平成26年予備試験口述試験(最終)結果について(1)

1.平成26年予備試験口述試験の結果が公表されました。合格点は、これまでと同じ119点最終合格者数は、356人でした。昨年の最終合格者数は351人ですから、結局、最終合格者数は昨年から5人しか増えなかったことになります。

2.今年の受験者合格率は、356÷391≒91.04%でした。以下は、これまでの推移をまとめたものです。

   受験者数 合格者数 受験者
合格率
前年比
平成23 122 116 95.08% ---
平成24 233 219 93.99% -1.09%
平成25 379 351 92.61% -1.38%
平成26 391 356 91.04% -1.57%

 毎年、合格率が下がっていることがわかります。しかも、その下げ幅が、少しずつ拡大している。これには、やや注意が必要です。
 合格率低下の原因の一つとして、論文合格者数の増加があるでしょう。論文合格者数が増加すれば、基本的な知識でつまずく人が増えるでしょう。また、考査委員としても、120人程度しか論文合格者がいないと、「一人でも落としてしまったらかわいそう」という思いがあるでしょうが、さすがに400人近く論文合格者がいると、「何人かは落としてもいいかな」という感覚になってきます。ですから、論文合格者数が増えることに応じて、不合格者が増えてくることは、ある程度自然なことです。このことは、2回試験の合格率についても言えることでしょう。
 ただ、今年の合格率の低下は、それだけでは説明できません今年は、昨年と比べて、それほど論文合格者数は増えていません。それにもかかわらず、口述合格率の下落幅は、これまでより大きくなっています。論文合格者の増加に応じて口述合格率が低下しているという説明では、なぜ下落幅が大きくなったのかを説明できないのです。
 この点については、いくつかの仮説が考えられます。今年はたまたま口述受験者の質が悪かっただけだ、あるいは、誤差の範囲の変動に過ぎないと考えるなら、来年以降は合格率が持ち直すことになりやすいでしょう。細かい条文や手続の知識に乏しい若手の大学生やロー生の論文合格者が年々増加しているからだ、という考え方によるなら、大学生やロー生の論文合格者の増加が続く限り、口述合格率の低下傾向は続くことになりやすい。また、予備試験合格者の増加に対する懸念が強まったことが原因であると考えるなら、そのような懸念が続く限り、合格率が上昇する方向にはなりにくいことになります。現段階では、来年以降の数字や、その他の資料等を確認してみないと何とも言えない、という感じです。

3.口述合格率との関係で気になるのは、口述の採点基準との関係です。以前の記事(「平成26年予備試験論文式試験の結果について(4)」)で説明したとおり、口述ではほとんど差がつきません。イメージとしては、各科目、上位4分の1が61点、下位4分の1が59点、その他が60点という感じになっています。それ以外の点数も付いてはいますが、ほとんど無視してよい数しか付きません。上記のような基準によれば、不合格となるのは、民事、刑事の両方で59点を取ってしまった場合ということになりますから、理論的な合格率は、93.75%ということになります。
 この数字と実際の合格率を比較してみると、昨年初めて93.75%を少し割り込み、今年はさらに2%以上下回る結果となりました。このことは、58点以下を取ってしまう人が増えている可能性を示唆します。一方の科目で58点以下を取ると、もう片方の科目で60点を取っても合格できませんから、厳しい状況に陥ることになります。
 ただ、以前の記事(「平成26年予備試験論文式試験の結果について(4)」)でも指摘したとおり、上記の理論的な合格率93.75%は、民事と刑事の得点が独立である、すなわち、全く相関性がないという仮定で算出された数字ですから、基本的な知識やコミュニケーション能力に乏しい人がわずかでも増加すると、93.75%を下回る数字になるはずです。そのことを考えると、この程度なら、まだ過度に58点以下を恐れる必要はないのではないかと思っています。

4.来年以降、今年と同じ程度に口述合格率が低下することになると、合格率は90%を切ることになります。これは、1割以上が落ちる試験になるということを意味します。受験生心理としては、かなりの恐怖でしょう。
 ただ、考査委員としても、口述で1割以上落とすというのは、抵抗があるはずです。筆者の感覚としても、合格率が90%を切るということはなさそうだという感じがしています。合格率低下傾向が止まるのか、1割以上落ちる試験になってしまうのか、来年の結果に注目です。 

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