予備組の不安定状況に対する耐性について

1.司法試験・予備試験が延期され、日程もわからない状況で、「こんな不安定な状況はひどい。こんなの耐えられないよ。」と思っている人もいるかもしれません。このような状況に対しては、予備試験合格者の方が、耐性がありそうです。

2.予備試験は、5月に短答式試験、7月に論文式試験、10月に口述試験が実施されます。しかも、最終合格した翌年の5月には、司法試験がある。
 まず、5月に短答を受験し、6月の結果発表まで論文を受けられるかわからない状態に置かれます。もっとも、短答は、予備校等の解答速報などを元に自己採点をすれば、ある程度合否がわかったりしますが、論文は全く未知数です。7月の論文受験から、10月上旬の合格発表まで、とても不安定な状態に置かれることになる。
 そして、論文に合格しても喜んでいる余裕はなく、直ちに本格的な口述の勉強をしなければならないわけです。口述は合格率がとても高い試験ですが、落ちたら来年はまた短答からという理不尽な結果になります。それだけに、「せっかく論文に受かったのに、こんなところで落ちて、来年また短答からやり直しなんて耐えられない。」という切迫した心理状態となります。しかも、口述は、ほとんどの場合、考査委員から細かい追及を受け、後から考えたら嫌になるようなおかしな返答をしてしまうのが普通なので、「自分は落ちた。」という最悪の印象で試験を終えることになりやすい試験終了から合格発表まで、そんな最悪な気分で過ごすことになるのです。
 そして、11月上旬に口述の合格発表を迎え、めでたく合格を確認できたとしても、全然気持ちは休まらない11月中旬から12月上旬くらいまでが、翌年の司法試験の出願期間です。すぐさま司法試験の願書をとりよせて記入し、提出の手続を済ませ、翌年の司法試験に向けた勉強を初めなければならない。その時点では、選択科目を全然勉強していない、という人が多いでしょうから、慌てて選択科目を決めて、必要な教材を買って、というところから始まることになる。
 このように、予備試験の短答が始まって以降、ずっと不安定な状態に置かれっぱなしで、少しも心の休まる期間はないのです。今年、司法試験を受験する予備試験合格者は、これまで、例外なくそうした試練を乗り越えてきたわけですから、今回の事態に対しても、「今まで散々経験してきたことじゃないか。」という感じで、自信を持って対処すればよいでしょう。

3.他方、予備試験を受験したことのない法科大学院修了生は、このことを理解しておくべきです。今回のような事態で、「こんなの耐えられない。」と思っているようでは、既に精神面で予備組に負けてしまっているといえます。やつらは、この程度では動じない。そんなやつらと、共に競うわけですから、改めて、相応の覚悟を持ってこの事態に臨むべきなのです。 

4.また、今年、予備試験を受験する人は、冷静さを訓練するよい機会だと思って、自分の心理状態を客観的に観察したり、心を鎮める方法論等を色々と試行錯誤してみるとよいでしょう。前記2のとおり、予備試験は、短答→論文→口述と進むにつれて、精神面を試す度合いが段階的に強くなっていくという独特な試験制度になっています。特に最後の口述は、精神テストといってもよい側面がある。今から精神面を鍛えておいて、損はないでしょう。

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