1.今回は、選択科目による合格率の差をみていきます。まずは、選択科目別の短答合格率です。
科目 |
短答 受験者数 |
短答 合格者数 |
短答 合格率 |
倒産 | 1633 | 1140 | 69.8% |
租税 | 554 | 361 | 65.1% |
経済 | 848 | 540 | 63.6% |
知財 | 980 | 592 | 60.4% |
労働 | 2466 | 1595 | 64.6% |
環境 | 476 | 270 | 56.7% |
国公 | 107 | 55 | 51.4% |
国私 | 906 | 527 | 58.1% |
倒産法選択者が最も合格率が高いというのが、毎年の傾向です。短答には選択科目はありませんから、本来、選択科目と短答合格率とは関係がないはずです。にもかかわらず、このような差が付くのは、選択者の属性に傾向性があるということです。すなわち、倒産法選択者には実力者が多いということを意味しています。その理由ははっきりしませんが、既修者が選択しやすい科目だということが影響しているのかもしれません。倒産法ほど顕著ではありませんが、労働法も似た傾向です。
他方で、国際公法、国際私法は合格率が低い傾向です。こちらは、倒産法とは逆に既習者があまり選択しない科目だということが関係している可能性があります。環境法も、似た傾向です。その他の科目は、平均的な合格率です。
2.次に、論文合格率をみてみましょう。
科目 |
論文採点 |
論文 |
論文 合格率 |
倒産 | 1140 | 410 | 35.9% |
租税 | 361 | 128 | 35.4% |
経済 | 540 | 186 | 34.4% |
知財 | 592 | 207 | 34.9% |
労働 | 1595 | 579 | 36.3% |
環境 | 270 | 96 | 35.5% |
国公 | 55 | 12 | 21.8% |
国私 | 527 | 192 | 36.4% |
今年は、やや波乱が生じています。例年は、論文も倒産法がトップでした。しかし、今年は国際私法にトップの座を譲っています。倒産法の最低ライン未満者が100人にのぼったことが、その原因でしょう。逆に言えば、最低ラインで100人も落とされた割には、それなりに高い合格率を維持しているともいえます。倒産法は、実力者が選択しているのに、最低ライン未満者が毎年多いという不思議な科目なのです。実力者同士で最低ラインを争うので、リスクの高い勝負をすることになります。倒産法は、そのような危険な科目だということは、認識しておくべきでしょう。一方で、選択者が多く、トップにはならないものの安定して高い合格率を維持しているのが、労働法です。選択科目の中で最も無難な科目が、労働法であるといえるでしょう。
一方で、毎年低い傾向の国際公法、国際私法ですが、今年は国際私法がトップに躍り出ています。一方で、国際公法は最低の合格率、しかも、他の科目と比較しても10%以上低い数字になっています。他の科目はせいぜい数パーセントの差しかありませんから、驚くような合格率の低さです。各科目の問題の難易度は、合格率に直接は影響しません。どの科目の平均点も、得点調整後は全科目平均点を基準に調整されるからです。しかも、今年は国際公法の最低ライン未満者はゼロですから、最低ラインで不利になったということもありません。にもかかわらず、ここまで差が付いてしまうのは意外ですね。国際公法は、最も必須科目との関連性の薄い科目なので、必須科目に自信のない人が選択しやすい科目ということはいえますが、それだけでここまで差が付くのか、という感じはします。もっとも、母集団が少ないので、ちょっとした特殊要因によって合格率が大きく変動しやすいということはあるでしょう。国際私法の躍進の原因は、現段階ではよくわかりません。これが毎年の傾向となるのか、それとも、来年以降また低い数字になってしまうのか、注目したいところです。