平成26年司法試験の結果について(7)

1.予備組の結果をみてみましょう。今年は、予備試験合格の資格で受験した244人中、最終合格したのが163人です。合格率は、66.8%。これは、過去の予備組の実績と比較すると、どの程度の数字なのでしょうか。以下は、予備組が司法試験に参入した平成24年以降の予備試験合格の資格で受験した者の合格率の推移です。


(平成)
受験者数 合格者数 受験者
合格率
24 85 58 68.2%
25 167 120 71.8%
26 244 163 66.8%

 今年は、過去最低の合格率であったことがわかります。とはいえ、数パーセント程度の違いしかありませんから、誤差の範囲といえなくもないレベルの変化です。
 予備組については、考えられる2つの合格率低下要因があります。一つは、予備試験合格者数の急激な増加もう一つは、平成24年及び平成25年に不合格となった予備組滞留者の再受験です。前者については、合格者数の急増と同時に上位ローの予備試験受験者も急増しているため、影響は限定的です。他方、後者については、本来はそれなりに大きな影響を与えるはずです。受験回数の増加は、論文合格率を顕著に低下させるという確立した傾向があるからです。ところが、予備組については、いまのところ受験回数増加による論文合格率低下の傾向が現れていません(「「平成25年司法試験状況」から読み取れること(上)」)。
 そう考えてくると、上記の2つの要因は、現状では決定的な合格率低下要因ではないということになります。今年の合格率が微減にとどまったのも、こうした理由によるものと考えられます。従って、以上のような事情に変化がない限り、今後の予備組の合格率は、微減又は横ばいという傾向になると予想できます。

2.今度は、ロー修了生と比較してみましょう。以下は、上位ローと言われる東大、京大、一橋、慶応の受験者合格率です。

  受験者数 合格者数 受験者
合格率
東大 304 158 51.9%
京大 245 130 53.0%
一橋 136 64 47.0%
慶応 336 150 44.6%

 いずれのローも、5割から4割台です。このようにみると、予備組が突出して優れているようにみえます。もっとも、上記は既修と未修の両方を含んだ数字です。これを、既修者に限ってみると、見え方が違ってきます。

  受験者数
(既修のみ)
合格者数
(既修のみ)
受験者
合格率
(既修のみ)
東大 173 131 75.7%
京大 179 119 66.4%
一橋 92 53 57.6%
慶応 205 129 62.9%

 京大と慶応は、ほぼ予備と互角、一橋はやや劣りますが、東大は予備に1割近い差を付けて勝っています。このように、既修者に限ってみると、予備合格者と遜色のない結果を出しているのです。
 さらに、平成25年修了、すなわち初回受験の既修に限るとどうなるか。それが、下の表です。

  受験者数
(平成25年修了
の既修のみ)
合格者数
(平成25年修了
の既修のみ)
受験者
合格率
(平成25年修了
の既修のみ)
東大 121 102 84.2%
京大 123 92 74.7%
一橋 59 39 66.1%
慶応 152 111 73.0%

 一橋を除けば、大差で予備組に勝っています。むしろ、予備組が見劣りするくらいです。ただし、この比較は公平ではありません。なぜなら、予備組の66.8%という数字は、初回受験者に限らない数字だからです。とはいえ、上記のように、直近の上位ロー修了生が予備合格者より高い合格率となるのですから、在学中の上位ロー生が予備試験を受験すれば、合格するのが当然といえるでしょう。そうなると、上位ローでは、学生がどんどん予備に合格して抜けていってしまうことになります。
 先日、上位ロー6校が予備試験を制限する方向の提言(「司法試験予備試験制度に関する緊急の提言」)を行ったのも、こうしたことに対する危機感があるからです。ローの教育内容が悪いから予備に負けるのだ、という批判があります。ローの教育内容に問題があるのは、そのとおりでしょう。ただ、予備合格のレベルが上位ロー在学生のレベルより下の水準である限り、ローの教育内容のいかんにかかわらず、予備で学生が抜ける現象は起こるわけですから、この問題については教育の質とは別個の問題として対処する必要があるように思います。そうでなければ、本当にローに通えない人達の枠を、本来予備を受ける必要のない上位ロー在学生が奪い取る構図が恒常化することになってしまうでしょう。

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