「司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(憲法) 」
を発売しました

 Amazonより、「司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(憲法)」を発売しました。
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【内容紹介】

 本書は、平成27年司法試験における採点実感等に関する意見の憲法について、各項目の段落ごとに、ポイントとなる事項を説明したものです。 

 採点実感等に関する意見(以下「採点実感」といいます。)は、出題趣旨と同様、考査委員が公表する数少ない資料の1つです。出題趣旨は、考査委員が想定した「正解」が示されているものですが、採点実感では、実際の答案がどの程度のことを書いていたのか、誤った答案の例、どの程度のことを書いた答案がどのような水準のものと評価されたのか、といった、より実戦的に参考になる事項が示されています。 
 ただ、個々の指摘だけを表面的に読んだだけでは、「そんなことは分かっているよ」という程度で、それを実際の学習メニューや受験テクニックに具体化させていくことはできません。法科大学院や予備校等でも、「こういう答案はダメですよ。採点実感でも指摘されていますよ」という程度の断片的な引用にとどまっていて、では、そのような指摘を受けないためには具体的にどうすればいいのか、そのような所までは、あまりフォローされていないように感じます。

 特に、憲法では、従来の主査の個性もあって、例年、ステレオタイプな表現によって受験生を一方的に罵倒するような内容のものが続きました。また、そのような表現の中には、かえって受験生の誤解を招くような不適切なものもあったと思います。そのため、受験生の方も「こんなものはマトモに聞いても仕方がない」とか、「指摘のとおりにしようと思ってもどうしていいのかわからない」とか、そもそも、「指摘の意味が分からない」というような状態に陥りがちでした。そのようなこともあって、「憲法だけは分からない」というのが、多くの受験生が現在も持っている印象なのだろうと思います。 

 ところが、例の漏洩事件によって、主査が交代するという事態に至りました。そうなると、気になるのは、これまでの採点実感の指摘は、もう無視していいのか、ということです。仮に、これまでの採点実感が特定の主査の個人的なこだわりに過ぎないのであれば、その主査が去った以上、もう無視して構わないということになるでしょう。 
 そこで、本書では、まず、冒頭の「はじめに」の項目において、これまでの採点実感で指摘されていた「パターン」批判とは具体的には何を指していたのか、3つの類型に分けた上で、過去の採点実感の記述を参照しつつ、説明しています。そして、そのような指摘が、今後も妥当するのかを明らかにしました。 
 中でも、最も重要な審査基準の設定に関する「パターン」については、まず、「従来型の点が取れないパターン」について、論述例を具体的に示した上で、なぜそれでは点が取れないか、「パターン」だから、という理由ではないということを明らかにしました。他方で、何らのパターンも用意せずに現場思考で書けば点が取れるかというと、そうではないということについても説明しました。その上で、「審査基準の設定における個別的具体的検討」という、理論的に誤っているのではないかとも思える従来の要求の正しい意味を明らかにし、その要求をクリアしつつ、限られた時間内に答案化することが可能な方法論として、現在の司法試験に対応した、「論文で点が取れる新しいパターン」を、具体的な論述例を交えながら提示しました。この点が、本書では最も重要な内容となっています。 

 「2 総論」の「全体構成等について」の項目では、複数の項目を書く場合の基本的な書き方や、複数の人権の関連付けが問題になる場合の処理の仕方などについて説明しました。 
 「(2) 設問1のBの訴訟代理人の主張及びA市の反論について」の項目では、三者形式における対立点が思い付かない場合の書き方や被告の反論部分の書き方について説明しました。 
 「(3) 設問2の「あなた自身の見解」について」の項目では、私見部分が不十分になる原因とその対策、憲法における論理性をどの程度注意すべきかについて説明しました。 
 「(4) 判断の枠組みの定立について」の項目では、審査基準の設定の段階で特殊性を考慮すると、どのような評価になり易いか、自由論と平等論を混同していると思われないためにはどうすべきかを説明しました。 
 「(5) その他」の項目では、理論的に行政法の裁量論となりそうな場合に、憲法論で書くための方法論を、論述例を示しつつ説明しました。また、「理論的に行政法の裁量論となりそうな場合であっても憲法論で書く」という傾向が、今後も続くのかどうかについても説明しました。 
 「3 平等について」の項目では、まず、平等に関する基本的な概念を再確認した上で、具体的に答案に書く際に、どの概念を用いるべきか、他の概念が問題になる場合には、どのように書くべきか、Cとの同一取扱いはどの概念との関係で検討すべきであったか、「法の下」の意義(法適用の平等に尽きるか,法内容の平等も含むのか)を書く必要がない理由が単に重要性の低い自明の論点であるというものではないこと、事実を引くことの重要性とそのためのテクニック、Cの同一取扱いのような応用論点と、例年指摘される「採用の余地がない主張」との見分け方等を説明しました。 
 「4 表現の自由について」の項目では、仮に本問を思想・良心の自由で検討するとしても、どのような意味で制約があると構成しなければならなかったか(思想・良心の自由の4つの内容のうちのどれが問題となるか)、「表現行為そのものが制約されている」場合とは具体的にどのような場合か、事後規制も含まれるか、本問は意見の公共性が意味を持つ場合か等を説明しました。 
 「5 その他一般的指摘事項」の「(1) 論述のバランス」の項目では、論文試験がいかに時間に厳しい試験であるか、その時間内に書き切るためにはどうすればいいかについて、簡単な答案のイメージを示しつつ説明しました。 
 「(2) 問題文の読解及び答案の作成一般」の項目では、誤記や事実関係の誤りのある答案を書きがちな人の傾向と注意点、「問題文の単なる引き写しや単に羅列するだけの答案」に実際に欠けているものは事実の評価ではなく、別のものであること等を説明しました。 
 「(3) 形式面」の項目では、略字を使うべきか、使うとするとどのような場合か、法名の省略の仕方、誤字脱字の訂正、挿入に関するテクニックを説明しました。 

 本書が、採点実感を読み解く上で少しでも助けになれば幸いです。

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