書くのが遅い原因を発見するための方法

1.答案を書いていて、なかなか時間が足りない。自分はできる限り速く書こうと意識しているのに、いつも時間が足りないのはなぜなんだ。そう思っている人は、多いのではないかと思います。書くのが遅い原因というのは、自分ではなかなか気付きにくいものです。それはなぜかというと、集中していると、時間の感覚を忘れてしまいがちだからです。ゲームや読書、スポーツなどに集中していると、あっという間に時間が過ぎていることがあるでしょう。同じように、意識を集中して答案を書いていると、時間が過ぎてしまっていることになかなか気が付かないのです。

2.この問題を解決するには、答案を書いている様子を第三者の目で見る、ということが有効です。必死に答案を書いている様子は、第三者の目で冷静に見ると、滑稽なものです。「なんでそんなことに時間を掛けているのだろう?」、「そこでそんなに慌てるなら、もっと早い段階でスピードを上げればいいのに。」などと、書いている本人には気が付かないようなことも、簡単にわかる。これを実現するのが、動画撮影です。自分が答案を書いている様子を、一部始終撮影する。そして、後で、書いている様子を確認してみるのです。最近では、デジカメなどの専用機材がなくても、スマホでも動画撮影ができます。うまく固定して、答案を書いている様子が写るようにセットすれば、撮影は可能でしょう。確認するときは、再生速度を数倍速にすれば、短時間で確認できます。かなり高速で再生していても、筆を止めるとすぐわかるので、そこで一時停止して、なぜ筆を止めたのか確認するとよいでしょう。

3.実際にやってみると、書いているときには時間のロスなどしていないつもりでも、案外とんでもないロスをしていることに気が付くでしょう。ありがちな時間のロスの例を挙げておきましょう。

(1)前半だけ、やたら丁寧に字を書いている。書き始めは時間に余裕があるので、きれいな字で書いている人は多いものです。それが、後半になるにつれて、時間を意識するようになり、だんだん汚い字になっていく。最後の方は、「やばい、普通に書いていたらもう間に合わないぞ!」となって、グチャグチャになる。これは、動画で撮影していなくても、後から答案の最初と最後を見比べればわかることです。ただ、動画で見ると、滑稽なくらい明確にわかります。既に書き終えた未来の自分の立場から、「ああこれから時間が足りなくなることが全然わかってないな。」という目で、書き出しの様子を見ることができるからです。

(2)接続詞など、どうでもいいところで筆を止める。「そして」や「したがって」などの同じ接続詞が2回続くと、躊躇してしまう人は多いです。とっさにうまい接続詞が思い付かずに、筆が止まってしまう。書いている最中は気が付きにくいのですが、これが案外長時間だったりするものです。同じ接続詞が2回続いたくらいで減点されることなど、ほとんど考えられません。その時間で当てはめの事実を1つくらい拾った方が、当然ですが高得点です。動画で見ると、自分がやっていることでありながら、「なにやってんだコイツ。そんなどうでもいいところで止まってんじゃねーよ。」と思うでしょう。

(3)ちょっと長めの事実を引用する際に、気の利いた要約をしようとして考え込み、結局はそのまま引用した場合以上の時間を使ってしまう。当てはめをする際には、問題文をそのまま書き写してしまうのが基本です。ただ、そのままだとうまく規範の文脈に合わなかったり、長すぎてそのまま引用するのは時間のロスだと感じ、うまく要約できないかな?と考えたくなることもある。しかし、そうやって要約しようとして頭を使っているときは、時間の感覚が麻痺してしまいがちで、想像以上の時間を使ってしまうことがよくあります。結果として、そのまま書き写した方が早かった、ということは、稀ではありません。そうしたことも、動画で確認していると、よくわかります。

(4)当てはめの際に、気の利いた評価を付そうとして、止まってしまう。これは、ある程度実力が付いて、事実に評価を付すことに意識が行くようになると、生じる症状です。法科大学院や予備校で、「事実はそのまま書き写してもダメですよ!必ず自分の言葉で評価して下さい!」などと指導されることが多いので、気の利いた評価が思い付かないと、先に進めない。気の利いた言葉がないか考えていると、時間の感覚を忘れてしまう。第三者の目で見ていると、「いやそこは思い付かないならいいじゃん。早く先に進めよ。」と思うような場面は、よくあるでしょう。

(5)どうでもいい訂正をしている。答案を書いていると、どうしてもちょっとした誤字、脱字は生じるものです。しかし、意味が通るのであれば、それで減点されるということは、考えにくいでしょう。それにもかかわらず、気が付いたら直してしまう。例えば、「損害賠償請求をすることができる」と書こうとして、「損害賠償請求できることができる」などと書いてしまった場合、一々直さなくても意味は通ります。この程度の誤字は、答案を書き終えて時間が余った段階で、直せばいいのです。これも、後から動画で見ていると、「いや、今はそんなの直してる場合じゃないんじゃない。その30分後に途中答案になりそうになって慌てるんだけど。」と冷ややかな目で自分の行為を評価することができるでしょう。

(6)書いている途中で新しい問題意識に気が付いて、何か書いてやろうと考えて止まる。書いている最中に、構成段階では気付かなかった論点を思い付く、ということは、それなりによくあることです。それが合否を分けるような論点であれば、考え直すのもやむを得ないかもしれません。しかし、多くの場合、それは大して配点のなさそうな些末なことだったりします。後から確認すると、「書いてる段階で今さらそんなの考えてたら間に合わないだろ…時計確認しろよ。」と思うくらい、考え込んでしまっていることもあるものです。

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