違法確認の訴えがいわゆる無名抗告訴訟として許容される可能性が,完全に否定されるものとは解されない
 もっとも,行訴法は,公権力の行使につき,原則として行政庁に一次的判断権を留保しつつ,公権力の行使によって生じている違法な状態を排除する手段として抗告訴訟を位置付けているのであるから,本件違法確認の訴えが無名抗告訴訟として許容されるためには,行政庁の作為義務が法令上一義的に明確で,行政庁の一次的判断権を留保する必要性の認められない場合であって,行政庁の不作為によって国民に重大な損害ないし危険が切迫しており,かつ,他の適切な救済方法がないといった事情があることを訴訟要件として満たす必要があると解するのが相当である」

イについて

正しい(行訴法4条後段)。
公務員の俸給請求及び国籍確認訴訟は、いずれも実質的当事者訴訟の典型例である。

行訴法4条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

ウについて

正しい(行訴法43条1項)。

行訴法43条1項 民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の取消しを求めるものについては、第九条及び第十条第一項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。

エについて

正しい(行訴法6条、42条)。

行訴法
6条 この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。
42条 民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。

【第39問】

アについて

正しい(行訴法25条2項本文、行審法35条2項)。

行訴法25条2項本文 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。
行審法34条2項 処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。

イについて

正しい(行訴法44条)。
本条は民事訴訟を本案とする仮処分についても適用がある(新潟地決昭48・8・4)。

行訴法44条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法 (平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。

ウについて

正しい。
申請型の仮の義務付けの申立てをするためには、義務付けの訴えと不許可処分の取消訴訟又は無効等確認の訴えの併合提起を要する(行訴法37条の5第1項、37条の3第3項2号)。
本肢では取消訴訟及び義務付け訴訟の提起がなされているから、仮の義務付けの申立てをすることができる。
なお、町立幼稚園への就園不許可処分について仮の義務付けを認容した例として徳島地決平17・6・7がある。

行訴法
37条の5第1項 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
37条の3第3項 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。
一  第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え
二  第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え

エについて

誤り(行訴法27条1項後段)。

行訴法27条1項 第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。執行停止の決定があつた後においても、同様とする

【第40問】

アについて

正しい(行審法4条8号)。
行訴法には本肢のような除外規定はない。
なお、行手法には、行審法と同様の除外規定がある。

行審法4条 行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
1号から7号略
8号 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対して行われる処分
9号以下略

行手法3条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章までの規定は、適用しない。
1号から6号略
7号 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導
8号以下略

イについて

正しい。
行政不服審査においては不当性を理由として処分を取り消すことができる(行審法1条1項、40条6項、43条2項、55条参照)。
他方、行政事件訴訟において取消しうるのは違法を理由とする場合であり、不当性を直接の理由とすることはできない(行訴法10条、31条1項2項、最判昭41・2・8参照)。
権力分立の現われである。

行審法
1条1項 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
40条6項 処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。
43条2項 申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され、又は申請を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消されたときは、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。
55条 審査請求を却下し又は棄却した裁決が違法又は不当である場合においても、当該裁決に係る処分が違法又は不当でないときは、再審査庁は、当該再審査請求を棄却する。

行訴法
10条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
2  処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
31条 取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
2  裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもつて、処分又は裁決が違法であることを宣言することができる。
3項略

最判昭41・2・8
 「司法権の固有の内容として裁判所が審判しうる対象は、裁判所法三条にいう「法律上の争訟」に限られ、いわゆる法律上の争訟とは、「法令を適用することによつて解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいう」ものと解される(昭和二九年二月一一日第一小法廷判決、民集八巻二号四一九頁参照)。従つて、法令の適用によつて解決するに適さない単なる政治的または経済的問題や技術上または学術上に関する争は、裁判所の裁判を受けうべき事柄ではないのである。国家試験における合格、不合格の判定も学問または技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであつて、その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争を解決調整できるものとはいえない

ウについて

誤り(行訴法7条、民訴法304条、313条、行審法40条5項、47条3項ただし書、4項ただし書、56条)。

行訴法7条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。
民訴法
304条 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。
313条 前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。
行審法
40条5項 前二項の場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、裁決で当該処分を変更し、又は処分庁に対し当該事実行為を変更すべきことを命ずるとともに裁決でその旨を宣言することもできる。ただし、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできない
47条
1項2項略
3項 処分(事実行為を除く。)についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、異議申立人の不利益に当該処分を変更することができず、また、当該処分が法令に基づく審議会その他の合議制の行政機関の答申に基づいてされたものであるときは、さらに当該行政機関に諮問し、その答申に基づかなければ、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更することができない。
4項 事実行為についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、当該事実行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更するとともに、決定で、その旨を宣言する。ただし、異議申立人の不利益に事実行為を変更することができない
5項 略
56条 第二節(第十四条第一項本文、第十五条第三項、第十八条から第二十条まで、第二十二条及び第二十三条を除く。)の規定は、再審査請求に準用する。

エについて

誤り(行審法14条1項ただし書、行訴法14条1項ただし書)。
取消訴訟の出訴期間についても例外が認められている。

行審法14条1項 審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定があつたことを知つた日の翌日から起算して三十日以内)に、しなければならない。ただし、天災その他審査請求をしなかつたことについてやむをえない理由があるときは、この限りでない
行訴法14条1項 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない

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