1.科目別の状況をみてみましょう。下記は、科目別平均点及び最低ライン未満者割合の推移です。
年度 | 公法系 平均点 |
民事系 平均点 |
刑事系 平均点 |
公法系 最低ライン 未満割合 |
民事系 最低ライン 未満割合 |
刑事系 最低ライン 未満割合 |
18 | 58.5 | 101.4 | 73.0 | 1.9% | 0.6% | 0.1% |
19 | 60.2 | 103.0 | 68.5 | 4.3% | 2.1% | 0.9% |
20 | 69.7 | 104.8 | 76.2 | 0.7% | 1.3% | 0.4% |
21 | 63.0 | 101.7 | 63.4 | 2.7% | 2.5% | 3.9% |
22 | 71.5 | 96.5 | 62.8 | 0.5% | 2.4% | 4.5% |
23 | 59.3 | 102.6 | 57.3 | 4.4% | 1.7% | 8.0% |
24 | 54.8 | 97.6 | 72.0 | 11.3% | 3.2% | 1.3% |
25 | 65.1 | 104.8 | 63.1 | 2.9% | 1.4% | 5.2% |
26 | 61.0 | 99.8 | 57.9 | 3.9% | 3.9% | 9.0% |
今年は刑事系、特に刑訴が難しかったという印象が強かっただろうと思います。その印象どおり、刑事系は平均点が低く、最低ライン未満者が非常に多かった。他方、公法系、民事系は例年並みといったところです。イメージとしては、平成23年に似ています。平成23年よりも民事系の最低ライン未満者が多いのは、問題の難易度ではなく、受控え層の受験の影響でしょう。民事系は、商法、民訴がボロボロでも、民法でかなり点が取れてしまうので、余程のことがないと最低ライン未満にはなりません。にもかかわらず、最低ラインを切ってしまうのは、基本知識が決定的に欠けているということです。全体的に各科目の平均点が下がっていることについても、受控え層の受験の影響を割り引いて考えておく必要があります。
来年以降は、憲民刑の3科目となるので、これまでの結果との単純な比較はできなくなります。ただ、これまでの傾向をみると、短答の得点を低めに調整したいときは、全科目を等しく厳しくするということはあまりやってこない。憲民刑のうち、どれか1科目を厳しくするというやり方を取りやすい。そういうことはいえるのではないかと思います。
2.今年は、予備試験組が244人受験して、243人合格しています。予備組の短答ほぼ100%は、今年も変わりませんでした。このことは、予備組がすごいというより、短答試験の安定性を意味します。予備の短答をクリアすれば、本試験の短答もほぼ100%受かる。このことは、過去問や模試で合格ラインをクリアできるようになれば、ほぼ確実に試験当日も同じくらいの結果を出せるということです。「短答は裏切らない」のです。
これとの対比で考えるべきは、論文の不安定性です。予備の論文をクリアした人でも、本試験の論文は、7割強しか受からない。確かに、短答と比べると、論文は、予備と本試験の問題の形式に差があります。しかし、それを考慮しても、想像以上に受かっていないな、という感じがします。ここに、論文の怖さがあるわけです。
ただ、これは年齢層によって顕著な差があります。以前の記事(「平成25年司法試験の結果について(6)」)で詳しく取り上げたように、予備組の中でも、20代は9割以上受かっています。つまり、20代の予備合格者にとっては、短答と同様に、論文も安定している。大学生に至っては、41人中40人が受かっています。その意味で、論文にもある種の安定性があります。ただ、短答と異なるのは、それが勉強量とリンクしていない、ということです。最も勉強量の少ないはずの大学生が、最も合格率が高い。多くの人が、大学生レベル以上の知識を持ちながら、自滅しているのです。論文の勉強は、知識を増やすのではなく、「予備の大学生のような答案を書くにはどのような問題文の読み方、答案の書き方をすればよいか」を検討し、実践するものでなければならないのです。
素直に勉強量が反映される短答と、そうではない論文という、司法試験の基本構造を理解した上で、普段の学習計画を考えることが必要です。