1.平成26年6月20日に成立した会社法改正。気になるのは、来年の司法試験、予備試験の出題範囲に含まれるのかです。
2.司法試験の準拠する法令は、原則として、試験時施行法令です。それと異なる取扱いをするときは、その旨が広報されることになっています。
(「司法試験の出題に係る法令について」より引用、太字強調は筆者)
1 司法試験は,試験時に施行されている法令に基づいて出題する。
2 例外的に,各科目別の考査委員において,1と異なる取扱いとすることを相当と認めるときは,司法試験委員会に対し,1と異なる取扱いとする旨を速やかに広報するよう求める。
(引用終わり)
このことは、予備試験も同様です(「司法試験予備試験の出題に係る法令について」)。では、問題の会社法改正の施行日は、いつなのか。同改正の成立時には、「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内」というところまでしか、分かっていませんでした。
(会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)附則1条)
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
同改正の公布は平成26年6月27日ですから、これだけでは、来年の司法試験、予備試験の試験日までに施行されるかどうかわかりません。しかし、法務省は先日、施行の予定日が平成27年5月1日であることを明らかにしました。
(「会社法の改正に伴う会社更生法施行令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集について」より引用、太字強調は筆者)
第186回国会において成立し,平成26年6月27日に公布された「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号。以下「改正法」といいます。)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第91号。以下「整備法」といいます。)は,改正法の公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされており,平成27年5月1日から施行することを予定しています。
(引用終わり)
とても微妙な施行日です。来年の司法試験の短答には、商法は含まれませんから、司法試験に関係があるのは、論文式の民事系科目ということになります。その実施日は、5月14日です(「平成27年司法試験の実施日程等について」)。予備試験では、短答及び論文の双方で、商法が出題されます。予備試験の実施日は、短答が5月17日。論文が7月11日、12日(例年どおりなら商法は12日)です(「平成27年司法試験予備試験の実施日程等について」)。ですから、仮に上記の予定どおりに施行されたとすれば、改正法は司法試験、予備試験のいずれにおいても試験範囲に含まれる、ということになるでしょう。
3.ただ、問題があります。それは、当日に論文試験会場で配布される法文です。これは、例年、司法試験が1月1日、予備試験は4月1日の施行法令を基準に登載しているようです(※)。だとすれば、平成27年5月1日施行の改正法は、会場配布の法文に反映されないということになりそうです。ですから、仮に改正法を出題する場合には、問題文に別紙として改正法を添付する等の措置が必要になってくるでしょう。
※平成25年11月20日成立、同月27日公布、平成26年5月20日施行の自動車運転死傷行為処罰法の成立に伴う刑法改正は、平成26年の司法試験用法文には反映されていません。一方、施行日からすれば予備試験用法文にも反映されないはずですが、予備試験の法文には刑法の改正が反映されていました。これは、自動車運転死傷行為処罰法の施行日が公布から6月を超えない日とされていた(同法附則1条)ことから、予備試験論文の試験日に施行されることが確実であったという事情による例外的な措置だったのではないかと思われます。
4.また、上記の施行日は飽くまで予定であり、事情によっては前後する可能性もないとはいえません。作問する側からの立場に立ったときに、万が一施行日が試験日以降になってしまった場合に解答すべき内容が変わってくるような出題は、したくないでしょう。そういうことからすれば、今回の会社法改正は形式的には出題範囲に含まれるものの、実際には出題される可能性は極めて低い、ということになると思います。ですから、来年の試験対策としては、あまり改正を意識する必要はないのではないかと思います。