1.以下は、今年の受験生のうち、法科大学院修了生の資格で受験した者の各修了年度別、未修・既修別の合格率です。
受験者数 | 合格者数 | 受験者 合格率 |
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21未修 | 636 | 33 | 5.1% |
21既修 | 173 | 20 | 11.5% |
22未修 | 698 | 49 | 7.0% |
22既修 | 289 | 51 | 17.6% |
23未修 | 935 | 111 | 11.8% |
23既修 | 557 | 114 | 20.4% |
24未修 | 955 | 145 | 15.1% |
24既修 | 819 | 229 | 27.9% |
25未修 | 1130 | 188 | 16.6% |
25既修 | 1579 | 707 | 44.7% |
今年も、以下の2つの法則が成り立っています。
1:同じ年度の修了生については、常に既修が未修より受かりやすい。
2:既修・未修の中で比較すると、常に年度の新しい者が受かりやすい。
このように既修・未修、修了年度別の合格率が一定の法則に従うことは、その背後にある司法試験の傾向を理解する上で重要なヒントとなります。
2.既修と未修の差は、どこで付いているのでしょうか。以下は、「平成25年司法試験受験状況」を基にして作成した平成25年(昨年)の既修・未修別の合格率です。短答は受験者ベース、論文は短答合格者ベースの合格率です。
短答 合格率 |
論文 合格率 |
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既修 | 83.4% | 45.9% |
未修 | 56.7% | 29.2% |
短答、論文の双方で、大きな差を付けられていることがわかります。新司法試験が始まった当初は、短答段階では未修・既修の差が顕著だったものの、論文段階では、それほど大きな差は付かないという傾向でした。ですから、既修・未修の差は、主として短答段階で付いている、という説明でよかったのです。
ところが、昨年のデータでは、論文でも既修・未修の差が大きくなってきている。この点についての今年のデータがまだ明らかになっていませんが、仮に、論文での既修・未修の差がさらに開いてくるようであれば、何らかの傾向変化が生じた可能性を考慮する必要があるでしょう。一つの可能性としては、論理性や現場思考よりも、知識の比重が強まっている。そのために、知識に難のある未修に不利に作用しているのではないか。そういう仮説は考えられるでしょう。特に、来年以降は短答が憲民刑の3科目となることから、それ以外の科目では、知識を論文で問うてくる可能性があります。今後、このような知識重視の傾向変化の可能性には、注意する必要がありそうです。
3.では、修了年度別の合格率の差は、どこで生じているのでしょうか。以下は、同じく「平成25年司法試験受験状況」を基にして作成した平成25年(昨年)の受験回数別の合格率です。短答は受験者ベース、論文は短答合格者ベースの合格率です。
受験回数 | 短答 合格率 |
論文 合格率 |
1回目 | 65.7% | 49.1% |
2回目 | 67.1% | 31.0% |
3回目 | 73.9% | 26.6% |
当サイトで繰り返し説明している、短答・論文の性質の違いです。短答は、受験回数が増えると、合格率が上がる。他方、論文は、受験回数が増えると、合格率が下がる。これは、毎年生じている確立した傾向です。短答は勉強量を増やせば素直に成績が伸びるが、論文はむしろ逆だということですね。
修了年度が古くなると、短答はむしろ有利です。ところが、それを上回る論文段階での合格率押下げ効果のために、全体の合格率は、修了年度が古くなるほど低くなってしまうのです。
4.上記の傾向から読み取れることは、短答は知識で差が付くが、論文はそうではない、ということです。ですから、まず、短答合格レベルに達するまでは、知識重視で勉強をする。そして、その段階をクリアした後の論文対策は、知識とは異なる論文独特の点の付き方を意識した勉強法にシフトする。そういう段階を踏んだ学習計画が有効だということになります。もっとも、上記2で述べたように、近時は、論文でもやや知識重視の傾向が出てきているかもしれません。とはいえ、上記3でみたように、短答・論文の性質の違いは未だに顕著ですから、現段階では、そこまで気にすることではないと思います。