1.平成27年司法試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は114点。合格者数は5308人。受験者合格率は66.2%でした。
2.まず気になるのは、合格点の114という数字です。いかにもキリが悪い。一見すると、今年は得点で切ったのではなく、一定の合格者数や合格率で切ったのかな、というようにも思えます。
合格者数5308人という数字に着目すると、合格者数5300人を基準にしたのではないか、という感じもします。そこで、合格点前後の得点別人員を見てみると、以下のようになっています。
得点 | 人員 | 累計人員 |
116 | 113 | 5091 |
115 | 110 | 5201 |
114 | 107 | 5308 |
113 | 100 | 5408 |
112 | 100 | 5508 |
今年は、合格点周辺はほぼ100人刻みになっています。ですから、5500人にしたければ112点、5400人にしたければ113点、5300人なら114点、5200人なら115点、5100人なら116点というように、容易に合格点を設定できたのです。
仮に、自分が合格点を決定するとした場合、ここで敢えて5300人にこだわって114点とするでしょうか。微妙な気がします。115点、5201人合格の方が、むしろ、得点もキリが良くて適切なようにみえるからです。しかも、事前に5300人と決めておく理由も、特にありません。以下は、直近5年間の短答合格者数の推移です。
年 | 受験者数 | 合格者数 |
23 | 8765 | 5654 |
24 | 8387 | 5339 |
25 | 7653 | 5259 |
26 | 8015 | 5080 |
27 | 8016 | 5308 |
確かに、平成23年、平成24年は5300人前後の数字ですが、さほど安定しているわけではありません。特に、昨年との比較でみると、受験者数はほとんど変わらないのに、合格者数は300人も増えています。5000人未満だと少なすぎるという程度の考慮はあったかもしれませんが、5300という数字に司法試験委員会が特別のこだわりを持っていたようには思えません。
3.それでは合格率が基準になったのでしょうか。今年の受験者合格率66.2%は、ほぼ3分の2に当たります。ですから、下3分の1を不合格にするという考慮だったのではないか、という見方もあるでしょう。ただ、それもちょっと考えにくいような気がします。以下は、直近5年間の短答の受験者合格率の推移です。
年 | 受験者数 | 合格者数 | 受験者 合格率 |
23 | 8765 | 5654 | 64.5% |
24 | 8387 | 5339 | 63.6% |
25 | 7653 | 5259 | 68.7% |
26 | 8015 | 5080 | 63.3% |
27 | 8016 | 5308 | 66.2% |
6割から7割の間くらい、という幅には収まっていますが、66%で切っているという感じではありません。例えば、今年の合格点をキリの良い115点とすると、受験者合格率は64.8%となりますが、それで違和感はありません。今年に限って下3分の1を落とす判断をしたとすれば、なぜ、いきなりそのように考えたのかということになりますが、今のところ説得力のある理由は見当たりません。
4.結局、合格者数を基準としたわけでも、合格率を基準にしたわけでもないとなれば、やはり合格点を基準にしたということになるのでしょう。
これまでは、350点満点の6割の210点が一つの目安となっていました。今年についてそれで考えると、175点満点の6割は105点。これは6167人合格で、低すぎる。一方で、満点の7割は122.5点。123点だと4221人合格で、これは高すぎる。間を取って6割5分だと、113.75。小数点以下を切り上げて114点。これで合格者数をみると5308人、合格率66.2%ということですわりが良い。ならばこの点数でいいではないか。そんな感じで決まったのかな、というのが、筆者の推測です。114という数字は、一見するとキリの悪い数字ですが、満点の6割5分という意味では、キリの良い数字だったということになります。
仮に、そのような形で合格点が決まっていたのだとすると、今後も合格点は114点が一応の目安となり、それで合格者数が多すぎたり、少なすぎたりするようなら微調整する、というような決まり方になりそうです。