「司法試験平成18年行政法裁判例集(上)(下)」
を出版しました

でじたる書房より、司法試験平成18年行政法裁判例集(上)司法試験平成18年行政法裁判例集(下)を出版しました。
価格は、それぞれ税込315円です。

司法試験平成18年行政法裁判例集(上)は、平成18年1月から6月までの行政法裁判例のうち、新司法試験の論文式試験において出題され得る論点を含むものを収録しました。
収録した裁判例の数は33、総ページ数は115ページです。
司法試験平成18年行政法裁判例集(下)は、平成18年7月から12月までの行政法裁判例を同じく収録し、裁判例の数は28、総ページ数は84ページです。
いずれもPDF形式となっています。

本書の使い方ですが、条文を確認しながら、ざっと読み流すのが最も良いと思います。
下級審ですから、特に慎重に読み込んだり、記憶しようとする必要はありません。
判旨には下線を付し、ざっとその部分だけ読み流しても、イメージがつかめるようにしてあります。
通常の判例集では、学問上意義のある部分のみが抜粋され、当たり前の部分は省かれています。
しかし本書では、裁判例が当たり前に処理している部分も、試験に必要な限りで収録しています。
何度か読む流すうちに、どのような場面でどの条文・判例を使っているか。
当該条文・判例の意味をどのように解釈しているか。
このような点について裁判例の発想が自然と分かってくると思います。
行政法の裁判例は比較的丁寧に条文の趣旨を説明してくれていますので、各条文の理解にも役に立つでしょう。
また、中には何度も出てくる条文・判例もあります。
その場合、判で押したように同じような解釈論を展開し、あてはめをしています。
だんだん「またか」と思うようになれば、それは頭になじんできているということです。
これは、基本書を読んでも身に付かない部分です。
同時に、実務で繰り返し問題になっている論点を自然に知ることができます。
本書が、行政法の具体的イメージを体得するのに役立てばと思います。

以下は、それぞれの一部抜粋です。

司法試験平成18年行政法裁判例集(上)の一部抜粋

●大阪地裁判決決定平成18年01月13日

【事案】

 都市公園法6条1項に基づく占用の許可を受けないで都市公園内にブルーシート製テント、木製工作物等を設置し、これらを起居の場所とし、日常生活を営んでいる者が、市長に対し、都市公園法27条1項に基づく前記テント等の除去をしてはならない旨を求める差止めの訴えを本案とする同仮の差止めの申立てをした事案。

【判旨】

 行政事件訴訟法37条の5第2項は、差止めの訴えの提起があった場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることができる旨規定している。同項の規定の文言に加えて、同項の仮の差止めの制度は、差止めの訴えの本案判決の確定を待っていたのでは償うことのできない損害を生ずるおそれがある場合に迅速かつ実効的な権利利益の救済を可能にするため、一定の要件の下で、行政庁が当該処分をすることを事前に仮に差し止める仮の救済の制度として法定されたものである趣旨に照らすと、仮の差止めの申立ては、本案訴訟である差止めの訴えが適法な訴えとして提起されていることをその適法要件としていると解される。
 しかるところ、行政事件訴訟法は、差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができるものとし(3条7項、37条の4第1項)、ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでないと規定している(同項ただし書)。平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の改正により抗告訴訟の新たな訴訟類型として同法3条7項所定の差止めの訴えが定められた趣旨は、処分又は裁決がされた後に当該処分の取消しの訴えを提起し、当該処分又は裁決について同法25条に基づく執行停止を受けたとしても、それだけでは十分な権利利益の救済が得られない場合があることにかんがみ、処分又は裁決の取消しの訴えによる事後救済に加えて、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、事前の救済方法として、一定の要件の下で行政庁が当該処分又は裁決をすることを事前に差し止める訴訟類型を新たに法定することにより、国民の権利利益の救済の実効性を高めることにあるものと解される。そして、同法37条の4第1項が差止めの訴えは一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り提起することができるものと規定した趣旨は、差止めの訴えが、取消訴訟とは異なり、処分又は裁決がされる前に、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を裁判所が命ずることを求める事前救済のための訴訟類型であることにかんがみ、事前救済を認めるにふさわしい救済の必要性を差止めの訴えの適法要件として規定することにより、司法と行政の適切な役割分担を踏まえつつ行政に対する司法審査の機能を強化し国民の権利利益の実効的な救済を図ることにあると解される。これらの趣旨からすれば、同項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」とは、それを避けるために事前救済としての当該処分又は裁決をしてはならないことを命ずる方法による救済が必要な損害を生ずるおそれがある場合をいうものと解されるのであって、一定の処分又は裁決がされることにより損害を生ずるおそれがある場合であっても、当該損害がその処分又は裁決の取消しの訴えを提起して同法25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることができるような性質のものであるときは、同法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」には該当しないものと解すべきである。
 ところで、都市公園法6条1項は、都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない旨規定し、同条2項は、同条1項の許可を受けようとする者は、占用の目的、占用の期間、占用の場所、工作物その他の物件又は施設の構造その他条例(国の設置に係る都市公園にあっては、国土交通省令)で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出しなければならない旨規定している。また、同法27条1項1号は、公園管理者は、同法(同法26条を除く。以下同じ。)若しくは同法に基づく政令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反している者に対して、同法の規定によってした許可を取り消し、その効力を停止し、若しくはその条件を変更し、又は行為若しくは工事の中止、都市公園に存する工作物その他の物件若しくは施設(工作物等)の改築、移転若しくは除却、当該工作物等により生ずべき損害を予防するため必要な施設をすること、若しくは都市公園を原状に回復することを命ずることができる旨規定し、同条3項は、同条1項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないときは、公園管理者は、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができ、この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、公園管理者又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない旨規定している。これらによれば、同法6条1項に基づく許可を受けずに都市公園内に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設(工作物等)を設けて公園を占用する者に対しては、公園管理者は、同法27条1項に基づき、当該工作物等の除却を命ずる(除却命令)ことができる。そして、除却命令を受けた者が当該工作物等の除却を履行しない場合、公園管理者は、行政代執行法の定める手続により、自ら義務者のすべき行為をし、又は第三者にこれをさせ、その費用を義務者から徴収することができる(除却命令により命じられた行為が同法2条にいう他人が代わってすることのできる行為であることは明らかである。)。
 そうすると、申立人らに対して本件各通知に記載された各除却命令(本件各除却命令)がされた場合、申立人らは、本件各除却命令に係るテントや木製工作物等(本件各物件)を除却する義務を負い、申立人らが当該義務を履行しない場合、申立人らに対して行政代執行法の定める手続により本件各物件の除却を行うことができることになる。
 しかしながら、以上述べたところからすれば、公園管理者が都市公園法27条1項に基づき同項1号に該当する者に対して工作物等の除却を命ずる除却命令は、当該命令を受ける者に対して当該工作物等を除却すべき行政上の義務を賦課することを法的効果とする処分にすぎず、その内容、性質からして、除却命令によりその執行を待たずに直ちにこれを受ける者に何らかの具体的な損害が発生するとは考え難い。そして、除却命令が執行されることによりこれを受けた者に損害を生ずるおそれがあるとしても、そのような損害は、その処分又は裁決の取消しの訴えを提起して行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることができるような性質のものであるということができるから、同法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」には該当しないものというべきである。
 この点、申立人らは、本件各除却命令によって居住の場所と生計の維持の道具を奪われ、直ちにホームレス状態になり、また、唯一の生活手段を失うことによってホームレスになる危険が生ずるなどと主張するが、申立人らが主張するような損害は、いずれも、本件各除却命令が執行されて初めて生ずる性質のものというべきであって、一件記録に照らしても、他に本件各除却命令によりその執行を待たずに直ちに申立人らに何らかの具体的な損害を生ずるおそれがあると認めることはできない
 以上述べたところによれば、本案訴訟としての本件差止めの訴えは、行政事件訴訟法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」の要件を欠く不適法な訴えというほかないから、本件仮の差止めの申立ては、本案訴訟としての適法な差止めの訴えの提起を欠くものとして、その余の点について判断するまでもなく、不適法として、却下を免れない

 

司法試験平成18年行政法裁判例集(下)の一部抜粋

●東京地裁判決平成18年09月01日

【事案】

 原告が、法務大臣に対し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)4条1項に基づき、平成17年度司法試験第2次試験口述試験に関する文書の開示を請求したところ、当該請求に係る文書のうち一部のものについては開示決定を受けたものの、その余のものについては行政文書として作成し、又は取得しておらず、保有していないことを理由として不開示決定を受けたため、これを不服として、当該不開示決定の取消しを求める事案。

【判旨】

 原告が開示を求めている文書である本件問答案が情報公開法2条2項にいう「行政文書」に該当するか否かについて、検討する。
 情報公開法2条2項柱書きは、「この法律において『行政文書』とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。」と規定している。本件問答案が同条2項ただし書のいずれにも該当しないことは明らかであるから、本件問答案が同項にいう「行政文書」に該当するというためには、@行政機関の職員が職務上作成し、又は取得したこと、A文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であること、B当該行政機関の職員が組織的に用いるものであること、C当該行政機関が保有していることのいずれの要件をも満たすことが必要である
 そこで、まず@の要件について検討すると、本件問答案は、法務大臣から任命された考査委員が口述試験の実施の準備作業の一環として、公表された出題テーマについて作成した口述試験の本件問答案であるから、行政機関の職員が職務上作成したものということができ、@の要件を満たす。また、Aの要件についても、本件問答案は書面であることが認められるから、Aの要件も満たすことが明らかである。さらに、Cの要件についても、本件開示請求がされた平成17年10月28日の時点においては、口述試験の終了からさほど期間が経過していないことから、平成17年度第2次試験考査委員(これらの者の任期は同年11月30日までであった。)の中のいずれかの者によって、本件問答案が保有されていたものと認めるのが相当である。
 次に、Bの要件について検討する
 情報公開法は、開示の対象となる「行政文書」の範囲について、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする(情報公開法1条)という情報公開法の目的に照らし必要十分なものとするため、地方公共団体の情報公開条例が要求していることが多いとされる決裁、供覧等の手続の終了を要件とせず、業務上の必要性に基づき保有している文書であるかどうかの実質的な要件をもって規定するものとしている。Bの要件は、このような情報公開法の目的を考慮に入れて解釈すべきものであり、「組織的に用いる」とは、その作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すわなち、当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用され、又は保存されている状態のものを意味すると解するのが相当である(以下、このような状態にある文書を「組織共用文書」という。)。
 他方で、<ア>職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研さんのための研究資料、備忘録等)、<イ>職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し、<ウ>職員の個人的な検討段階にとどまるもの(決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書等。なお、担当職員が原案の検討過程で作成する文書であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。)などは、組織的に用いるものには該当しないというべきである(以下、このような状態にある文書を「自己専用文書」という。)。
 そして、作成され、又は取得された文書が、どのような状態にあれば組織的に用いるものといえるかについては、文書の作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成し、又は取得するものであるかどうか、直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか)、当該文書の利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか、他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか)、保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処分できる性質の文書であるかどうか、組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)などを総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当であるから、以下、これらの点について、検討する。
 本件問答案は、各試験科目の考査委員らの話合いに基づき定められた複数のテーマないし事例について、複数の考査委員が、自ら考えるところの出題の仕方や予想される解答を記載した書面であって、作成された書面は、憲法並びに民法及び民事訴訟法については、同一日の出題を担当する考査委員に配付され、刑法及び刑事訴訟法については、希望する他の考査委員に参考までに交付されるものである。そして、この本件問答案の配付を受けた考査委員の多くは、これに自らの考えに従って書き込みをしたり、これに基づいて自ら文書を作成するなどして、自らが口述試験の際に使用するための手控えとなる想定問答等を作成し、この手控えに基づいて受験者に対する発問を行うというものである。また、この本件問答案は、遅くとも、各考査委員がそれぞれ口述試験の実施を終了した時点でその文書としての役割を終えることとなり、不要となった本件問答案の処分の方法についての特段の定めはなく、個々の考査委員の判断で処分されている。
 このような本件問答案の作成、利用及び保存等の状況に照らすと、本件問答案は、その作成者である1人の考査委員が専ら自らの便宜のために作成したものと認めるのは相当でなく、当初から他の考査委員に配付されることを予定して作成された文書と見るべきであり、また、口述試験の実施の準備に際しての参考資料として利用することを前提に、作成者以外の他の考査委員に配付されたものであって、配付を受けた他の考査委員の多くも、これを参考資料として利用して、自らが口述試験の際に使用するための手控えとなる想定問答等を作成していることが認められる。したがって、本件問答案は、自己専用文書と認めるのは相当でなく、組織共用文書と認めるべきである。
 なお、不要となった本件問答案については、個々の考査委員の判断で処分されていることが認められるが、これは、本件問答案が各考査委員の手控え作成のための参考資料にすぎないこと、各考査委員が口述試験の実施を終了した時点でその文書としての役割を終えること、口述試験合格者の決定により考査委員の任期が終了することなどの特質から、このような取扱いがされていると考えるべきであって、この点を考慮に入れても、本件問答案を組織共用文書と認めるべきであるという結論に変わりはない
 ・・・以上によれば、原告が開示を求めている文書である本件問答案は、情報公開法2条2項にいう「行政文書」に該当するというべきである。

 口述試験については、試験終了後、試験における考査委員と受験者との問答が再現され、受験情報誌等に掲載され、批評又は分析の対象とされている。したがって、本件問答案が開示されることになると、被告の主張するように、口述試験の出題に関する事項が部分的に明らかになった上、司法試験予備校関係者や受験生に対し、短時間のうちに広く知れ渡ることが十分に予想される。
 そのような事態となった場合には、開示された本件問答案の表面的・・・

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