1.司法試験委員会会議(第155回)では、令和5年以降の司法試験の実施時期に関する議論がなされていますが、その中に、以下の発言があります。
(「司法試験委員会会議(第155回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。)
(同様に,考査委員を務めた経験等から,採点実施の具体的な状況を紹介の上)個人的な感覚としては,1日20通から30通を採点するのが限界である。実質的な採点期間として,2週間では厳しいが,3週間あれば何とかなるのではないか
(引用終わり)
考査委員は、1日に20~30通くらい採点している。このことから、1通当たりどのくらいの時間を使って答案を採点しているか、推計することができます。例えば、1日の採点時間が6時間だとすると、20通なら1通当たり18分、30通なら1通当たり12分掛けています。1日の採点時間を9時間だとすると、20通なら27分、30通なら18分です。これをまとめたのが、以下の表です。
1日 6時間 |
1日 9時間 |
|
1日 20通 |
18分 | 27分 |
1日 30通 |
12分 | 18分 |
1通当たり、12分、18分、27分というのは、1頁当たり、1行当たりにすると、どのくらいの時間になるのか。6頁の答案を想定すると、以下のようになります。
1通 | 1頁 | 1行 |
12分 | 2分 | 5.2秒 |
18分 | 3分 | 7.8秒 |
27分 | 4分30秒 | 11.7秒 |
2.1通27分なら、きちんと文章として意味を把握しながら答案を読む余裕があります。一方で、1通12分だと、これは文章として意味を追っているようでは、間に合わない。ざっと斜め読みしながら、配点項目の書いてある部分があるかどうかだけをチェックしていく、という作業になるでしょう。1通18分の場合も、要所要所を精読する時間はあるものの、基本的には配点項目をチェックしていく作業になりそうです。
また、1日9時間のケースを想定した場合、考査委員の集中力が続くのか、という問題もあります。若手の受験生でも、1日に9時間も勉強していると、後半はかなり集中力が落ちてくるでしょう。より高齢の考査委員の場合、集中力の低下は若手受験生より顕著なはずです。ですので、午前中に採点された答案は比較的しっかり読んでもらえるけれども、夕方くらいになると、採点が雑になっていくことは、十分考えられることです。
3.答案を書く場合には、このようなことを、ある程度考慮しておく必要があります。よく、「考査委員は答練の添削と違って、しっかり答案を読んでくれるはずだから、きっとわかってくれる。」などという話を耳にすることがありますが、必ずしも、そうとは限らないということです。
4.なお、法科大学院在学中受験が可能となる令和5年以降の司法試験の実施時期については、7月中旬から下旬までの間の時期とすることが決定されています。
(「司法試験委員会会議(第156回)議事要旨」より引用。太字強調は筆者。)
前回の当委員会における幹事からの報告内容を踏まえて,改正法施行後の司法試験の実施時期について協議が行われた結果,改正法施行後の司法試験については,7月中旬から下旬までの間の時期に実施することが決定された。
(引用終わり)