今年の民法設問1の参考判例

最判昭50・2・25(穀用かます事件)より引用、太字強調は筆者)

 乙第五号証は、「精算通知書並びに差額督促書」と題し、上告会社青森出張所長から被上告人にあてた昭和三九年二月二七日付同日差出にかかる内容証明郵便であつて、その内容は、要するに、受領したかますには欠陥があることを具体的に指摘したうえ、したがつて、穀用かますとしての商品価値が認められず、一枚当り二〇円、数量一二万八一〇〇枚、この代金二五六万二〇〇〇円としての減価採用で「精算」させていただくというにあることが明らかであり、同号証が真正に成立したものであることは原審が適法に確定しているところであるから、特別の事情がないかぎり上告人は被上告人に対し右書面どおりの表示行為をしたものと認定するのが、相当である。
 そこで、右表示の意味内容を検討すると、右書面は代金減額を請求する趣旨が明確に表示されているわけではないし、また、目的物に瑕疵があることを理由としては当然には代金減額の請求をすることができるものでもないのであるから、右書面による表示を代金減額の請求とみることが表示者の意図した目的に合致するものとはいいがたい。もとより、右書面には、上告人が代金減額の請求だけをし損害賠償の請求はしない趣旨が表示されているわけではない。むしろ、右書面においては、「精算」という文言が用いられ、受領物の瑕疵が具体的に指摘され結論として約定代金額より少額の代金債務額を負うにすぎないことが具体的に主張されているのであつて、右の表示が代金額を知悉している売買当事者間でされたものであることと考え合わせて右書面の内容を解釈すれば、受領物には瑕疵があつたから、上告人は約定代金債務額から瑕疵相当の損害額を差引清算した残額についてのみ支払義務を負うべき趣旨のものと解するのが、相当である。そして、このようにみることができる以上、右の表示によつて自働債権と受働債権の特定がされており、かつ、その相対立する債権を対当額で消滅させたいという効果意思をうかがうことができるから、特別の事情がないかぎり、上告人は右の表示により受領物の瑕疵に基く損害賠償の請求をするとともに該請求権による相殺をしたものというべきものである

(引用終わり)

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