【論点】
マンションの居住者である被疑者がマンション施設内のごみ集積所に捨てたごみについて、捜査機関がその占有を令状なくして取得する手段としてどのようなものがあるか。また、その際に被疑者の捨てたごみであるかを判別するため、ごみ袋を開いて中身を確認することは許されるか。なお、捨てられたごみについては、居住者の所有権は放棄され、管理会社が占有するものとする。
【論証例】
ごみの所持者である管理会社(※1)から任意提出を受けて領置(221条)することにより、ごみの占有を取得できる。その可否は、一般に居住者がごみの中身を見られることのない期待を有することを踏まえ、領置が必要かつ相当かで判断する。
外見から被疑者の捨てたごみを判別できない場合、その可能性のあるごみの任意提出を受けて領置した上で(※2)、押収物に対する必要な処分(222条1項、111条2項)として、中身を確認できる。その適法性は、領置物の占有継続の要否の判断に必要で、社会通念上相当な態様かで判断する。
上記処分の結果、被疑者の捨てたごみ以外のものと判明したものは、管理会社に還付すべきである(222条1項、123条1項)。
※1 221条の「所持者」とは自己のために現実に物を支配している者をいい、「保管者」とは他人のために物を支配している者をいう。
仮に、管理会社の職員が管理会社のためにごみの事実上の支配を有するという理解に立てば、その職員が保管者となる。
※2 被疑者の捨てたごみであるかを判別するため、ごみ袋を開いて中身を確認するには、その前に一度領置の手続を経る必要がある。なぜなら、領置しなければ、そのごみは「押収物」ではなく、222条1項、111条2項の必要な処分の対象とならないからである。
(参考)
・東京高判平30・9・5(占有者が誰であるか、誰から任意提出を受けるべきであったか等について、上記の例よりも複雑な事案である点に注意)
・マンションのごみ集積場所に排出されたごみの領置 東京高等裁判所平成30年9月5日判決 岡山大学准教授
小浦美保