1.前回の記事(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(4)」)では、口述試験合格のための基本戦略が、民事・刑事の両方で失敗をしないことである、ということを説明しました。より具体的には、民事・刑事の両方で59点を取らない。すなわち、両方とも下位4分の1(25%)に入ってしまうという事態を避けるということです。これは、受験生の感覚からすると、そう容易なことではありません。口述受験者は、全員論文合格者です。ですから、皆、それなりに実力がある。油断していると、下位4分の1にすぐ入ってしまいます。これが、2日続くと不合格になる。そう考えると、9割以上という口述の合格率の割には、高いハードルのように感じられるでしょう。
しかも、前回紹介した口述の採点における得点分布は、どうやら考査委員(主査、副査の1組)ごとに考慮するようです。より具体的にいえば、各試験室ごと、大広間の待機室で言えば、椅子に座る列ごとの分布だということです。つまり、その列で下位4分の1に入ってしまうと、59点になってしまう。そのため、自分の列にとんでもない受け答えをする人が一定数いてくれれば助かるのですが、そうでない場合には、それほど問題のない受け答えだったのに、なぜか59点になってしまった、ということが生じるわけです。今年で言えば、論文合格者は429人いますから、概ね100人強が59点を取ることになる。とんでもない受け答えをする人が100人強もいてくれるのか。そう考えると、不運にも普通の受け答えだったのに59点になる人が、それなりの数生じるだろうということがわかります。その不運が2日続けば不合格。これが、口述試験の怖さです。
2.そういうわけで、合格率が非常に高い試験であるにもかかわらず、口述に確実に受かるというのは、実は非常に難しい。実際には、なるべく問題のない受け答えをして、後は他の人が崩れるのを祈るしかありません。ですから、まずは、自分が変な受け答えをして崩れてしまわないようにする、ということが、具体的な合格のための戦術ということになります。
3.そこで、口述でやってはいけない、とんでもない受け答えの例を、いくつか紹介しましょう。
(1) まず、基本的なコミュニケーションができない状態に陥ってしまうことです。例えば、考査委員の追及に腹を立てて口論になってしまったり、どう答えて良いかわからなくなって長時間沈黙して何も答えられなくなってしまう、あるいは、ショックで泣き出してしまったりする、というような状態です。考査委員によっては、かなり辛辣なことを言ってくる場合がありますが、最後まで落ち着いて答えることが大事です。
特に、自分の頭の中で迷って考えていると、自分では意識していなくても、実際には長時間の沈黙になってしまっている場合があります。なるべく自分の頭の中で考え込むのではなく、その中身をぶつぶつ口に出してつぶやいてみる。例えば、「えー確かに○○とも考えられるのですがーそうすると××という問題も生じるように思いますので…一概に○○とも言い切れないような…えー」という感じです。そうすると、「そうだね。じゃあさ、まずは××の問題は置いておいて、君が○○と考えた理由は何ですか?」という感じで話がうまく進むことが多いです。単に黙っていても、このような展開になることはありません。
(2) もう1つは、最初の基本的な質問で長時間つまずいてしまうことです。これは、案外やってしまうものです。試験時間は大体決まっていますから、最初の質問で長時間を費やしてしまうと、ほとんどの場合、考査委員の想定する質問をこなせなくなります。しかも、最初に考査委員の印象を悪くするので、その後の質問でも、本当にわかっているのかを確認するために、スムーズな人にはしないような確認の質問をする必要が出てきます。これで、ますます後の質問に到達しにくくなる。これが、トータルでは意外に大きなマイナスになるのです。
これを避けるには、最初の考査委員の質問をよく聞いて、落ち着いて答えることが大事です。緊張して、あまり理解せずに答えてしまい、質問と噛み合わずに長引く、ということがあったりします。考査委員の方で受験生が質問の意味を誤解しているとわかってもらえたときは、「君は、○○という意味で考えたのかな?そうじゃなくて、…という意味で質問してるんだよね。」と訂正してもらえることがあるのですが、考査委員に誤解を気付いてもらえず、単に基本的な知識が欠けている、と判断されてしまう場合も、よくあります。事案の書かれたパネルなどが机上に置かれていて、最初にそれを見て事案を確認してから答える場合がありますが、これはきちんと頭に入ってくるまで、落ち着いてよく読みましょう。最初の事案の把握が間違っていると、後のやり取りが全部噛み合わなくなるので、特に危険です。
質問がよく聞き取れなかったときは、聞き返しても構いません。これは最初の質問だけに限りませんが、質問の趣旨をよく理解してから、解答するのが鉄則です。例えば、「採り得る手段は何かありますか?」と問われて、何のことだかわからない場合には、黙ってしまうのではなく、「訴訟上の手段でしょうか、それとも、保全の手段・・・」というように大雑把に趣旨を確認する質問をするのが賢い対応です。それで、「まずは訴訟上の手段から答えてみてもらえますか。」という応答をもらえば、随分答えやすくなったりするものです。ただし、単にオウム返しに質問をするのはダメです。例えば、「採り得る手段は何かありますか?」と問われて、「何か手段があるんですか?」などと聞き返すのでは、「私がそれを聞いているんですよ(怒)!」という反応が返ってくるだけでしょう。これは、考査委員の印象を悪くするだけなので、やってはいけません。
質問の趣旨がわかりにくい問いとして、「それを何という?」とか「それって何ていうんだっけ?」という問い方があります。こういう場合は、大体はキーワードを聞いています。これまでに説明したことも含めて、具体例を示しておきましょう。このようなイメージです。
主査「逮捕状を示さないで逮捕できる場合はありますか?」
受験生「えーと、条文が認めている場合ですか?それとも、解釈上の…」 ←質問の趣旨を確認する。
主査「うん、解釈上の例外も考えられるよね。でも、ここでは条文が認めている場合を答えて下さい。」
受験生「はい。逮捕状を所持していない場合で急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が発せられている旨を被疑者に告げて逮捕できます。」
(副査がうなずいて○を付ける動作) ←副査は受験生の回答の適否を記録する動作をすることが多い。
主査「何条に書いてありますか?」
受験生「えー…確か…200条辺りに…」 ←わからなくても、沈黙せずにとりあえずわかる範囲で答える。
主査「うん。じゃあ法文で確認していいよ。」 ←こう言われたら指示に従う。
受験生「はい、失礼します。…(法文を見る)…はい、201条2項で準用する73条3項です。 」
主査「それなんていうか知ってる?」
受験生「えっ?えーと…逮捕状による逮捕だから通常逮捕…」 ←わからなくても、思いついたことをとりあえず言う。
主査「いやいや(笑)。そうじゃなくて、今、君が言った例外的な場合ね。」
受験生「えーと…それはこの例外的な場合を指す名称ということですか?」 ←質問の趣旨を確認する。
主査「そうそう。何ていうんだっけ?今、君が言ったように、緊急時に逮捕状を執行する方法のことなんだけど?」 ←黙っていないで発言するとこのような答えに近いヒントがもらえる。
受験生「あっ、緊急執行です。」
主査「そうだね。」 (副査がうなずいて○を付ける動作)
(3) それから、「法曹としてこの人は大丈夫なのか?」という疑念を抱かせる受け答えをしてしまう場合です。冒頭に述べたように、口述は、「不適格者を落とす」試験です。ペーパーでは見ることのできない欠陥のありそうな人は、低い点を付ける。ただ、口述は極度に緊張していますし、とっさのやり取りが続きますから、普通の人でもうっかりやってしまうことがあります。
ア.注意したいポイントの1つに、撤回があります。口述では、間違いに気付いた時点で、「先ほどの○○という答えは撤回して、××と考えます。」というように撤回することが可能です。この撤回をどの程度使うか、これを誤ると、下位4分の1に入りやすくなります。
極端な2つの例を挙げましょう。1つは、頑なに撤回しないケースです。考査委員は、受験生が間違ったことを言うと、その問題点を指摘して、暗に撤回を促します。ところが、考査委員の批判を論破してやろうとして、頑なに撤回しない。そういう人は、法曹として問題があると評価されて、低い点を付けられてしまうわけです。そこまではいかなくても、撤回を促すやり取りで時間をロスするので、予定した質問をこなせなくなってしまいます。撤回すると、評価が下がるのではないか、と考えて撤回しようとしない人もいるようですが、誤りに気が付いたなら、素直に撤回すべきです。それから、必ずしも間違いではないが、その後の問いが判例などの特定の見解(ときにその考査委員の見解であることもあるようです)をベースにして作成されている場合には、とりあえずその見解に誘導しようとします。その際、自説を頑なに曲げないと、その後の質問に行くことができません。最終的には、「君はどうしてもそう考えるのね(笑)。まあ、それはとりあえずここでは置いておいて、ここから先は○○という考え方で考えてみてください。」と強引に次の質問に行く場合もありますが、かなりの時間をロスすることになりますし、考査委員の印象も悪くなります。
もう1つの例は、逆に安易に撤回を繰り返すケースです。考査委員は、受験生が正しいことを言っていても、本当に理解しているかを試すために、敢えて、「本当に?でもそれじゃ○○でおかしいんじゃないの?」などと言ってきたりします。これを安易に撤回のサインと考えて撤回すると、かえって印象を悪くする(口述用語で、「泥船」(乗ると沈む誘導の意)などと言われます。)。撤回した後に、さらに「え?撤回するの?でも、それじゃ××じゃないの?」と言われて、さらに撤回したりすると、危険です。撤回を撤回するというのは、基本的にNGだと思っておいた方がよいでしょう。ですから、最初に撤回するときは、慎重に考えてからやるべきです。難しいのは、上記の撤回を促す質問と、本当に理解しているかを試す質問のどちらかを判断するにはどうしたらよいかです。基本的には、撤回を促す場合には、考査委員の質問に素直に答えると、自分の前の解答が誤っていたことに自然に気付くことができるようになっています。自分で気付いた時点で、撤回すれば足りるでしょう。また、撤回を促す場合は、何度も執拗に言って来る場合が多いです。用意した次の質問に行く前提として、正しい結論を導く必要があったりするからです。ですから、何度か抵抗してみて、それでも執拗に言ってくるようなら、撤回を考えるという感覚でよいのだろうと思います。間違っても、考査委員を論破してやろう、などと思わないことです。
イ.もう1つ、嘘を付かない、ということがあります。そんなことする訳ないだろうと思うかもしれませんが、とっさにやってしまうことがあるものです。一番よくあるのは、自信満々に間違いを答えるという場合です。例えば、「判例は肯定していますか?」、「はい。肯定しています。」、「え?本当に?」「はい。判例は肯定説に立っています。」、「いやいや・・違うでしょ・・判例は否定説だから、後で確認しといて。」というような受け答えです。これは、かなり危険です。自信がない場合は、自信がなさそうに、「判例は肯定説ではないかと思うのですが・・・」くらいにしておいた方がよい。それだと突っ込まれやすいのではないかと思うかもしれません。もちろんそうなのですが、堂々と間違えを言うよりは、突っ込まれた後に誘導に乗って訂正する方が安全です。
他にも、「類似の事案の判例は知っていますか」と問われて、「いいえ」と答えるのはマズいと思い、とっさに「知っています」と断言する。しかし、「じゃあどういう判示だったか言ってみて」と問われて全然答えられない。こういった対応は、ついうっかりやってしまいかねない、危ない対応です。
それから、法文絡みで嘘を付いてしまうことがあるようです。法文は、試験室の机上に置いてありますが、勝手に見ることはできません。見たい時に、考査委員に「法文を見てもよろしいでしょうか。」と一言断ってから見ます。ところが、法文を見ていても、うまく見つけられないことがある。そんなときに、時間がかかっているので焦ってしまうからか、法文でまだ条文を確かめてもいないのに、適当に答えてしまったりする人がいるようです。考査委員に「ちゃんと条文確認した?」と言われて、とっさに「はい」などと即答してしまうと、印象は相当悪くなります。基本的に、自分から法文を見るのは、どの辺りの条文をみればよいかがわかっている場合にするべきです。よくわからないからとりあえず法文を見る、というのは、上記のような事態になりやすいだけでなく、無駄に時間をロスすることが多いので、避けるべきでしょう。
逆に、頑なに法文を見ないという人もいるようです。知識を試されているので、法文を見たら評価が下がる、という強迫観念から、そのような対応をしてしまうのかもしれませんが、かえって考査委員に「この人は大丈夫か?」という疑いを抱かせてしまいます。特に、考査委員の方から、「法文で確認しても構いませんよ。」と言ってくる場合には、素直に従うべきです。「いえ、見なくても答えられますから。」などと抵抗するのは、とても危険な態度です。
ウ.それから、特に若い人は、ふざけた受け答えをしない、ということに気を付けたいところです。若い人の中には、コミュニケーション能力というものをやや履き違えて、何か冗談を言ったり、誤魔化したりするのがコミュニケーション能力の高さをアピールすることに繋がると考えているのか、あるいは、余裕があるところを見せようとしているのか、ふざけた応対をする人がいるようです。例えば、「甲は、乙に対して、どのような手段をとることが考えられますか?」、「そーですねー、私なら乙の家に殴り込みに行きます!(笑)」、「あっこれは違いますよねー(笑)。アハハすいません。」というような受け答えです。これはもう完全にNGです。ごく一部だとは思いますが、間違っても受けを取ってコミュニケーションを円滑にしようなどとは思わないことです。
また、これは若い人に限りませんが、ピンチになるとつい笑って誤魔化そうとしてしまう人や、緊張するとなぜか変なタイミングで笑ってしまう人がいます。これは、見ている側に違和感を感じさせます。心当たりのある人は、意識して試験中はそうならないように気を付けるべきでしょう。
エ.後は、問われたことだけに端的に答える、ということでしょう。聞かれてもいないことを延々と話すようでは、「大丈夫か」と思われます。それだけでなく、時間をロスするので、後の質問ができなくなってしまいます。問いに対しては、まずは結論だけを答える。理由は、「なぜそう考えるのですか。」と言われてから答えれば足ります。
もちろん、端的といっても、単に結論部分だけ言い放つという意味ではありません。基本的なことではありますが、「はい」、「いいえ」で答えられる質問、例えば、「甲は乙に対し、損害賠償請求をすることはできますか?」という問いであれば、単に「はい」、「いいえ」だけでなく、「はい、できます。」、「いいえ、できません。」という感じで答える。「はい」、「いいえ」ではなく、内容的なことを答える場合、例えば、「甲のとりうる手段として何が考えられますか?」というような場合でも、まずは、「はい」と一呼吸置くのが自然です。「はい、乙に対する債権を自働債権として相殺する手段が考えられます。」という感じです。ちょっとしたことですが、こういったことでも、考査委員の受ける印象は違います。
4.以上のようなポイントに引っかからないためには、最低限の知識が必要です。沈黙してしまったり、嘘を付いてしまったり、問われていないことを延々と話してしまったりするのは、考査委員の質問に対する端的な答えがパッと頭に浮かんでこないからです。端的な解答が答えられれば、「そうだね」の一言で次の質問に行くことができることが多いでしょう(副査が「ウンウン」とうなずくのも、即答できた場合の特徴です)。色々と揺さぶられたり、誘導されたりするのは、微妙な解答をしたときなのです。また、最低限の知識がないと、誘導されても、その意味を理解できないでしょう。
とはいえ、残された期間で確認できる知識には、限りがあります。実体法は、論文の学習範囲と重なっていますから、これまでの学習で何とか対応できます。ですから、優先順位は低いと考えてよいでしょう。他方、民事の執行・保全や、刑事の刑事訴訟規則の条文などは、これまで全く勉強したことがない、というレベルの人も結構いると思います。執行・保全については、どのような場合に、どのような手段を用いるのかといった制度の概略だけでも知っておく。刑事訴訟規則については、一度、全体を素読しておくとよいでしょう。具体的に内容を挙げられなくても、「えーと・・それは規則に条文があったと思いますが・・」まで答えられれば、「君が言いたいのは○○条だね。法文で確認してみて。」などと、考査委員から答えに近いヒントをもらえることが多いでしょう。
また、口述では、条文番号が問われる場合がよくあります。基本的な条文については、何条か答えられるようにしておくと楽です。ただ、これも条文番号を答えられないからアウト、というわけではありません。わからない場合は、「おそらく○○条辺りだと思うのですが・・」と答えて、場合によっては法文で確認すれば足りると思います。「これくらいは法文を見なくても答えられるようにしといてね。」と嫌味を言われる場合もあるでしょうが、合否に直結するものではありませんから、気にしないことです。ですから、条文番号を覚えることに、それほど神経質になる必要はないでしょう。それから、法曹倫理は意外とよく問われます。ただ、付随的に最後にちょっと聞いてみる、という程度のものですから、弁護士法や弁護士職務基本規程を一度素読しておくくらいで十分でしょう。
あとは、口述の雰囲気を知るという意味で、予備校等が配布している口述再現集を入手できれば、ざっと目を通しておくとよいと思います。ただ、口述再現は、文章化する際に、どうしても実際のやり取りより整然としたものになりがちです。しどろもどろだった所も、即答したように読めるようになっています。そのため、読んでいてかえってプレッシャーになることもあります。その点には、やや注意が必要でしょう。回答の内容を参考にするというよりは、なんとなく雰囲気を知るという程度のものとして、軽く目を通せば足りるのではないかと思います。
5.試験会場では、試験開始の順番によって随分待たされることがあります。当日は、待ち時間に確認する教材を用意しておいた方がよいでしょう。電子機器は使用できないので、普段タブレットなどで学習している人は、注意する必要があります。また、午前の人は、試験が終わっても午後の人が入場するまで会場から出ることができません。初日に午前の時間になった人は、翌日用の教材も用意しておいた方がよいと思います。何を持って行っていいかよくわからない、という人は、六法を持って行くとよいでしょう。前にも触れたとおり、口述では、条文番号や条文の文言など、条文の知識が問われることがよくあります。また、試験中に法文を確認する場合に、素早く確認するためには、どの辺りに探したい条文があるかを把握しておく必要がある。直前に条文を素読するのは、そのような場合の対策として、効果的なのです。口述の時に用いる法文は、論文の際に用いる法文と同じはずですから、論文終了後に持ち帰ったものを持参するのもよいでしょう。待ち時間が数時間に及ぶ場合、仕方なく六法だけを延々眺めていたりすることになりますが、改めて条文をじっくり読み直してみると、意外な発見があったりします。この時に発見した条文の知識は、意外と忘れません。「この条文は口述の試験会場で初めて発見したんだよな。」という形で、何年経っても記憶に残っていたりするものです。極度の緊張感がそうさせるのでしょう。また、試験会場付近では、予備校が確認用の教材を配布していることもあります。役に立つかどうかは見てみないとわかりませんが、待ち時間が長い場合には、意外と役に立つ場合もあります。とりあえず、もらっておくとよいでしょう。
なお、当日の服装については、特に制限はありません。ただ、圧倒的多数の受験生がスーツを着用して来ます。その中で、自分だけ私服だったりすると、それだけで目立ってしまいます。口述試験では、「目立たずにその他大勢に紛れること」が重要ですから、これはあまり得策とはいえません。それから、精神的にも、「自分だけ私服」というのは、落ち着かない気持ちになりがちなので、良くないでしょう。ですから、スーツを着用して臨むのが基本だと思います。
6.現在の司法試験には、口述試験はありません。いわば、口述試験は予備試験受験生だけに受験を許された特権ともいえます。考査委員とあれだけの緊張感の中で受け答えをする機会は、そうそうあるものではありません。試験開始まで会場で待っている時間も含め、日常普段では体験できない異常な雰囲気ですが、周囲の緊張感に飲まれてしまわないように、貴重な経験を楽しむくらいの余裕をもって試験に臨みたいものです。