1.以下は、職種別の短答、論文合格率です。短答は受験者ベース、論文は短答合格者ベースで算出しています。
職種 | 短答 合格率 |
論文 合格率 |
公務員 | 22.2% | 8.5% |
教職員 | 13.2% | 11.1% |
会社員 | 20.0% | 10.6% |
法律事務所 事務員 |
29.6% | 5.3% |
塾教師 | 37.5% | 4.1% |
自営業 | 25.3% | 7.2% |
法科大学院生 | 25.6% | 34.4% |
法科大学院以外 大学院生 |
24.0% | 16.6% |
大学生 | 19.0% | 30.2% |
無職 | 22.7% | 7.2% |
その他 | 25.5% | 11.7% |
2.年齢層別でみた場合、20代は短答に弱いという結果でした(「平成27年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。20代の多くは、大学生と法科大学院生でしょう。しかし、上記の表をみると、短答に弱いのは、大学生だということが分かります。法科大学院生は、それほど短答を苦手にしていません。長期受験者の多いと思われる無職よりも、高い合格率になっています。最近の法科大学院生は、早い段階から短答を意識した勉強を始めています。これに対し、大学生は、圧倒的に短答に割ける勉強時間が足りません。そのことが、この結果に現れているといえるでしょう。
3.論文の合格率をみると、法科大学院生と大学生の高さが目に付きます。従来は、法科大学院生の合格率が圧倒的で、大学生はそれなりに高い合格率でしたが、法科大学院生とはかなり差がある、という感じでした。しかし、今年は、法科大学院生と大学生でそれほど大きな差はありません。それだけ、大学生が本気で論文対策をやるようになってきたということでしょう。
一方で、社会人は苦戦しています。教職員は短答も苦手にしているものの、他の職種では、短答は、大学生よりむしろ合格率が高くなっています。ところが、論文は1割程度か、それ未満の合格率にとどまっています。これは、社会人に長期受験者が多いからでしょう。論文は、勉強時間が少なくても、十分合格できます。それは、大学生の合格率をみれば分かるでしょう。ですから、社会人なので勉強時間が確保できない、というのは、論文で苦戦する原因ではありません。むしろ、答案の正しい書き方を修得できていないために、「論文に受かりにくい人は、何度受けても受からない」法則に引っかかっている。基本論点を抽出し、規範を明示し、問題文にある事実を引用して当てはめる、という答案スタイルを修得すれば、あまり勉強時間を確保できない社会人でも、十分合格できます。他方、短答で苦戦している社会人の場合には、何とか勉強時間を確保することが必要です。電車内などのスキマ時間や就寝前の30分などを使って、地道に肢別本などを潰していく。タイム・マネジメントを工夫する必要があるでしょう。
無職は、旧司法試験組や、受験回数を使い切って予備に回った人が多いカテゴリーです。短答はそれほど苦手ではありませんが、論文は7%しか受かりません。「論文に受かりにくい人は、何度受けても受からない」法則が、はっきり現れています。無職は、専業受験生であることが多く、勉強時間にはあまり苦労していないはずです。しかし、がむしゃらに勉強すれば受かるかというと、そうではない。基本論点を抽出し、規範を明示し、問題文にある事実を引用して当てはめる、という答案スタイルを修得しない限り、どんなに勉強時間を確保しても、論文を突破することは難しいでしょう。
論文の勉強量と、合格率との関係は、大学生→法科大学院生→無職というようになる、と考えるとわかりやすいでしょう。大学生は、あまりにも勉強量が足りないので、どのような事例でどの基本論点が問題になるか把握しておらず、規範もあまり覚えていない。そのために、基本論点の抽出ができなかったり、規範を明示できない。それでも、問題文の事実の引用は丁寧にやってくるので、それなりの合格率になる。法科大学院生は、ちょうど基本論点の知識と、規範の記憶まで一通りできる程度の勉強量が確保でき、論文合格には理想的な状態です。無職になると、応用論点に手を出して基本論点の知識が薄れており、規範は初学者の頃に一度覚えたので改めて覚えようという努力をせず、本試験当日にはど忘れしてしまう。応用論点に気が付くので、それを検討したり、書こうとしたりするあまり、個々の当てはめで問題文の事実の引用を怠ってしまう。その結果、論文合格率は非常に低くなる。自分がどの程度の勉強量なのか、上記を参考にして、学習計画を立てると良いでしょう。