平成20年度新司法試験の結果について(3)

合格者年齢の推移

以下は、短答、論文それぞれの合格者の平均年齢とその差の推移である。

  短答合格者 論文合格者 短答−論文
平成18年度 29.92 28.87 1.05
平成19年度 30.16 29.20 0.96
平成20年度 30.36 28.98 1.38

今のところ、それ程大きな変化は無い。
論文合格者は短答合格者より1歳ほど若くなる傾向がある。
従って、出題・採点のどこかに若手が有利になる仕組みがある。
このことは、ある程度念頭に置いておくべきことである。

男女の合格率

以下は、男性、女性の合格率である。
受験者ベースの数字が見当たらないため、受験予定者ベース及び短答合格者ベースのものを算出した。

  対受験予定者 対短答合格者
男性 27.9% 44.0%
女性 24.1% 45.3%

短答合格者ベースの合格率は、女性の方が1.3%高い。
ただ、それほど大きな差ではない。
従って、論文式試験において、特に男女のどちらかに有利ということはなさそうだ。

他方、受験予定者ベースの合格率は、男性の方が3.8%高い。
そうすると、受験段階と短答段階で、男性が比率を落としているということになる。
すなわち、男性に受け控えが多かったか、短答で男性の方が多く落ちたか、その両方かである。
直感的には、男性の受け控えが多かった可能性が高いと思う。
受け控えをすれば、余計に一つ歳を取る。
このことについて、男性の方がより抵抗が少ないように感じるからである。

既修・未修、法学部・非法学部の合格率

以下は、既修・未修、法学部・非法学部の区別による合格率である。
合格率は受験予定者ベースで算出した。

  合格率
既修全体 38.8%
未修全体 17.1%
法学部全体 29.1%
非法学部全体 20.7%
既修法学部 39.2%
未修法学部 17.1%
既修非法学部 36.1%
未修非法学部 17.0%

既修と未修の合格率の差が大きい。
20%を超えている。
他方、法学部と非法学部の差は10%程度である。
これは昨年と同様の傾向である。
法学部卒かどうかよりも、既修か未修かということの方が重要な要素だということになる。

そして、未修法学部と未修非法学部を比較すると、ほとんど差が無い。
他方、既修法学部と既修非法学部を比較すると、若干既修法学部の方が高い。
このことから、以下のようなことが言える。
すなわち、未修者は法学部を卒業しようがしまいが、合格しにくい。
従って、いわゆる純粋未修か、そうでないかは、あまり関係が無い。
他方、既修者はそれだけで合格しやすいが、法学部卒はさらにやや有利である。
この要因として最も大きいのは、やはり既修者選抜試験の存在だろう。
それに加えて、ローに通う期間が一年長いことが、かえって未修者にとって不利に作用している可能性もある。

このように考えると、大学の学部選びにおいて、法学部を選択する必要性はさほど無いように思える。
しかし、既修者に占める法学部の割合を見ると、そうとはいえないことがわかる。
受験予定者のうち、既修法学部の人数は、3012人。
既修非法学部の人数は、わずか412人である。
既修者の8割以上が、法学部卒なのである。
すなわち、確かに既修者試験に受かってしまえば法学部卒かどうかはあまり関係ない。
しかし、その既修者試験に受かるためには、やはり法学部卒であった方がよい。
結局のところ、新司法試験を目指すのであれば、大学では法学部を選択する方が無難ということになる。

受験回数別合格率

以下は、受験回数別の合格率である。
受験予定者ベースで算出している。

  合格率
1回目 26.8%
2回目 27.1%
3回目 24.6%

3回目の合格率が不自然に下がっている。
これはおそらく、受け控えが増えたのであろう。
後が無いので、一年時間を置いて勉強したいと思う気持ちは理解しうる。

三振者の数

実際に3度目の受験をして受験資格を失った者の数について、法務省は公表していない。
そして、毎日、日経によると、受験資格を失った者は、172人であるという。
一方、読売によると、241人であるとされている。
情報が錯綜している。

毎日新聞WEB版9月11日20時9分配信記事

(以下引用)

 法務省の司法試験委員会は11日、法科大学院の修了者を対象とした3回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2065人(男性1501人、女性564人)。合格率は33.0%で初めて3割台に落ち込んだ。委員会が今年の目安とした2100〜2500人を下回り、合格者ゼロも3校に上った。また、新司法試験の受験資格は「法科大学院修了から5年で3回」と制限されており、172人が初めて受験資格を失った。

(引用終わり)

NIKKEI.NET9月12日2時21分配信記事

(以下引用)

 合格者数の平均年齢は28.9歳、最高齢は59歳。新試験は法科大学院修了から5年以内に3回という受験制限がある。今回、修了者の172人が計3回の新試験を不合格となり、受験資格を失った。

(引用終わり)

読売新聞WEB版9月12日配信記事

(以下引用)

 合格者増がこのままのペースでは、あと2年で目標の年間3000人に到達できるかどうか微妙。法科大学院修了生には5年間で3回しか司法試験を受験できない制限があり、今年不合格となって受験資格を失った人は241人に上った。「高い学費を払っても合格できない」として法科大学院を敬遠する空気が広がり、多様な人材の確保が難しくなる懸念もある。

(引用終わり)

受験回数3回目の受験予定者は487人おり、そのうち合格者は120人である。
従って、最大で367人が受験資格を失っている可能性がある。
受け控えをした人がいる場合、その数だけ受験資格を失う者の数が減ることになる。

ここで、ちょっとした試算をしてみたい。
合格者数、受験予定者数、受験者合格率、受験予定者合格率及び受験率との間には、以下のような関係がある。
なお、受験者合格率とは、受験者ベースの合格率、受験予定者合格率とは、受験予定者ベースの合格率、受験率とは、受験予定者に対する受験者の割合をいう。

(1)合格者数=受験者予定者数×受験率×受験者合格率
(2)合格者数=受験予定者数×受験予定者合格率

ここで、二つのアプローチから、今年の受験資格喪失者を推計してみる。

まず、一つ目のアプローチは、3回目に受験した者の受験者合格率が全体の受験者合格率と等しいという仮定を置く方法である。
全体の受験者ベースの合格率は、32.98%である。
そうすると、(1)の式にそれぞれの数字を代入することで、受験率を推計できる。

120=487×受験率×0.3298
受験率=120÷487÷0.3298≒74.71%

そうすると、3回目の受験者数は、

487×0.7471≒363人

そのうち合格者は120人であるから、受験資格喪失者の数は、

363−120=243人

ということになる。

もう一つのアプローチは、第3回であるがゆえに余計に受け控えた人数をX人と置く方法である。
そして、第1回と第2回の受験予定者合格率がほぼ27.0%と等しいことを利用して、受験者数を推測する。
受験予定者487人から余計に受け控えたX人を引くと、第3回目特有の受け控えを考慮しなくてよくなる。
そうすると、受験予定者合格率は、第1回目、第2回目の受験予定者合格率たる27.0%に等しくなるはずである。
これを(2)の式を利用して表現すると、以下のようになる。

120=(487−X)×0.27

上記式を変形して解く。

487−X=120÷0.27
X=487−120÷0.27≒42人

そうすると、487−42=445人が、第3回目特有の受け控えを除外した受験予定者数ということになる。
第3回目特有の要素を除外した受験予定者数については、全体の受験率から受験者数を推計することが可能である。
そして、全体の受験率は、81.2%であるから、これを利用して受験者数を推計すると、

445×0.812≒361人

そのうち合格者は120人であるから、受験資格喪失者の数は、

361−120=241人

ということになる。

上記の試算からは、読売の241人という数字の方が信憑性がありそうだ、と考えられる。

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